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6.

レオは一瞬の目眩とともに、今までいた場所と明らかに違う場所に出た。その瞬間、しりもちをついて後ろに倒れた。

 レオの目に映るのは、天高くきらめく夜空が見える一面ガラス張りの高い高い天井が見えた。

 壁には、美しい色とりどりのモザイク画が何かの聖書の一部のように描かれている。中心部には長い美しく輝く髪をたらした美しい女性が描かれている。多分この世界を創造したという女神だろう。その周りには、十人の自然神が描かれていた。

 白く輝く大理石の床にはレオが中央に倒れている。その大理石の上に何か模様のような魔方陣のようなものがレオを中心に描かれている。

 多分、ここで、何か魔術を行ったのだろう。それによって、レオはつれてこられた。

 もちろん、本来は光が連れてこられるはずだったのだろうが、どうやら連れてきた奴が、間違ったのだろう。だって、

「あら~まちがっていますね~。何違う奴連れて来てるんですか~ばっかですね~、ばっかですね~本当つっかえないですね~」

 そういいながら、さっき、レオをマントの中に引きずり込んだフードを頭からかぶって顔が見えない人物を貶していた。そして、からかうのもあきたのか、レオを覗き込むように上から見てくる。フードを被った人物は何か泣きながら、この聖堂から早足で逃げていく。ここにはレオと、そのからかっていた人物だけになった。

「にーしーてーもーですねえ~どうしましょうか~あー。王子じゃないですし~、めんどくさいですから、証拠隠滅いましょうか~?」

 そのなんとも言えないイントネーションの個性的な、紫紺の髪をところどころがはねて、それを押さえるようにピンで止めて、頭には真っ黒なシルクハットの帽子をかぶり、真っ黒黒スーツに手がまったく見えないほど長い袖をくりくりと回している。瞳は髪で覆われて分からない。

 なんとも個性的な格好をしている。

(この人、なんかかなり不気味なんですけど!!)

 レオが泣きだしそうに、そう心中で叫びながら、今まであった事のないタイプかもしれない危機感にどう対処すればいいか思案していた。

「では、ちゃっちゃーと、逝っちゃってください~」

 そういいながら、何か呪文を唱え、始める。レオが、その言葉を聞いて思わず

「ちょっと!ちょっと!ちょっと!何俺の人生終わらせようとしてんだよ!間違ってつれて来たのお前らだろう!お前らが悪いのにその尻拭いを、俺に回すな――-!そんなんで人生終わらせられたらたまったもんじゃね――-!」

 怒鳴るように起き上がり、その不気味な男に、人差し指を向け、言い放った。

「・・・・。・・・」

 髪の毛で見えない瞳から、痛いほどの視線を感じる。なんとも普通とは違う威圧感がレオを襲う。かなり神経にさわったことを言ってしまったのだろうか・・・?そう、冷や汗をだらだら流しながら、どうやって、ここからぬけだそうと考えていた。

 すうっと長い袖を出してくる。

「?」

 レオは何がしたいんだろうと、怪訝にその男を見ながら、首を傾げる。すると、また、再度長い袖を突き出してきた。

「???」

 やっぱり、分からず見る。その様子に痺れを切らしたのか。

「まったく分からないんですか~?こういった状況で最も~命を生きながらえさす事ができるのは~、地獄の沙汰も金次第ですよ~」

 にやりと、笑う姿にこの人物の人となりが分かったような気がした。急いでレオは、自分の服をあせぐるが、なにぶん先程、着替えさせられて、所持金などあっただろうかと思案してみる。するとこの世界に来るときに、自分のポッケに入れていた唯一のお金をこの服に入れ替えたのだった。

 はて・・・これで大丈夫なのかかなり不安というか、かなりやばかったりする。レオはいを決したように、そのお金をその男に差し出す。

「・・・」

 沈黙が二人を襲った。

(だってーしょうがないじゃん!この世界のお金なんてないんだから!!しかも俺の所持金!百円しかねーし――-!!)

 これは、帰ってから、ジュースでも買おうととっておいたもの。まあ、百円ぽっきりじゃー自動販売機も使えないんだが。

「すんません!すみません!これしか、これしかないんです。どうかどうか―――!お命だけわ――-!」

 まるで時代劇の借金取りから逃れるようなせりふを全力で多謝した。

(てか、こんなんで大丈夫なわけね――-!俺の命ここで完。なんてやっぱいやだ――-!)

 そんな、事を考えているとやたら、きらきらした空気が流れてきた。

「わーなんですか~これ~?細工が細かくてきれいですね~!!」

(あれ、なんかうけてる・・・?) 

 はしゃいでいる姿に、少し安堵していると

「まあ~これで手をうってもいいで~すよ~!」

 口端だけで笑う。

(おりゃ?なんか大丈夫っぽい・・・?)

「あのー・・・助かったはいいんですが・・・こんなんでいいんですか・・・?」

 遠慮がちに尋ねてみると

「えーこっちのお金じゃないですけど、一応お金には違いないから手を打ってあげたんですが~、そんな気遣いむようだったようでーすね~。では、さようなら~」

 そう言って、いつの間にか手にはなぜかありえないほど馬鹿でかい鈍器(ハンマー)

「やけに大雑把(おおざっぱ)なもので、あの世に送るんだな!!」

「えー、結構、一発であの世に行ってくれるから~便利なんですよ~」

 簡潔に説明していく男に、だらだらと汗が流れていく。余計な事は言わないほうがよかったと思った。

「まあ、冗談はこのくらいにして、一応お金いただいたので、助けてあげますよ~まあ、僕も~そんなに悪徳じゃありませんし~」

「え?そんなん?王子狙ってるから、かなり悪名高いのかと・・・」

 レオは意外な言葉に、疑問に思っていた事を思わず言った。

「え~そんなに悪名高くないと思うんですがね~。そこら辺にいるただのアンって名前の人間ですし~だって~僕、臨時で雇われた魔道師ですし~前に使っていたらしい魔道師は老齢のため力尽きたらしいですし~」

「じゃ、何で?ファラスなんかについてんだよ!やばいらしいじゃないか!国や世界が、魔神が復活してしまうらしいじゃん!」

「え~しょうがないですよ~、お金ないと生きていけないんですよ~僕だって~。結構世の中シビヤなんですよ~。それにちょうど、前のパン屋の仕事、リストラにあって途方にくれているとき、あのファラス・・・馬鹿が、『いい仕事あるよ』って、まあ、どうしようもなかったから、ついてきたんですがね~」

 アンは、少し前のことを思い出すかのように首をかしげながら考えていた。

「すごい言われようだな、ファラスの奴・・・わざわざ言い直されてるし、一応雇い主なんだろうに・・・」

「そうなんですよ~一応雇い主なんですがね~いっちょん給金はらってくれないんですよ~なんか舐め腐ってるんですよ~。あ~今月生きていくのに結構大変なんですけど~」

 なんか雇用状態にかなり、不満のご様子のアン。

「なあ、あんた達のところに、他に魔道師はいるのか?」

 レオは何気なく聞いた。

「え~俺ほどの魔道師はいないですよ~これでも、多分国一、ニを争うほどの魔道師なんですよ~パン屋でのんびり働いてましたが~。まあ、あんまり実践向きじゃない魔道師ならたんまり雇ってたみたいですけど~。んな金あるなら、給料払ってほしいですね~」

 ぶつぶつ呟きながら、アンが答えた。

 その返答にレオは色々と考える。これはもしかしてと、

「なあ、アン、俺達の、王子達のほうにつかねーか?」

 アンに提案する。その言葉に

「え~裏切れって言うんですか~一応雇われているんですよ~給料払ってくれないけど~」

「そう!それだ!雇用条件を満たしてない!となれば、辞職する事もできる!そして、俺達のほうに新たに就職するのだ!!」

 レオは意気込んで、アンに詰め寄る。逃してなるものかと。けれど少し思う。なんか悪代官が、何も知らない人を誘惑するような感覚だと思った。

「え~ちゃんと~給料払ってくれるんですか~??」

 相当不信感を抱かれているご様子だった。しかもそれは、現時点の雇い主に対してのことを引きずっていた。

「大丈夫だ!なんたってこっちは、王子様が雇い主だからな!」

「とりあえず値段は別に~そんなに気にしない事もないですが~ちゃんと給料払ってくれるんなら~いいで~す」

 何とか交渉が成立した事に、

(かなり給料払ってなかったんだな・・・ファラスって奴・・・払ってやれよ・・・)

 そう、思ったのだった。

『ドオオン』

 遠くで、何かが爆発する音が聞こえた。

「何だ??」

 レオは不思議そうに音の方を向くが、どうやら建物の外からだった。

「あ~あ~、多分、王子さんが君、取り戻しに来たみたいですね~しかも、これに乗じて、あの馬鹿・・・ファラスを、攻めてきたんじゃないですか~実際、王子殺そうとしてたし~十年前も王殺してるみたいですし~」

「え?アンお前十年前も、もしかして!」

「え~そんな前から、雇われているわけないじゃないですか~俺臨時で雇われているだけだし~そんなに長い間給料なかったら僕死んでますよ~それに、その頃はまだ子供でしたし~下町のパン屋でバイトしてましたよ~」

「・・・」

 どんだけパン屋が好きなんだそう思わずにいられなかった。

「とりあえず、ここはどこなんだ?今更だけど!」

「巫女神殿で~す」

 それを聞いて、あのドーラスの話を思い出した。

「あ、じゃあ、あの像ってあるのか?」

「ぞ~う~?」

 不思議そうに首を傾げる。

「魔神アンシュの像!」

「あ~確か、ありましたね~僕~あれ嫌いなんですよね~なんか居心地悪いし~」

 ぼそりと呟くアンの言葉に

 じゃなんで、ファラスに就くんだ!と言いたいがたぶんそれを聞いたら、『お金のためで~す』と答えるだろう。

「で、どうするんですか~えーと・・・?」

 そういえば名前をレオは言っていなかった。

「レオだ!その像を壊したいんだけど!手伝ってくれねー?」

「いいですよ~一応もう~そちらの人間になりましたから~だから~給料払ってくださいね~」

 くどいようだが多分、切実なのだろう。

「わーってるって!」

 急いでそのアンシュの像のあるところを目指した。

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