舞台設定 その2
物語を描くにあたって、その文章は読者のなんらかの感情を揺さぶるモノであり、そういった物語が読んで「面白い」と感じるものだと思います。もちろん、これらの感情はひとつに限定されるものではなく、ひとつの物語においても喜怒哀楽と様々あることはおかしくありません。物語の設定を考える上で、自分の作品が読者のどういった感情を揺さぶるモノであるのか、という点についても考慮しておくべきだと思います。
読者への感動を押し付けるような、「あざとい」表現を多用するようなことで、逆に読者が冷めてしまうということも考えられます。それを意識しすぎて「読者に媚びずに自分の好きなように描く」 などと考えてしまいそうですが、自分が思いついたことをただ書き連ねただけでは、物語として成り立ちません。例え失敗することがあっても、物語を作る上では、読者に対して「何を魅せる」のか、を意識した上で考えるべきだと思います。
○読者の感情
自身が読者として物語を読んだ場合に、「どのような感情を持つか」「どのような作品を面白いと感じるか」について、検討したいと思います。
-笑い-
ギャグ・コメディなど、面白い会話や表現で楽しい気分を感じさせる
いわゆる「シリアス系」の作品であっても、キャラクターの掛け合いでこういった部分を含むことは多く、「緊張と緩和」を考える上でも重要
(例)ピューと吹く!ジャガー
-ほのぼの-
上記の「笑い」と似た感情であるが、「面白くて笑う」というよりも、安心感や安堵感という感じ
家族愛を感じる場面や、子供・小動物等の可愛らしい行動に対して感じることが多い
(例)よつばと!
-興奮-
戦闘シーンや、スポーツの対戦シーンなど、その場面に引き込まれるような感情
この感情を強く感じる物語に対して、「面白い物語」と感じることが多い
(例)バガボンド、ピアノの森
-感動-
物語を読んで涙を流すかどうかが最も分かりやすい
人物の出会いや別れ、なんらかの行動に対する結果の成功や失敗等、キャラクターに感情移入して感じることが多い
スポーツモノ、恋愛モノ、家族モノ等、特に物語のジャンルを問わず描かれている印象
(例)君に届け
-共感-
特に多いと感じるのは恋愛モノ
自身の経験から想像しやすいようなシーンを描くことによって、キャラクターに対して感情移入がしやすい
いわゆる「あるある」と区別することが難しいが、「共感」ができると「感動」や「興奮」が感じやすくなる
-恐怖・緊張-
怖いものに襲われる場面や、何が起こるか分からないという緊張感
非日常的なシーンで感じることが多く、日常との乖離を楽しむという要素もあるのかもしれない
(例)バイオハザード
-怒り-
理不尽な出来事、悪役のキャラクターに対して感じる
比較的感情をいだきやすく、これに相対するキャラクター(主に主人公)に感情移入がしやすくなる印象
-落胆-
上記の「怒り」を超えるような理不尽な出来事が起こった場合に感じる
キャラクターの死、恋愛対象のキャラクターが襲われてしまう等
大きな負の感情であるため、感情の大きなギャップを作ることができると考えられるが、
同時に物語全体に対して負の印象を作ってしまう可能性もある
個人的にはこの感情を感じるようなシーンはあまり好きではない
-感心・納得-
自分が知らなかった出来事や、新しい考え方を物語の中で見せられた時に感じる
論理的な思考を面白いと感じる程度のものから、自身の価値観が変化してしまうようなものもありえる
(例)ドラゴン桜、ミステリー小説、ライアーゲーム
-願望・理想-
自分が想像の中に描く良い立場や環境、そういったものが描かれている時に感じる
いわゆる「ハーレムモノ」「俺tueeeモノ」等、実際には満たされにくい願望が物語内で代わりに満たされる
-趣-
文章表現自体の美しさや、物語の世界観を表す中で感じる美しさ
あまり読むことは無いが、純文学作品の中で感じることが多い
物語というよりは、文章表現自体に対して感じるもの
(例)夜は短し歩けよ乙女
読者に対して何を「魅せる」のかは、物語を考える上でも重要です。「恋愛モノを描きたいので、読者を感動させるような物語」と作るのか、「読者を感動させるような物語を描きたいので、恋愛モノの物語」を作るのか、どちらが正しい形であるのかは分かりませんが、物語を考える上で読者の感情を考えること自体は必要不可欠なものだと思います。
今回は予定からはずれて読者の感情について検討を行いました。次回は、これを踏まえて物語のジャンルについて検討したいと思います。