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シロ×クロ  作者: あらた
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第1章 シロ、戸惑う

シロとスミレのやり取りです…

少しだけお近づきになられました。

「ふーん」

豪華な装飾であしらわれた椅子の肘掛けに、肘をつき手に顔をのせる。

いかにも退屈でつまらない話を聴いている、そんな態度をとるシロに、さくらは苛立ちを隠せない。


「ちゃんと聞いてるの?シロ君!!」


シロはニヤリと笑う。


「ちゃんと聴いてますよ。さくらさんのクロに対する熱い想いは痛いくらいだ」


「はぁ!?」

さくらの顔が紅くなる。

本気で、怒ってやろうとシロを睨み付けたとき、シロの表情が真剣なものに変わった。


「…ですが、彼は僕の所有物です。君にどう言われようがアレを扱えるのは僕だけ」


「所有物だなんて…ヒドイ…」


さくらは小さく呟いた。


「彼は主君に忠義を尽くす武士です。その志を無視することこそ、彼を殺すに等しい。あなたならよくわかると思いますが…」


確かに、さくらの故郷『和の国』では、そう言った侍道という習わしが重んじられている。

うまく丸め込まれていることに気付き、さくらはとりあえず口を閉じた。


「ですが…」

シロは話を続ける。


「主君に背き行動したことは遺憾です。クロにはこの件から離れ、怪我が回復するまでは謹慎と言う休養を与えるとしましょう」


「は?」


この男の真意は全く理解できない。

だが、決して悪いようにはしないと言うことだけはさくらは解っていた。



「素直じゃない」


反抗するように小さく呟くと、シロに向かって軽く微笑み、スカートの裾を引き上げ会釈した。

用件は済んだ。早くこの場から離れようとシロに背を向けたとき…


「あぁ…それから、さくらさん…」


去ろうとするさくらをシロは引き留めた。





「はぁ…」

心ここにないスミレは、ため息をつきながら窓を拭いていた。

クロの台詞が何度も頭の中で流れ、あの哀しい背中が忘れられない。


「どうした?」

「いえ、クロさんの役に立てないかなと思いまして…」

そう呟いた瞬間、スミレの手が止まる。


おかしな間が空いた。


スミレの後ろから、あの、いい香りがしている。


「王子様!!」


即座に距離をとった。

あの時のように何かされるのではないかと不安がよぎる。

だが、今日は様子が違った。

いつもは必ず誰かがそばにいるのだが、珍しく一人。

そして、口をへの字に結び不機嫌な顔をしている。


「どうして皆、クロのことばかりなんだ!」

腕を組みスミレを睨み付けるシロ。

スミレは蛇ににらまれた蛙のように小さくなってしまう。

その状態のまましばらく時間が流れると、シロが急に口を開く。


「いま、クロの役に立ちたいと言ったな」


「…はい…」


シロがスミレを手招きし、スミレはシロの側に警戒しながら寄る。

シロは声を小さくして話し出した。


「あいつは今、お前が関わる吸血鬼騒動を追っているんだが、お前が手を貸してくれたら、解決するかもしれん」


「私がですか?」


きっと不安になり、困った顔をするだろう。

シロのいたずら心だった。


しかし、スミレの返事は意外なものであった。


「わかりました!クロさんには恩がありますから!」

「お前…」

まさかの返答にシロは一瞬言葉を失うが、一言だけ口からこぼれた。


「義理堅いやつだな…」


「よく言われます」

スミレはクロに喜んでもらえる、と気合いの表情を浮かべた。

そして、シロと目があったのでとりあえず、微笑む。


「…」


気づくとシロはあっけにとられたように目を見開いていた。


「あの…なにか?」

「な、何でもない!」

そう言うと、シロは反対側を向いてしまう。

しかし、その頬が少しだけ赤みがかっていた。



「王子様?私は何をすればよいのですか?」


シロのちょっとした変化など気づきもしないスミレはキラキラした眼差しでシロを見上げた。


「ま、まずは、俺の事はシロ様と呼べ!!王子は要らない!いいな?」


「へ?」

「返事!」

「あっはい!シロ王子!」

「違う…」

「えっと、シロ…様」

「よし、では解散だ!!」

「あ、はいっ!」


完全に話をはぐらかし、シロはふいと後ろを向いて歩いていった。


「命に関わることだ…やはりあいつには頼めん…」


小さく独り言を呟き、同時にため息をひとつついたときだった。


「うっ!!」

白くなびくマントが後ろから強く引っ張られた。

その勢いで首は絞まり、後ろに倒れそうになる。

なにかに挟まったかと振り向いた。


「待ってくださ〜い!」

スミレが懸命にマントを引き寄せている。



「貴様っ!」

怒りマークを額に浮かべシロはマントを引っ張り返す。


「まだ、話が途中です!!」


お互いが眉をつり上げ睨み合う。

「私にそんな話しといて逃げるんですか!?」

「何だと?!」

「小さなことでもいいんです!!役に立ちたいんです!」

スミレの勢いが勝ったのか、シロは諦め両手を挙げた。

「…わかった、もう睨むな。放せ。これでも一国の王子だぞ」


「あっ!すみません!」



我に返ったスミレは慌ててマントを放す。


「危険が伴うのだ。そんなことお前にさせられないと思っただけだ」


「…それって、私を心配して…?」


「ち、ち、ちがう!!女将との約束がだな!」


「シロ様って優しいんですね…誤解してました…」

スミレが申し訳なさそうに微笑むと、また、シロの頬が紅くなる。


「くそっ…お前と話すと調子が狂う…」


目の前にいる一人の青年は、時に国王の息子として紳士的で、時に周りに迷惑をかける意地悪な王子として、そして、国民に対して期待を裏切らない頼れる存在として、いろんな顔を持っている。


今ここにいる、一人の人間の安否を気遣い、それを恥ずかしがるシロは一体どんな存在なのか。


すごく、身近に感じる。


スミレはシロの事がわからなくなり、なんだか少し、知りたくなっていた。



「そう言えば、今日はお一人なんですね?いつもお側にいる方々は?」

スミレは突然話し出した。


「?オリーブとペリドッドか」

シロも普通に会話する。


「とてもお綺麗な方ですよね、オリーブさんて」


「…そうか?」


「そうですよ!シロ様とよくお似合いです!」


「は?」


シロが冷たい目線をスミレに送る。


「まあ、あいつの頭の良さはとても頼りにしている」

「頭の良さですか…」

思っていた答えと違い、スミレは意外な顔をする。


「なんだその顔は…」

今度はシロが不満そうな顔をした。


「ふっ…お前とは次元を越えて作りも違うしな」


そう言って、スミレを上から下まで眺める。


「な、なに見てるんですか!比べないでください!」


「比べるほどでもない…」

ふと、シロの脳裏に生誕祭で踊るスミレの姿がよぎった。

「まあ、あの時のお前は悪くなかった…」


「あの時?」


シロはつい口に出してしまった言葉を後悔し口を閉じた。


「王子様!あの時って?」

「う、うるさい!それに王子と呼ぶなと言ったはずだ!」

「あ、えっと…シロ…様…」


なんだか、この呼び名は、スミレにはまだ馴染まない。

「もういい。お前と余計なお喋りをしているほど暇ではないのだ!仕事を切り上げて着いてこい」


だが裏腹に、スミレと話すのは嫌ではない。

時間を忘れ立ち止まって話していてもいいかもしれない。

何故なのかシロには全くわからないが、スミレといると気が休まる。


そんな気がした。



スミレはシロに言われるがまま、仕事をすぐに切り上げ片付けを済ますと、窓際で外を見て時間を潰すシロの元に駆け寄る。


そして何も言わないシロの背中を追いかけた。




シロ様〜あんた大変だよ〜

とグチをこぼしつつ…


次回はもっと大変!新キャラのパレードが始まりますΣ( ̄◇ ̄*)?!

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