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シロ×クロ  作者: あらた
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エピローグ

意識を失ったシロを引き戻すことができたスミレ。そして、みなでいつのも生活に戻る・・・ハズだったのだが・・・

その後、吸血鬼事件から裏で糸を引いていた錬金術師は全身をロープで縛られ吊るされていたところを発見され巡察隊に補導された。


そして、全員で護りぬいた街は何事もなかったかのように日常を取り戻していた。

城の中も相変わらずの日々が続くと思われた…。



バタバタと軽い足音が城の中を急ぎ走る。


「ジャスパー!?怪我はもう平気なの?」

「はいっ、アヤメさんのお陰です!!ありがとうございました!」

洗濯物をもったアヤメにジャスパーはしっかりとお辞儀をし一旦止めた足をまた、世話しなく動かすと、とある部屋に走っていく。

勢いよくその部屋を開けた。


「きゃー!!」

「うがっ!!」

中から悲鳴と、椅子が飛んできた。

その直撃を受け廊下に伸びるジャスパー。


「イッテ~、ひどくない?」

「ジャスパー!?もう、ノックくらいしてよ!」

その一言に着替え中であったのだろうとジャスパーは推測し顔を隠した。


「ごめんなさい…だけど、気にするんだ…やっぱり恋すると女は変わるんだね!!」

「な、何いってるのよ!!」

扉が開き、中からスミレが真っ赤な顔を覗かせた。


「元気そうだな!」

「ジャスパーこそ、怪我はもういいの?」

「おう!!このとおり…」

ジャスパーは笑顔で傷を負った腕を振り回す。


「風邪は、もういいのか?」

「お陰さまで!!」

あれから3日間、雨に濡れた体をそのままに、死闘を繰り広げたスミレは高熱を出し寝込んでいたのだ。


「そっか…」

「今日からまた復帰できそうよ!」

両手でガッツポーズを作るスミレに、ジャスパーは今度はどことなく寂しそうな顔を向けた。


「ああ…あのさ、その服、着替えて…スミレにお客様だって。クロさんが…」

歯切れ悪くうつむきながらジャスパーは告げた。

スミレはただ、首をかしげるだけだった。



「ミモザ…」

「スミレ!!」

ジャスパーに連れられスミレは王室に入った。

そこには王の椅子に偉そうに座るこの国の王子と、その脇にオリーブ、ペリドットがいる。

入り口にはクロの姿もあった。


そして、王子の前に膝をつきスミレを待っていたのは、ここまでスミレを育ててきたミモザだった。

スミレはその姿を見るなり、涙を流して恰幅のいい懐に飛び込んでいた。


「ちょっと、スミレ…王子様の前だよ!おやめなさい…」

「うぅっ会いたかった…」

ミモザの手が優しくスミレを包んだ。


「女将…」

王子がゆっくりと口を開く。

ミモザは慌ててスミレを落ち着かせて話を聞こうとする。


「そのままでよい。よく戻られた。その娘の協力のお陰で、悪しき組織の壊滅に成功した」

白髪の王子は淡々と話を始める。

スミレは不思議な顔を向けその声の主を見つめる。


「シロ様?」

「よって、その娘の解放を許可する」


「え…?」

驚きを隠せないスミレとは対照的にミモザは満面の笑みをスミレに向けた。


「シロ様?解放って…」

「協力、感謝する。スミ…あなたのお陰で国が救われたのだ」

シロが抑揚のない話し方で静かに感情無くスミレを見つめた。


「荷物をまとめ、女将たちと、平和な国をまた、渡り歩くがいい」

そういうと真っ白なマントを大きく揺らし立ち上がって去ってしまった。


突然のことで思考回路が停止する。


そんなスミレをミモザは一瞬戸惑いの表情で見るが、声をあげた。

「さ、皆が待ってるよ!エースの欠けた舞踏団がどんなに寂しかったか」

動くことのできないスミレを抱き寄せる。




「スミレ…ほんとに行っちゃうのか?」

ミモザたちは一旦街の滞在場所に戻り、スミレの旅支度を待つこととなった。

与えられた部屋の荷物をまとめているスミレにジャスパーは困惑気味な声で呟く。


「そうだね。私は、元々吸血鬼騒動の重要参考人でここに居ただけだから…」

「あの人はスミレの大切な人なんだな」

「ミモザは私が小さい頃から母親代わりに面倒を見てくれた人よ」

「だからって急すぎよね…」

部屋の整理を手伝うアヤメも寂しそうに服を畳む。


「シロくんがあの戦いのあとにすぐに探させて、よんだそうよ」

「さくらさん!!」

ドアの前にさくらの姿があった。

「薄情な人ね」

「いえ、シロ様らしいです。どんなことにも先手を打つ。私がこの国にいたらまた、いつこの瞳のせいで危険にさらされるからわからないですから」


「そんな…わたし、スミレのこと妹みたいに思ってた。こんな急にお別れなんて嫌よ…」

「さくらさん…」

スミレの瞳に悲しみで涙が溜まり出す。

荷物を大きなトランクに押し込んだスミレが立ち上がり部屋を見回した。


「シロ様」

この部屋でシロに抱き締められた事、シロと喧嘩した事、シロの幸せそうな寝顔、そして苦しむ顔。


たかがスミレが国の王子とたくさんの時間を過ごし、触れることができたことを、今ではまるで夢の中の事のように思う。

だが、先程から胸の奥が痛むのだ。


「もう行くのか?」

「クロさん」

スミレのピンチを何度となく救い、命を賭けてシロを守るクロが部屋の前に立った。


「クロさん、今まで、本当にありがとうございました。シロ様の事…お願いしますね」

当初無表情だったクロの顔から柔らかい笑顔が返ってきた。


「ふっ。お前が一番よくわかってるはずだが?あの人は人一倍意地っ張りで素直じゃない」

「わかってます。あんな言い方しかできないけど、あの方なりに私の事を少しでも思ってくれたんですよね?ただの渡り芸人が一国の王子様ときちんと向き合うなんて…」


「スミレ。それは違うぞ。たかが一人の女のために毎日部屋に通い、看病をするか?」


「嘘…」


「お前が寝込み意識混濁しているとき、シロ様はずっと側にいた…」

「クロさん…」

スミレはクロの着物をつかんだ。

戸惑いではなくどこか心を決めた視線を送る。


「礼を言うなら、展望室だ…いや、礼などいないだろう…行ってやってくれないか?」

その言葉を聞くなりスミレは部屋を飛び出した。


「クロさん、やっぱり人一倍優しいです。スミレ、がんばれっ」

さくらがクロの横に立って、走り去るスミレを見送る。



この国が見渡せる展望室に息を切らせたスミレが入っていく。

その背中はスミレの気配を感じていても振り向くことはなかった。

スミレは呼吸を落ち着かせながらゆっくりと歩み寄る。


「言いたいことが、たくさんあるそうだな。オリーブが言っていた。そんなことで俺の足止めはできないがな」

シロが目覚めたとき、オリーブはシロをそう言って引き留めたが、引き止める権利はない、と、話を聞かず戦場へ向かった。


「たくさんあります。シロ様はいつも勝手に自分だけ色んなことを抱えすぎです!結局自分が犠牲になる!周りのみんながどれだけ心配したと思ってるんですか!」

「迷惑をかけたつもりはない、俺のやり方だ。…他には?」

「口が悪い。わがまま。無謀…意地悪…意地っ張り!」

「王子に対する言葉か?…他には?」

「だけど、本当は淋しがり屋…そしてすごく優しいです。私の看病をしてくれてありがとうございます…」

シロはまだ、スミレに背中を向けただその話を聞き続ける。


「他には?」

「もう、無茶はしないで…簡単に命を投げ出さないで…」

スミレは震える声を押さえながら、シロに近づいた。


「まだあるのか?」

「こっちを…向いてください…」

その言葉をきくと、白い髪が風に揺れ、マントが靡く。

太陽がいたずらにそのきれいな顔を照らした。


スミレが涙をこぼす。


その瞬間スミレは温かいその胸の中にいた。


「もう、言うことはないのか?」

「『生きていた証』なんて要らないです。生きていてほしい」

側で胸を張り威張っていてほしい。

いつまでもこの胸の鼓動を感じていたい。

ずっとシロの腕の中に包まれていたい。

スミレは切に願った。



お互いがしっかりとお互いを抱きしめ合う。

しばらくしてシロが口を開いた。


「なんでも言うことをきくと言ったな」

「…はい」

しばらく間が空く。

何を言われるのか不安がよぎった。


「ずっと…側にいてくれ」


思いもかけないシロの言葉にスミレは涙が止まらなくなる。


「何をしていてもいつの間にかお前がオレの心の中に居る。お前の存在が俺の救いだ…」

「シロ様…」

「一緒に生きてくれるな?」

シロがスミレの耳元で優しく囁く。


「はい!!」

スミレはしっかりとその目を見つめ頷いた。


シロの指がそっとスミレの顎を引き上げる。

スミレも抵抗なく受け入れ、瞳を閉じた。

あの戦い以降二回目の口づけは、お互いの心が通い合った証となった。




「そうかい…あんたが決めたんなら私は何も言わないよ。生きていく場所を見つけたんだね。私も子離れをしなきゃね。王子様、この子の事よろしくお願いします」

ミモザが深々とシロに向かって頭を下げる。


「何度でも必ず来てくれ。客人としてもてなそう」

「はい、ありがたき幸せ」

そういい残すと、ミモザたち一行はウェンダブルの国を去っていった。



「なんだやっぱり恋か!!」

ミモザを見送るスミレとシロの後ろからジャスパーが声をかける。

振り向くとさくらが手を振り、オリーブとペリドットはたくさんの書類を抱え、アヤメはほうきを握り、『純正団』のメンバーはにやにやしながらこちらを見ていた。


そしてクロがやって来た。


「スミレ、シロ様を頼んだぞ」


「はい!!任せてください!」

「お前なんかに任せられるものか!!」

「私がいなきゃ、誰がシロ様を叱るんです?」

「お前なんかに叱られるくらいなら呪われて死ぬわ」

「何て事を!口をお慎みください!!」

「オリーブみたいなことを言うな!!」

そんな言いあいをする二人の手と手はしっかりと握られている。


その背景のウェンダブルの空は相変わらずの快晴だった。


長い時間がかかりました。

それでも、コチラに来ていただけたすべての方に、心より感謝いたします。


皆さまの応援があったからこそ完結にまで辿り着くことが出来ました。

本当にありがとうございました!!

そして、これからもシロクロはじめ、ほか作品にもお立ち寄りいただければ幸いです。

シロクロメンバーはこれからもこの世界で生きていってくれることでしょう。

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