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シロ×クロ  作者: あらた
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第3章① 災いの訪れ

とうとう3章突入です。

新キャラくんは少年!そして、クロの過去に迫る

第3章どうぞよろしくお願いいたします!

目の前は鮮血に染まる真っ赤な海。

その上をチラチラと何かが舞っていた。

手を伸ばして掴もうとしてもすぐに消えてしまう。


目を閉じる。


真っ暗な闇がそこにはあった。


その真っ黒な世界にどこまでも堕ちて、やがて潰されてしまう気がする。


迫る闇の恐怖を振り払おうとまた目を開けた。


そこには親しみのある顔が浮かぶが、はっきりとは見えない。


「あなたは…」

その人影に抱き締められた。

体から伝わる温もりに身を預ける。


力が抜けてゆく…





「起きてください」


体を揺すられゆっくりと目を開ける。

そこは夢の中とは離れた現実の世界。

ボンヤリとした視界が続いたが、こいつが来たからにはよくない知らせに違いないと、顔を向ける。


「…ペリドットか」


「クロさん!!何か悪い夢でも見てたんですか?うなされてましたよ。それに僕が来たのになかなか起きないなんて珍しい」


確かにあの夢はクロの全身を縛り付けるようだった。

深い眠りにつかされていたのだろう。

体を起こすが、ずしっと重たいものがまとわりつく。


「で、妖魔か?」

「ご名答!!シロ様が先に向かわれてますよ」

「!」

その言葉を聞くなりクロは体の重たさを忘れ、布団から飛び起き刀を掴むと、ペリドットを無視するように部屋を飛び出した。


「今回は落神ではないようです。お気を付けて!」

後ろの方でペリドットが叫ぶが、クロはあっという間に遠くへ走り去る。


「シロ様をお願いしますよ」

どこか遠くを見つめてペリドットはクロの背中に呟いた。



「シロ様!!」


「クロ…」

あっという間に地下道を抜け街へ出る。

その出口には黒いロングコートを風になびかせ街を見下ろすシロがいた。

まだ、力を使っていないようでクロは安心する。


「どうか俺に任せてくれ」

懇願するように一言呟くと、クロはシロの前に立った。


「お前…」

クロは見晴らしのいい高台から街を眺め、目を瞑る。

一角で魔力の高まりを感じた。


「翡翠か…」

「ああ、まだ回復しきってないのに…」

シロの言葉も半ばにクロはすぐに現場へ駆け出した。


その脳裏には深淵の女王クレマチスの言葉だけが巡る。


『シロのためにたくさんの落神を斬りなさい。しばらくはそれで許してあげる』


意味ははっきりとはわからない。

しかし、シロにあの力を使わせてはいけないと心のどこかで警戒していた。



街の中で、ものすごい爆音が鳴り響く。

瞬時にまた魔力が高まる。

同じように何度も光の弾はある一点に撃ち込まれていた。


「俺がやる」

「クロ?」

クロの方を振り向いた翡翠の顔は疲弊しきっていた。


すぐに爆撃跡に向けて刀を構え突進する。

しかし次の瞬間金属同士のぶつかる高い音が響き、その手応えにクロは表情を歪ませた。


「貴様は…」


クロの刀と交わるもう一本の刀。

砂煙の中から姿を表したのは、額に鋭く伸びた角に筋骨隆々な肢体。

そして手にはクロと同じく刀を携えた怪物が余裕の表情でクロの刀を受け止めていた。


クロの刀が震え出す。

刀と言うよりはクロ自身がその妖魔の容姿に驚きを隠せない様子だった。


「離れろ!!」

上空から声がすると同時に、数本のクナイが妖魔とクロの間を埋めるように地面に突き刺ささった。


「アイリスか」

支援したアイリスは間髪空けずクナイを妖魔に向け放つが全て刀によって打ち返される。


「なんなんだ、あいつは」

翡翠が手を前にかざし魔力をためながら呟く。


「わからない、だが…」


知っている。

そう言おうとしたその時、目の前の妖魔は光の鎖で体を拘束された。


その体に食い込む鎖を力で振りほどこうと暴れる妖魔。

すぐにとどめを刺したかったが、クロの足が前に出ない。


「何をしている。お前の敵ではないはずだ。早く仕留めろ」

「シロ様…」

クロは妖魔に向かって一歩踏み出すと何かを吹っ切ったように刀を強く握り直す。

そして妖魔に斬りかかった。



「それでいい…」

妖魔の消えた戦場跡に静寂が訪れる。

クロはすぐにシロの元へ駆け寄った。


「シロ様…力を…」

「皆が戦っている。なにもしないわけにはいかないだろう」

余裕の表情のわりに肩を大きく上下させ荒い息づかいのシロにクロは返す言葉がなかった。


その静かな時間を打ち破るように、物陰から一人の少年が姿を表した。


「…助かったの?」

全身ボロボロの少年はふらふらな足取りでシロの方へ歩き出す。

そして手前にいたクロのもとで気を失った。




―置いていかないで。


目の前に広がる残酷な光景。

親しい人間の血にまみれた体がいくつも転がる。


目を閉じようにも体は震えて言うことを聞かない。


またなにかが斬られる音。

それもすぐ近く。


あいつがやって来た。

もう逃げられない。


息を潜めて恐怖が去るのを待つ。

しかし、ソレは目の前に立っていた。


額に伸びる二本の角。

血をたくさん浴びた着物。

真っ赤に染まる刀。


そいつの口許が上がり、高く掲げられた赤い液体の滴る鈍く光る刀が振り下ろされる。



「わ~っ!!」

身体中の力を込めて叫び飛び起きる。


だが、想像していた世界よりも静かな風景が広がっていた。


「はぁ…」

あの夢は少年の過去の記憶であることと自分の全てを思いだし、深く息を吐く。


「ここは?」

見慣れない部屋の中。

暖かい布団。


「目、覚めた?何か飲む?」

見たことのない少女がこちらに微笑みを投げ掛けた。


少年は警戒し、自分の護身用に携えていた刀を手で探る。


「はい、紅茶でいいかな?」

少年の警戒心など気にする様子もなく目の前におしゃれなティーカップが笑顔と共に差し出された。

少年は渋々それを受け取る。


「トパーズ先生は疲労とかすり傷くらいだからしばらく休んで美味しいものでも食べたらもう大丈夫だろうって!」

ティーカップを受け取り、はぐらかされた質問をもう一度した。


「ここはどこ?」

「お城の中の私のお部屋よ」


「城?俺は確か、一本角の『鬼』に出会って…」

「翡翠さんから聞いたわ、あなた、戦っていたらしいわね…こんなに小さいのに」

少女の手が少年の頭に伸びるのを少年はさっとかわす。


「小さいと言うな。これでも10歳だ。お前こそ小さいじゃないか」

「…なんか、どっかの誰かさんとにてる…」


「?」

少年の瞳が少女の瞳を見つめる。


「お前、目の中に…」

はっとした表情をお互い浮かべた。


「虫がいるぞ…」

「えっ!?」

少女の不思議な瞳を少年は観察するように見つめる。


「あんまり見ないでっ」

少女の顔が赤くなっていく。


「君、名前は?私はスミレ。もうお前、なんて呼ばないのよ」

「スミレ…俺はジャスパーだ。どうやら救ってもらったようだな。感謝する」


「なんだか、つくづくシロ様に似てるのね…どこかの王子さま?」

感心した眼差しをジャスパーに向けるスミレ。


「シロ…」

「このウェンダブル国の王子さまよ。無茶苦茶な人なんだけどね…」


「誰が無茶苦茶な人だって!?」


「!」

その声に振り返ると、そこには腕を組み仁王立ちしているシロが、眉間にシワを寄せこちらを睨んでいた。


「シロ様!!」

「ジャスパーと言ったな、お前どこからなんのために来た?」


「そんな威張って言われては警戒してしまいます!」

スミレがシロをたしなめる。

しかし、ジャスパーは立ち上がり、シロの前に行き膝をついた。


「和の国の小さな村から参りました。村を滅ぼした敵を探して旅をしています」

「…ほう。子供にしては礼儀を知っているようだな。スミレ、ジャスパーの面倒を見てやれ」

その態度にシロの表情が少しだけ柔らかくなる。


「私がですか?」


「そうだな、クロに剣術をならうといい」

「クロ?」

「お前と戦っていた妖魔を切り伏せた剣士だ」

ジャスパーは気を失う寸前に見た刀を持った一人の男を思い出した。


「敵を探す前に少しでも役に立つなら誰かに何かを習うのは悪いことではない。気に入らないのならば去ればよい」

「はい!!お世話になります!!」

ジャスパーは嬉しそうにシロに頭を下げた。


すると、すぐにシロは部屋を出て行こうと背を向けた。


「もう行ってしまうんですか?今、紅茶をお入れします」

「こんなところに用はない。茶も要らぬ」

冷たく言い放つと扉を開け出ていった。


シロのそっけない態度に肩を落としたたずむスミレにジャスパーは近づき、

「元気出せよ」

そう言ってスミレの背中を軽く叩いた。




ありがとうございました!

元気出せよ!

シロ君の態度…スミレとの関係も気にしていただければと思います。

3章はなんやかんやすごいことにしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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