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シロ×クロ  作者: あらた
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第2章⑥ 瞳の警告

そろそろ2章も終わりが見えてきました。

ここで新展開が!

今回は大切な話となっております。

是非ともご一読ください!

「あのお〜こんなことして、何かあったらどうすればいいのですか…」


暗闇の中、一つのランプの明かりだけを頼りに、二つの影が並んで歩いている。



「だだだ大丈夫ですわ!!コソッと覗くだけですから!!あなたは黙って付いてくればいいのよ!!」


「…はい…姫様」


スミレとエリカの意外な組み合わせの二人は、街へと続く城の地下道を出口と思われる方へ進んでいた。


いつまでも続くと思われた長い一本道の途中、ひんやりと冷たい空気に変わる。


「外が近いようね」


「…」


「なんか喋りなさいよ!!」

エリカが声を上げると、甲高いその声は冷たいコンクリートの壁に反響する。


前を歩くスミレの肩が驚きで持ち上がった。


「黙れとおっしゃったのに…」

不服な顔も暗闇で見えない。



「じゃあ、私からお話しましょうか」

エリカが突然話を切り出した。


「話ですか?」

スミレは前に進みながら首をかしげる。


「えぇ!あなたはシロの何なの?」

エリカからはやはり直球が飛んできた。


「えっ?…えっとお城で働かせてもらってる、ただのメイドと王子さまと…」

あまりにストレートな質問に何故かスミレは赤面し、あたふたしてしまう。


「ふ〜ん?ただのメイドがシロとあんな…感じに…」

エリカの視線はスミレを突き刺している。


「あの、あれは…」

今朝の事はやはりスミレの心臓を跳ねさせた。


言葉が出てこない。


そんなスミレの反応にエリカは更に怒りを募らせる。


「やっぱり!一つ言っておくわよ!シロは私のものになるんだから、もう気安く近づかないことね!」


「え?」

スミレには弁解もそれに対する返事もすることができない。


しかし、なぜだか、胸にチクリと棘が刺さった気がした。



やがて入ってくる風も強くなり、闇の中に三日月がぽっかりと浮かんで見える。

出口を見つけると、二人ともが早足になった。


そして、地下道を抜けたその先には、よく知っている人物の背中。



「シロ!見つけましたわ」


「!!」



そこには白い髪を風に揺らし、暗闇に溶ける衣装をまとったシロの姿があった。

エリカの声に気づき慌ててこちらを振り返る。


エリカは即座にシロの方へ駆け寄り驚きで硬直した体を抱き締めた。



その衝撃で我に返り、目をつり上げスミレに向かって怒鳴る。


「どう言うことだ!!」


「すいませんっ」

二人の後ろで成り行きを見ていたスミレはその剣幕に目を瞑り小さくなる。



「私がお願いしましたのよ。シロとあの様な…関係にあるものであれば城を抜ける手立てを知っているかと思いまして…」


つまり、シロとの関係をばらされたくなければ私をシロの向かった街へ案内しろ、と脅されたようだ。



「なぜ来たのですか…」

シロは困り果てた顔をエリカに向ける。

そしてエリカからさりげなく体を離した。


エリカはしっかりとシロを見る。


「あなたの全てを知りたいからです」

帰る気がないことを告げる。



「今は妖魔が徘徊しています。危険です…」

わがままな子供を諭すようにシロはエリカの顔を見る。


「明日には、きっと安全になっていますわよね?街に連れていってくださいますか!?」


「…わかりましたから…」

シロが、ため息混じりに降参した。

エリカの思いが一枚上手だったようだ。



「よくここがわかったな」

シロはスミレに向かって言い捨てる。


すぐにエリカが口を挟んだ。


「匂いですわ!!王子の芳しき香りは私をあなたの元へ誘います。今朝もすぐに見つけましたから」


一瞬シロとスミレは目と目が合う。

だがスミレは先ほどの出来事を思い出し、気まずさで目をそらした。


スミレの反応に不満そうな眼をしたが、シロは考え込むように眉を寄せ、エリカに向いた。



「ちょっと、お聞きしたいのですが…」

「なんですの?」


「今朝はあなたが私の居場所を突き止めたと?」


「えぇ…」


「…私の従者に案内されたのでは?」


「そんなわけありませんわ!!私はあなたのいる場所はすぐにわかりましたもの」


「じゃあ、一緒にいたのは…」


「あの黒い髪の殿方ですか?部屋に入るのを止められましたけど…」



「…なんと言うことだ…」

シロの表情が落胆の色に変わる。



「そう言えばクロさんが居ませんね」

スミレがあたりを見渡しながら首をかしげる。

先ほどの、なんだか切ないクロの背中を思い出した。


「クロさん、落ち込んでいたようでしたけど、シロ様、また意地悪なことでも言ったんですか?」

その言葉にシロは無言でスミレに背を向ける。

やがて口を開いた。


「お前な…まあいい…城に戻ったらクロを呼んでくれ…私の元にすぐに来るようにと…」

それは命令ではなく懇願するような口調だった。


何があったのか、今朝のことに関係があるのではないかと、スミレは不安になる。

しかし、それを訊ねる事は出来なかった。



「頼んだぞ、…スミレ」

そう言うとシロは街の中へ向かって歩き出した。


「はい!…え…今、私の名前よびました!?ねえ、シロ様?」


「うるさいやつだな!!早く行け!!」

シロはそのまま駆け出して行ってしまう。


スミレは、突然シロに自分の名前が呼ばれた事が恥ずかしく、そして、嬉しかった。


エリカはスミレを睨み付け、いかにも不機嫌な表情を浮かべるとスカートを持ち上げた。


「あなたには負けないんだから!!」

そして、スミレを見下ろし、歩き出した。


朝の件を試すつもりで、スミレを連れ出しシロとの仲を見せつけようとしたようだ。


しかし、逆に二人の関係をより知ることとなってしまう。


「あの…帰りはこっちですけど…」

スミレはそんなエリカの言動の意図は全くわからず、ただ、シロやクロの落ち込んだ背中が気になり、すぐに城へ戻らなければいけない気がしていた。


「言ったはずよ、シロの全てが知りたいと…」

迷うことなく夜の暗がりの中へ歩みを進めるエリカ。


追うべきか、クロを呼びに城へ戻るべきか…


エリカの後ろ姿を見つめながら必死に考えるが、スミレの足はエリカの背中を追うために地下道の入り口から反転していた。

その足音に、エリカは、苛立ちすごいスピードでその場を駆け出す。


「姫様!待ってくださ…」

突然、スミレの周りが明るくなり瞳に痛みが起こる。



「えっ」

瞳が何かに反応して輝き出したのだ。




「素敵…」

路地裏から何か細い棒のようなものが、カツンカツンと地面を突くようにゆっくりと近づいてくる。


それはピンヒールの音で、目を細めてそちらをよく見るとオリーブのような妖艶な体をくねらせ肌の露出の多い服を着た女がそこから姿を現した。


真っ黒な髪にスパッと揃えられた前髪。

一つに束ねられた長い髪が揺れている。

そしてその瞳は感情のない冷たさを湛えていた。


しかし、楽しそうに口元だけが上がっている。


「初めまして…」

周りを凍りつかせるような声でスミレに話しかけてくる。


この女は人間ではないと、スミレの全身が警笛をならす。


女が近づく度に見えない力のようなものに押され、スミレは後ろへ下がる。



「誰…」

危険だと解しながらも、勇気を出して口を開く。


「ふふっ」

女はやはり嬉しそうに笑う。


「怯えなくても良くてよ。わたしは妖魔なんて下等な生き物ではない。だけど神でもない」


寒さのせいではなくスミレの体が震えだした。



「落ちてくる神様に混じってこの世界に来ただけよ。目的は…王子とあなた」

女の長い爪がスミレを指差す。



「…それと…」

スミレを見ていた女は、目線を少し横にずらした。



「出てきなさい。シロに命を預けし者よ」


女の視線の先は地下道の入り口の方へ向いている。

その影から静かに一人の男が姿を表した。



「その娘から離れろ」



「クロ…さん?」

全身に殺気を浮かべ刀の柄に手を乗せたクロが一歩前に出てきた。



「その眼差し、いいわね…」

女はクロに対して全く怯まない。


「大丈夫。私はなにもしないわ。シロが契約を守る限り」

女の歩みがスミレの前で止まる。


スミレはすでに壁に背中が当たり、身動きがとれない。

下手に逃げることもできないほどの力が女から滲み出ている。


「シロも欲しい…だけど、あなたのソレはもっと欲しいわね…」

女がスミレの輝く瞳を見つめ、顔に手を伸ばしたその瞬間。



女とスミレの間に激しい閃光が走った。


「そうね、貴方も欲しい」

二人の間に距離ができる。


銀色に光る刀を構えたクロがスミレをかばうように間に入っていた。



「お前は何者だ」

鋭い眼光で女を睨み付けるクロ。


「そんなものでは私は斬れないわ」

女はニヤリと笑いながら後ろを向いた。



「シロのために落神をたくさん斬りなさい」

顔だけを向けクロを見つめる。


「シロ様のためだと?どういうことだ…」

クロの問いかけには答える様子もなく、また後ろを向き歩き始める。


「しばらくはそれで許してあげる。ほんとに今日は遊びに来ただけよ。あ、来るついでに邪魔だった魔導師を一人いじめちゃったけど、殺してないから許してね。あとはあのでっかい落神を倒すだけだから。…よろしくね」



その言葉には感情がなく、それでもなぜか楽しそうに歩きながら、女はあっという間に闇に消えてしまった。


スミレの瞳の光は治まり、クロの表情は困惑に曇っている。

二人ともが狐につままれたような気分になった。



スミレがクロの着物の袖を掴む。



「シロ様の、『契約』って?」

「…わからない…」

スミレの脳裏に昨晩のシロの苦しむ顔と胸の紋様が浮かんだ。


だが同時にそれはスミレが触れていいものではない気がした。


シロが抱えるものが想像を越えているようで胸が締め付けられる。



クロはもう何も語ろうとせず刀を鞘に納め、何かを考え込んでいるが、スミレと同じことを思っているようだった。


やがてクロが口を開く。


「このことは口外無いよう頼む。さて、シロ様と…お姫様を追わなければ…」

そう言うとスミレを一度見て、その手を掴んだ。


「お前も来い」

そう言うと、エリカが消えていった道の先へ二人は走り始めた。




繋ぎを越えて新展開です。

シロ様どしたの??そう思っていただければいいのです。

次回は、ちょっと戦闘シーンを織り交ぜ展開していきますので

更新を心の片隅でもお待ちいただければ幸いです。

ご覧いただきましてありがとうございました。

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