表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シロ×クロ  作者: あらた
10/37

第1章 作戦、始まる

今回は女だらけです。

どうなることやら…

「待ってましたわ」


自分の服に着替えたスミレと合流したイキシアの二人を、クロの部屋で出会ったさくらが城門前で迎えた。


「さくら…さん?」

さくらは少し不機嫌そうにスミレと、その脇にいるイキシアを見る。


「この国の王子直々の命令では仕方ないわ。この任は私が、あなた方の面倒を見ます。イキシアさん宜しいですか?」


ただ静かに話を聞くイキシアをスミレはチラッと見る。


「さくら殿に頼んだか。王子は何を考えている…」


「いっ、一度は失敗しましたが、この街は私が暮らす大切な場所です。『純正団』のお力があれば、二度目の失敗などありません」


興奮気味に話すさくらと対称的にイキシアは至って冷静だった。


「さくら殿の力を甘く見ているわけではない、むしろこちらこそ頼りにしてはいるが…」

そう言うとイキシアは黙ってしまう。



スミレと、イキシアは歩き出したさくらの後を黙々と着いていく。


この沈黙に耐えられなくなったスミレが口を開いた。


「あのっ!さくらさんは城下街で暮らしているんですか?」

「えぇそうよ。まあ、シロ君の級友というだけで、城への出入りは自由なの。シロ君も優秀だったみたいだけど、私には負い目があるのかなぁ〜」


さくらの機嫌が少しよくなる。


「スゴいですね。私なんて、特技と呼べるものなんてなんにも…まして、戦うなんて…」



スミレは正直、まだ戸惑っていた。


何も役に立たずにただ吸血鬼の餌食になってしまうのではないか。


まして、あんな恐ろしい思いを自らしに行くなんて。


…なぜ断らなかったのか。きっと断る余地はあった。


だが、スミレは自らが囮となることを決めた。


「あなたは、なぜこの件を引き受けたの?」


スミレの心情を察したのか、さくらが立ち止まりスミレに訊ねる。


「…怖くないの?」


「こ、怖いです。だけど、この瞳の力でなにか役に立てると思うと、逆に引き受けなければいけない気がしました。そして、何故だか、皆さんのことは信頼できるんです。絶対に大丈夫だって」


スミレは恥ずかしそうにうつむきながら笑った。


イキシアが口を開く。


「人間とはおかしな生き物だ。初めて会い、力も素性もわからぬものを信頼するなどあり得ん」


イキシアの言葉にさくらも続いた。


「力になりたい、それだけで、何も知らない人に命を預けるなんて…」


スミレの考えは理解されないようだ。

二人は揃って首を横に傾ける。


「しかし、我々を信頼する気持ち受け取っておこう。そしてその信頼に応えよう」

イキシアが軽く笑う。


「私たちに任せて!」

さくらもスミレに笑いかけた。


「お願いします!!」

スミレは髪を揺らしながら二人に深く頭を下げた。



しばらく山を下ると街に出る。

舞踏団の皆と荷馬車で通った道。

そして、夜に迷い戦慄の出会いをした路地裏。


たったそれだけなのにこの街の印象は色濃い。


まだ、夕方で夕飯の買い物客で賑わう商店街を歩く。

そこかしこで店員達が威勢のいい声で呼び込みをしている。


そして甘くて美味しそうな匂いが漂ってきた。



「着いたわ」

さくらがそのいい匂いのする店を指差す。


看板にはベーカリーと書かれていた。


「これが私の住み込みで働いている…」


「パン屋さんなんですか!?」

直ぐにスミレがさくらに言い寄ってきた。


「そ、そんなにキラキラした目しないでよ…」


スミレの羨望の眼差しにさくらは照れてしまう。


「まさか、この様なところで働いていたとは…」

イキシアが少し意外なものを見たような視線を送る。


「私、大好きなんです!!パン!!あ〜なんかさくらさんからは甘い匂いがすると思ってたんですよ!!」


「…あなた、ホントに変な子ね…」

さくらのスミレを見る表情が変わっていた。



すると店内からどこかで見た女が出てくる。


「やっと来たか」

「アイリス…」


大聖堂の中で出会った『純正団』の一人。

先程は黒服に身を包んでいたが、今は普通の街娘の格好をしている。


「いつの間に…」


スミレが驚きの視線を向けていることに気づいた女はスミレに向かって来た。


「私はアイリス。街と城の様子をシロ様に伝令する役割を担う者」


アイリスの自己紹介を聞き、その風貌についてスミレは納得することができた。


「こんなところで話している暇はない。さくら、部屋を借りている。そちらへ」


アイリスに言われるがまま4人はパン屋二階のさくらの部屋に向かった。


「ちょっと!なによこれ!」

部屋に入るなり、さくらは驚きの声をあげた。


部屋の中が真っ黒のカーテンで覆われ、日差しは入らない。

家具は端に片付けられ、中心部に衣装が何点かかけてあるだけとなっていた。



「昼間はまだ日が届く。見つかっては困る。そしてこの衣装は活動用に選んだ隠密の戦闘服だ」


アイリスは少し自慢げに淡々と告げる。



「わぁ〜スゴいですね」

スミレは暗闇では目立たない服一つ一つを手に取りその出来に感心している。


「私はどれを着ればいいですか?」

黒を基調とした衣装を手に取るスミレに、アイリスは近づきそれをまた、掛け直す。


「囮が目立たない服を来てどうするのだ?そちらの街娘用の明るい配色のやつを着てくれ。さくらはこれ、イキシアがこれだ」


たくさんかけられた衣装から一つずつ手渡す。



「衣装マニア?」


さくらが小さく呟いたが、アイリスは聞こえないフリをした。


するといきなりスミレが服を脱ぎ始める。


「ちょっちょっと!何してるのよ!!」


さくらがスミレに向かって怒鳴る。


「へ?あっ!すいません…人目なんて気にしたことなかったもので、つい…」


「別に気にはしないけど…一言断ってよね…」

さくらは困ったように眉を下げた。


「なるほど、スミレは無謀ではなく、無頓着なだけだな。シロ殿が乱心するわけだ」

イキシアはスミレを小バカにしたような目を向ける。


「今、ひょっとして、バカにしました?」

スミレは目を細めてイキシアを見た。


「いや、別に。感心しているだけだが」


イキシアはさらっと受け流す。


「どうでもいいが、早く配置と巡回先を決めたいのだが」


アイリスが二人に冷たい視線を向ける。


「どーでもいいですけど、いつの間にこんなセッティングしたんですか!?」


今度は、さくらがアイリスに冷たい眼差しを送った。


部屋の中は沈黙に包まれた。




不思議な雰囲気になっちゃいましたが第1章もあと少しです!!


息抜きは終わり。

あとふたつ。第1章ラストまでシリアスパート!


暫しお待ちくださいm(__)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ