表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂漠の鐘  作者:
第1部 砂漠の魔獣編
1/9

プロローグ

 辺りに見えるのは、ひたすら砂、砂、砂。ところどころに飛び出した岩が、月光を反射して銀色に輝いている。山のように連なる砂の広野に、影が3つ。動いていた。

「お気をつけ下さい、王子。いつ何時、敵に見つかるやもしれませぬ」

一番大柄な男が、バスの声でいかにも由々しいことであるように言った。臙脂色のマントとフードですっぽり身体を覆い、口元にもマフラーがあるけれど、その下に鍛え抜かれた強靭な身体があることを見て取れる。太い眉と同じ黒髪が、フードの隙間から垣間見える。

「大丈夫です。それにもし敵とまみえることになれば、私も戦うとしましょう。団長ひとりに荷を負わせるつもりはありません」

王子と呼ばれた青年は、静かにうなずく。こちらもそろった臙脂のマントとフードを身につけているが、顔は露見し、月の光に照らされている。月影のせいで光る彼の髪は、1本1本が柔らかい宝剣のようである。年は20を過ぎた頃であろう。その清婉な顔立ちはまさしく王子にふさわしい。

 けれど王子の言葉を聴いた男は、慌てる。

「そんな! 王子御身が自ら戦うなどと!」

「しかし、団長ひとりというわけにいかぬのも確かでしょう。王国の近衛騎士団は、団長ひとりを除いて全員…」

王子の続きをさえぎるように、男は激しく首を振る。

「なりません! もし王子の身に万が一のことがあれば、国王陛下はもちろん、亡くなられた王妃様や、騎士団の部下たちにどんな顔を合わせればいいか…! 王子、あなたの身は必ず私が守り抜いて見せます。ですからあなたは、ご自分が生き残ることだけをお考え下さい」

ですが、と王子は口を開こうとする。けれどそれは、

「だ~いじょうぶッスよ、王子!」

明るい声に止められる。

 団長と呼ばれた大男と同じ太い髪をザックリ切った12才の少年が、茶色のマントを肩からさげ、首に緋色の布を巻きつけた格好でいた。身長は、団長の腰にようやっと頭が届くくらい。

 少年は王子に、にぱっと笑いかける。

「親父は王国一の騎士ッスよ? 心配いりませんって!」

 王子、団長、そして少年。

 物語は、この広大な砂漠とこの3人を中心に、回るのです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ