横浜万博 第8話 短編版
万博最終日。
僕と結城さん、住吉さん、藤井さんの4人は、よりによって“外れ”の24時間ゲート勤務だった。
パビリオンの警備員やコンパニオンたちは、閉幕後に盛大な打ち上げ。
でも僕たちは参加できない。
しかも解体作業の出入りがあるから、仕事は10月末まで続く。
「最悪だよな今日は」
結城さんの愚痴に、全員が黙ってうなずいた。
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花火の夜
夕方、最終日の花火を見に来た客がどっと押し寄せる。
僕たちは不機嫌な顔でゲートに立ちながら、この半年を思い返していた。
田村さんの失踪。
火事。
結城さんのフィアット。
ダフ屋。
競馬。
洋子ちゃんのビンタ。
直子さんとのすれ違い。
久美と行った新島。
大学だけでは絶対に得られなかった日々だった。
洋子ちゃんは結城さんを完全に無視し、
直子さんも僕を見向きもしないまま通り過ぎた。
僕は悪くないはずなのに。
でも電話はしなかった。
向こうから連絡が来るのを待った。
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「電話ちょうだい」
花火が終わり、客が一気に退場。
その後、会場内では打ち上げが始まり、酔った仲間たちが帰っていく。
そんな中、直子さんが歩道を通り過ぎた。
——これが最後かもしれない。
そう思った瞬間、彼女が振り返り、走ってきた。
「電話ちょうだい」
その一言だけ残して去っていった。
胸が熱くなった。
今日バイトでよかった。
ボックスの中から結城さんが
「電話ちょうだい〜」
とからかってきた。
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洋子ちゃん、最後の“仕返し”
僕と交代で結城さんがゲートに立つ。
すると11時過ぎ、洋子ちゃんが知らない男と手をつないで通過した。
結城さんの“殺気”が伝わる。
「結城さん、ストップ」
小声で止めた。
洋子ちゃんはわざと見せつけるように通り過ぎ、
遠くで大きく手を振った。
「なんだよ、あのおんな」
結城さんは負け惜しみのように言った。
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誤解は解けた
11時半。直子さんが帰る頃だと思い、電話ボックスへ。
「もしもし」
直子さんの声にほっとした。
アメリカ・パビリオンの女性の誤解も解け、
次に会う約束までできた。
最終日にゲートに立っていたから、
彼女は声をかけてくれた。
本当に今日でよかった。
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男たちの夜の会話
「どうだった?」
結城さんが聞く。
「誤解とけた。次会うよ」
そこから結城さんの“恋愛持論”が始まった。
「女は嘘うまい。男は下手。だからすぐバレる」
「でも二人になったら目見て話して、ちゃんと向き合えばいい」
妙に説得力があった。
住吉さんと藤井さんが交代に来ると、
結城さんは圭子ちゃんの話をしながら、
「彼氏彼女になるってことは浮気禁止なんだよ」
「じゃあ僕は久美に対してまずい?」
「そう」
「バレなきゃいい?」
「バレたらあそこちょん切られるぞ」
「オメーラ! 夜中に何の話してんだ!」
住吉さんが怒鳴り、僕たちは笑った。
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