1話目
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測定結果:《汚染度3.6%》
「うーん、確かにちょっと高めですね。これなら消毒だけでもしたほうが良いと思いますけど、どうされます?」
「そうは言ってもねぇ、リツちゃん。消毒って、簡単に言うけど、お高いわよねぇ?」
「放置すればますます悪化しますし、そうなればもっとお値段も張りますし――」
リツと老夫婦の交渉は、ここ1週間ほど続いている。いつまでたっても平行線の会話を聞きながしながら、画面の測定結果を見つめた。
ここ、パーツィ地区第8基地の汚染度レベルは、半年ほどで大きく上昇している。
(リツの言う通り、このままでは悪化が進むだけ。本部の対応を待つしかないけれど…)
隣の会話に耳を傾ける。
「おい、聞いたか?第7基地がとうとう潰れたってよ」
「第7基地?ああ、隣も第7からの避難民だったっけか。ここももう終わりかもしれんな」
「クソっ、第6の空きはいつまでたっても見つかりそうにないし、どうしろって言うんだよ…」
(……)
第8「基地」とは名ばかりで、実際にここで寝泊まりしているのは私たちを抜いておおよそ15名、9世帯程度。
簡易的な避難所でもあり、その大きさは現代日本でいうと体育館くらいのスペースになる。
じめじめとしたカビ臭さが漂っていて薄暗い。
区画ごとに線が引かれていて、プライバシーと衛生観念はゼロに近かった。
(そろそろ本格的に不味くなってきた。本部からの連絡は『人が足りない』か『予算が足りない』の2択で、ちっとも動く気配がない)
(明日には隣の基地の情報収集も―――)
「ねぇ、ミトン?」
突然名前を呼ばれびっくりして、声を出しそうになったが、慌てて口を押さえる。
「どしたの、リツ」
「あははっ、驚き過ぎ。話が終わったから雑談しにきただけだよ」
「交渉は?どうだったん」
「考えとくってさ。つまり考えないってこと」
「ふーん……そっか」
「それよりさミトン、ちょっと最近寝てないんじゃないの?」
「えっ、そうかな?なんで?」
確かに昨日は寝なかった。しかし一昨日は4時間程寝たので、言われる程寝ていない訳ではない……はずだ。
「何回名前呼んでも気付かないし、なんかボーッとしてるし。ねぇ、毎日8時間は寝ないと駄目なんだよ?知ってる?」
「うん。心配してくれてありがと。善処するわ」
「善処って、ちょっと…つまり考えないってことじゃん」
先程も聞いたなその台詞…と思いつつ、リツに尋ねる。
「ねぇ、リーダーは?どこいったん」
「リーダーなら、本部から呼び出しくらったって言って朝出かけてったけど。あれ、聞いてなかったの?おかしいな、ミトンにはもう言ったから伝えなくていいって言ってたんだけどな」
「聞いた……ような、聞いてないような?」
「もう、しっかりしてよね」
「あはは、ごめんごめん」
リーダーが帰ってくるまでは待機かなと思った時、肩の無線機が鳴る。
《リツ、ミトン、ルヴァ、今話せるかな?》
《こちらルヴァ。なんのご用でしょうか、リーダー?》
救急班に物資補給で出掛けているルヴァの無線に合わせて、応答する。
《ミトンです、どうされましたか?》
《リツです、リーダー。今なら3人とも動けます》
《オーケー、ありがとう。突然だけど、第1トンネルで問題が発生。急な汚染度レベルの上昇だそうだ。リツ、動けるか?》
《はい》
リツは応答すると、急いで荷物をまとめ始める。荷物がいつもより少ない事を踏まえると、私と同じ結論に至ったのだろう。
《お言葉ですが、リツだけでは危険かと。私も向かいましょうか》
汚染度レベルの急な上昇に繋がる原因は、大きく2つ。
迷惑な誰かが不法投棄でもしたか、""が発生したかだ。
""が発生したなら、戦闘になる。
1人では、万が一のことが発生した場合、報告する人間がいなくなるほか、想定外の強さの""だった場合、対処しきれない。
《いや、今回は私が向かうからいい》
《!リーダーがですか?》
《ああ》
リーダーは基本的に指示役であり、後方支援を担当する事が多い。よって、あまり前線で戦う事は少ない。
我々4人の中で一番強いのはリーダーだが、リーダーが動くほどの問題と聞かされると、心配になってくる。
私の心配を感じ取ったのか、いつの間にか仕事服に着替え終わったリツはこちらに目配せして、
「心配しすぎだってば。大丈夫だって」
「でも」
「リーダーもたまたま暇だっただけだよ。ちゃんと気を付けるし、無理だったら逃げるから。ね」
リツはそう言うと、第1トンネルに向かって走っていく。
リツの首元のペンダントがきらっと光ってみえた。
第1トンネルは、地下にある超広大なトンネルだ。私の足元の真下にも通っている。
点検の為の扉は、500mおきに計5つ設置されているため、そこから入るのが通例だが、非常時には上から強引に穴をあけて入ることもある。
リツの足音が聞こえなくなってから、数時間ほどたった頃。
「よっ、おつかれ」
「あ、ルヴァ!お帰り。早かったね」
ルヴァは、黒髪の好青年。救急班からちょうど帰ってきたところらしく、大量の荷物を抱えていた。
私の足だと救急班まで片道5日はかかる上(ルヴァなら3日ほどで行ける)、ルヴァほどの大荷物は持ちきれないので、大変ありがたい存在である。
ちなみに、私達の班にルヴァが加わったのは4年程前。それまでは私とリツの二人で向かっていたのだが、時間はかかるわ荷物は持ちきれないわで大変だった。
「ねぇミトン、救急班で聞いたんだけど、第七基地が潰れたんだって?」
「あぁ、らしいね。私も噂程度でしか聞いてないけど」
「ミカとレイハの行方が5日前から分からなくなっているらしくてね」
「………そう」
ミカとレイハは、第七基地の常駐だった。私は一度顔を見たことがある程度だが、確かリツは仲が良かったはずだ。
(リツが聞いたら悲しむでしょうね……)
「それでさ、こんなのを貰ってきたんだけど」
ルヴァが差し出したのは、第七基地の行方不明者リストと、捜索届の一覧だった。
渡された文書に目を通す。
(思っていたよりも人数が少ない。被害が少ないのか、それとも―――)
その時だった。
ゴゴゴゴゴ――と大きな音をたてて、地面が揺れる。
(!!)
「その場に伏せて下さい!!!」
ルヴァが大声で叫ぶ。
(地震?地割れ?いや、それよりも何かが空から降ってきたような感じだった。他の基地の様子も確認しないと――――)
ルヴァが無線をとる。
《こちらルヴァ。第八基地で問題が発生。リツ、リーダー、応答願えますか?》
《……》
《………》
《...................》
《………………………》
応答がない。 血の気がさっと引く。
「リツ!!!!!」
衝動のままに、気が付けば走り出していた。
「ミトン待って!!一人では危険です。きちんとした装備をそろえないと。地盤が崩れている危険性もあります。僕もすぐ行きますから――」
「ごちゃごちゃ煩い!!!!!!」
ルヴァの声を無視して、無我夢中で走った。
第一トンネルまでは、大分距離がある。
(お願いだから、無事でいて)
ミトンの足音が、不思議なまでに静かな空間によくひびいた。
読んでくださりありがとうございます!!!!!!!!!!




