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第七十話『二つの問題 後編』

「安心しろい、もう一つはごくごく単純(シンプル)

国境を繋ぐ橋の上に、魔物の軍勢が現れた。

オマエタチはそいつらを、とりあえず倒してくれ!」

先ほどまでの神妙な表情から一転、ポタモはあっさりとそう告げた。

 

「魔物を倒す、確かにそれは単純明快だな」


「そだろそだろ〜?

この魔物達のせいで、行商人や国民達は国外に出られず、困ってたんだ。

しかも今ならなんとっ!白鷺の魔女・イデアルの完全サポート付き! これなら楽勝だろっ!」


突然、セールスマンのような口調で語り始めたポタモ。

「明らかにおすすめしてくる」ところが少し気になるが、俺はポタモに続けて問いを投げかけた。


「でも――魔物討伐なんてイデアル一人で十分だろ。

わざわざ俺たちが手助けする必要なんてあるのか?」


その問いかけに、ポタモは少し苦い表情を浮かべた。


「そこは、、、こ、細かいことは気にするな、勇者なんだろ!?

イデアルにも、色々と〜〜事情があるんだよっ!

とにかく安心しろ、なぁに、勿論報酬はある。

それもとびっきりの報酬(ヤツ)が……なっ」

ポタモはニヤリと笑うと、ペタペタと俺の目の前まで歩み寄ってきた。

そして突然大きく跳躍し俺の肩に飛び乗ると、小さな声で耳打ちを始めた。


「なぁ勇者よ、オマエは今、断捨離スキルが使えないんだろ?」


「お、お前……なんでそれを……!」


「アタイの耳は大陸中に轟いてるんだぜ。

ともかく、今回の標的を倒せば、特大の魔力核(コア)が手に入る!そうすりゃ晴れて、断捨離勇者復活だっ!

な、魅力的だろ〜?」


くぅ……このタヌキ。

じゃなかったレッサーパンダ、痛いところを突いてきやがる。

魔力核(コア)――。

それは断捨離スキルのレベルを上限解放する為に必要な素材だ。

今の俺は鼻かんだティッシュの一つすら、断捨離できないただのちょっと足が速くて力持ちなだけの男だ。

あ、あと竜にも乗れるな。

まぁそれは一旦置いておいて。

俺自身、そこまでスキルに依存しているつもりはない。

だが正直、あのスキルがまた使えたらと思うことは、日に何度もある。

このタイミングで魔力核(コア)を入手できるという事、それは俺自身にとっても、これ以上ない絶好の条件だった。


そしてポタモは、あらかた囁き終えると、俺の肩からぴょんっと飛び降り地面へと着地した。

そのまま改めて三人の前に立ち直り、向き直ってこう告げた。

 

「――話をまとめるぞ。今この国で起こっている問題は二つ!

一つ!学院に忍び寄る“隻腕の復讐者”を見つけ出すこと!

二つ!他国との国境を繋ぐ橋を開放するため、魔物たちを討伐することだ!

協力してくれるなら、特別にゾディアーク星級魔法学院への入学許可と、討伐した魔物の魔力核コアを授ける!

どうだ? 決めるのはオマエタチの好きにしろっ」


その言葉を最後に、ポタモは尻尾をフリフリ揺らしながら、俺たち三人をじっと見つめている。

どうやら話はおしまい、決断の時が来たようだ。

 

「どうするミカ?決断はお前に任せるぞ」


「パコも同じだ。危険が付き纏う事に変わりはないが、それとは別に得られる物もあるはずだっ。今回はミカが決めてくれ」

二人はミカの方を振り向き、彼女に選択を委ねるよう告げた。

ミカはその視線を受け止め、少し息を呑む。

 

「私が――本当に決めて良いの……?」


正直、最初は半ば軽い気持ちでここまで来てしまった。

魔法をもっと上手く扱えるようになりたい――ステルやパコにばかり助けられている自分が、もっと役に立ちたいと。


だが、物事はそんなに簡単ではなかった。

尊敬する魔術師の一人、ウォレスが暗殺された事件。

国境付近には、魔物の軍勢が立ちはだかる。

今やこれは、中途半端な覚悟では立ち向かえない問題だ。

仲間や自分自身に危険が及ぶ可能性だって、当然ある。

そんな自分の夢と現実の間で悩み、答えを出せずにいたとき――

ふと、幼いころに母が言っていた言葉が、頭の中に蘇った。

 

「悩むくらいなら、突き進め。

そしたらいつか、悩んだ事すら忘れてる。

アタシは今の現在(いま)までそうやって、生きてきたのさ――」


そして一瞬の間の後、ミカは顔を上げ、ポタモと視線を交わした。

 

「……決めたわ、やるわよポタモ!

私達勇者一行は、この国の問題を二つとも解決してみせる!」

ミカは自信に満ちた瞳を輝かせ、力強くそう言い放った。


「いい表情(かお)するじゃねぇかっ。

それじゃあ契約成立だっ!期待してるぜオマエタチ!」

ポタモはそういうと、再び腹太鼓を勢いよく二度鳴らした。

すると、たちまち辺りには白煙が立ち込める。


「って、ちょっと待って!?なんか色々アドバイスとかは?

私たち、まだ沢山聞きたい事があるんだけど!」


「ひとまず城門を抜けて進んでくれ!アタイは先に学院で待ってるからよ〜!」

ポタモはその言葉を最後に言い残し、煙が晴れた頃には、ポタモを含めた白装束たちの姿は、跡形もなく消えていた。


「いくらなんでも適当すぎ〜〜〜〜い!!」

ミカの叫び声が、頑強な城門に反響し響き渡る。


こうして波乱の冒険が、幕を開ける――。

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