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第三話 『新たな仲間!?』

『よし、断捨離もしてスッキリしたし、ゴブリンの巣窟とやらにいくか!』

そうして、俺が再び歩き出そうとしたその時、物陰から何かが動いた音がした。


「誰だ…ッ!」


「……誰だじゃないわよこのっバカァ!!!」

ボカンッ!


「ボッハァ!」

突如として、俺は鈍器のような物に頭を強く打ち付けられ、勢いよく吹っ飛ぶ。


「くっ、不意打ちとは中々やるな……」


頭を抑えながらゆっくりと頭上を見上げると、そこには見たことのある様な、ないような…魔術師の格好をした赤髪の女が立っていた。


「お前は確か…王国の宮廷にいた魔術師役の女か?」


「役ってなによ役って!私は正真正銘、"王国直属の魔術師"!

"ミカ•イライザ•スカーレット"よ!覚えておきなさい」

彼女は怒りの表情で、俺へ向けて自らを名乗った。


「長い名だな。悪いが覚えられそうにない」

俺は正直にそう答えた。


「ミカで良いわよミカでッ!それより"勇者ステル"!ダラス国王様から直々に頂いた、勇者の鎧と剣を捨てるなんてどういう神経してんの!?これが知られたら、勇者だとしても即、極刑よ!分かる?」


「そんなに大事な物を俺に押し付けないでくれ。そういうの、お節介(せっかい)っていうんだぞ」


「ムキ〜〜ーッ!!!あー何でこんな事になるのよもうっ!せっかく国王様に認められて、魔術師として初めての大仕事が"勇者召喚"だったのに……これじゃあ私も、揃って打首獄門(うちくびごくもん)よっ!」

そういうミカの目には、悔し涙ともとれるような雫が滲んでいた。

どうやら俺は、予想以上にとんでもないことをしてしまったらしい。


「悪かった。俺だけならまだしも、関係のないお前を巻き込むのはよくない。責任持って最後まで、俺がお前を守ってやる」

俺は混じり気のない瞳で彼女を見つめ、そう言い放った。


「ま、守ってやるって..急に会ったばかりでなによもうっ…!

 せ、せ、責任とってよねッ!!」

ミカは頬を赤く染めながら、力強くそう言った。


「約束だ。それじゃ俺はゴブリンの巣窟へ向かう。お前はここで待っていろ」

そういうと、勇者ステルはミカを置いてスタスタと歩いていってしまった。


「置いてくなっ!ちょっと待ちなさいよ〜!」


〜ゴブリンの巣食う洞窟〜


「ここがゴブリンの巣窟か。昔洞窟で暮らしていた生活を思い出すな。この暗くてジメジメしてる所が妙に落ち着く」


「アンタの感性どうなってんのよ…」

なんだかんだ、俺達は二人でこの洞窟へ足を踏み入れた。

正直いうと一人で行動したかったのが本音だが、いかんせんこの女は想像以上に頑固だった。

何度か撒こうと試みたが、失敗。

気がつくと洞窟(ココ)まで来ていた…というわけだ。


「それにしても暗いわね。私ゴブリンは本の中でしか見たことないけど…本物はどんなのかしら。ねぇ勇者……勇者――?」


ミカがそう問いかけても、誰からも反応はなかった。

真っ暗な洞窟に、ミカの声だけがこだまする。


「って――私を置いてどこ行ったのよ〜ッ!」


ギャアォウッ!!


するとミカの叫びに反応してか、暗闇から複数体のゴブリン達が姿を現す。

ゴブリン達はミカを見つけるや否や、一目散に飛びかかってきた。


「ウワ〜〜ッ!!!」

ミカは突然の出来事に一瞬パニックに陥る。

が、落ち着いて杖を握りなおし、ゴブリン達向けてこう言い放つ。


「喰らいなさいっ"フレイマ"!」

その詠唱の後、ミカの持つ杖から炎の球が現れた。


ゲヒャアッ!

その火球は的確にゴブリン達を捉えた。

直撃したゴブリンの体からは瞬く間に火が上がり、ジタバタと転げのたうち回っている。


「やった…!実戦でも、私出来たわ!」

ミカは嬉しそうにそう言うと、続けて杖を振りかざしゴブリン達へ目掛けてフレイマを放った。

その後はあっという間の所業だった。

 

「ふぅ〜こんな所かしらね」

ミカは満足げな表情で杖をしまおうとしたその時――!


ガバッ!


「あっ…!嘘……!」

一瞬の油断の隙に、一体のゴブリンが後ろからミカを羽交締(はがいじ)めにする。

そのゴブリンは、"ホブゴブリン"。

より知性が高く、体格も大きな戦闘能力が高い、ゴブリンの上位種である。


「はっ、離しな…さいよっ!」

ミカは何とか逃れようと体をよじり抵抗するが、普通の人間の力では、ホブゴブリンに対しては無力も同然。

動こうとすれば、ホブゴブリンの爪が肉に食い込み痛みを伴う。


「んっ…このままじゃまずい、何とか杖さえ使えれば……!」

ミカの予想通り、気がつくとミカの目の前には別の三体のゴブリンが現れた。


ギヒャヒャヒャッ……

ゴブリン達は扇状的な眼差しで、ミカの肉体を舐めるように覗きこんでいる。


「あっ……何をする気……!」

抵抗も虚しく、そのゴブリンの鋭い爪でミカの衣服は乱暴に引きちぎられた。


「イヤ〜〜〜ッ!!!」

ほとんど下着同然の姿となったミカの太ももを、ゴブリンの爪がゆっくりと這った。

露わになったその素肌は絹のように滑らかで、爪が掠めた箇所からは一筋の血が滲む。

それをゴブリンは舌で舐め取ると、口元を歪めていやらしく笑った。

 

「おっ……おっ…お願いっ……やめ、て……!」


怯えるミカの表情を見てより興奮したのか、ゴブリンはそのまま胸を乱暴に鷲掴み、最後の布を剥ぎ取ろうとしたその時だった。


ブゲァッ!


ゴブリンは何かに衝動され、勢いよく壁に叩きつけられる。

舌を情けなく出したまま、完全に気絶しているようだった。


「ま、さか……!」


「ミカ…悪かったな。少し遅くなった」


そこには、"半ケツ上裸の勇者(ヒーロー)"が立っていた――。

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