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第十七話 『襲撃』

スコット村を出てから、勇者一行は丸一日かけてダラス王国へと向かった。

道中何度か魔物達と遭遇したが、骸の王(スケルトンキング)、そしてケルヴォルフを討ち取った今のステル達にかかれば、どうっていう事はない。

しっかり倒した魔物からドロップする魔石は断捨離して、着実に経験値を積み上げていくのであった――。


「ハァ、ハァ。やっと…帰ってきたわ。ここが、王都ダラスよ」

ダラス王国――その歴史は、王国の設立からおよそ八百年を数える。

現在の国王は、"オーサン・フィゲロ・ダラス"。

彼が治めるこの国は、形式上は"王国"とされているが、規模としては都市国家に近い小国である。

とはいえ、城下町には約二万人の住民が暮らしており、諸外国からの行商人なども目まぐるしく行き交っている。

さらには、魔物に対抗するための騎士団や憲兵団、さらに王国直属の魔術師部隊まで存在し、治安と防衛体制は比較的整っていた。

しかしこれほどの小国が、これまで幾度となく大国の圧力に晒されながらも、存続してこられたのは、ひとえに代々の王たちが発揮してきた高い外交能力が要因だろう。

そしてもう一つは、領民たちからの厚い信頼と支持があったからに他ならない。


「あそこの大きな城門を通り抜けて、城下町に入るわ。二人共、いつどこから魔物が現れるか分からないから、注意して」


「ああ」「うむ」

ステルとパコは小さく頷き返した。


「今の所、荒らされた後はないわね」

三人が城門の前へ立つと、十メートル程はある鉄壁の城門はギィィィイと音を立てゆっくりと開いていった。


「この扉を開くバイトも大変だな。一体何人がかりでこじ開けてるんだ?」

「何変なこと言ってるのよ。魔法よ、魔法!」

ミカはそういうと、ひと足先に城内へと足を踏み入れた――その時だった。


ミカ、伏せろ!」

ビュン――!


ステルが叫んだとほぼ同時に、鋭い風を切る音が響く。


「キャアッ!」

ミカは咄嗟に身を屈め、その場に伏せた。


「んもう、驚かせないでよ、いきなり……って、何よこれ……」

ふと背後の岩壁に目をやると、そこには鈍い光を放つ弓矢が深々と突き刺さっていた。

ミカがもし、屈むのがほんの少しでも遅れていたら――その矢は、間違いなく彼女の脳天を貫いていたに違いない。

一瞬その光景を想像してしまい、ミカはぞっと身を震わせた。

 

「チッ。外したか……」

フードを被った男が、不機嫌そうにボソッと呟く。


「と、突然何するつもりよアンタッ!」

ミカは決死の形相で相手を睨みつけた。

だが、フードの男は臆することなく、ミカヘ向けて再び弓を構えこう叫ぶ。


「黙れ反逆者め!今すぐこの国から出ていけ!」

ビュン――ガシッ!

再び放たれた弓矢は、ミカへ届く寸前でステルの手によって掴み取られた。

バキッ!

鋭い音を立てて、ステルはその矢を片手であっさりとへし折る。


「大丈夫か、パコと少し離れてろ」

 

「あ、ありがと…」

ミカを庇うように背後へ下がらせると、ステルはフードの男に向けてこう叫んだ。


「おい、一体何のつもりだ。いきなり危ないだろ!一度ならまだしも二度までも」

「いやいや一度でもアウトでしょ、これ!」

とどまる事を知らないステルの天然っぷりに、ミカは思わず鋭いツッコミをいれる。

フードの男はしばらく黙っていたかと思いきや、再び無言で弓の矢先をステルへと構えた。


「お前達の目的は分かっている、出て行かぬのなら……こうするまでだ!」

ドヒュン――!

鋭い音と共に、ステルへ弓矢が放たれる。


「聞く耳なし…か」

ステルは全く動じる事なく、片手で弓矢を掴み取ると同時にへし折った。


「しばらく、寝ててもらうぞ」

そのまま一気にフードの男との距離を詰め、みぞおちめがけて鋭いストレートを叩き込んだ。


「グハッ!」

呻き声をあげたフードの男は、腹を押さえたままずるずると崩れ落ち、地面に倒れ込む。


「ふぅ…なんだったんだコイツは。ミカ、パコ、もうこっち来ていいぞー」

ステルは少し後方の二人へ向けて呼びかけた。


「助かったぞ勇者よ。それにしてもなんだったんだコイツは。この国はこんなに野蛮な輩が多いのかっ?パコは来た所を間違えたかの…」


「違う違う!本来はもっといい国だから!犯罪だって滅多に起きないし、民を第一にするダラス王のおかげで、貧富の差だってそこまでない良い国の筈なんだけど……」

ミカはそう言いながら頭を抱えた。

せっかく、生まれ故郷をパコにも知ってもらう良い機会だったのに、最悪の滑り出しを切ってしまったことに酷く落ちこむ。


「むぅ?なんだあれは――?

 ミカよ。今日は祭りでも催してるのか?」


「え?特にそんな予定はなかったはずだけど…」

パコに言われた方角を振り返ると、地平線の向こうにわらわらと黒い影がゆらゆらと(うごめ)いていた。


「ちょ、なにあれ…」

ミカはよくよく目を凝らすと、それは怒りの形相に満ちた、国民たちの群勢だった。

手には、畑を耕す為に使用される(くわ)や斧などを持った老若男女が、大声を上げながらこちらに向かってくる。

なんだかものすごい熱気と殺気が入り混じっていて、遠目にもただ事じゃないのが伝わってくる。


「……ちょっと待って。あれ、全部こっちに来てない!?」


「まずい状況みたいだな。なぁミカ、お前国出る前に恨まれる事なんかしただろ」

「し、しとらんわ!私は王国直属の魔術師なのよ!?」


「は……ッ!」

と、ステルは何かを思い出したように声を漏らす。

「あ、あれだろ!スコット村の時と同じく、そのお前の底なし胃袋で、国中の米を食っちまったんだな!?だから農家が怒ってるんだよ……!!」


「ドアホゥ!私を大喰らいの化物みたいに言わないでよ!あれはご厚意で遠慮なくって言われたからよ!」


「とにかく一度身を隠すのだっ!ミカ、案内してくれっ」

迫りくる群衆を横目に、パコは焦り交じりに叫んだ。

 

「え、ええ!ここから東の少し行った先に、"ドラゴンの厩舎"があるわ!あそこは一部の関係者しか知らないから、一旦そこで身を隠すわよ!」


「ド、ドラゴン!?大丈夫なのかそれは!?」

パコは驚きのあまり声が少し裏返ってしまった。


「さ、走って!」

掛け声と共に、ステルとパコはひと足先に駆け出した。

自分もすぐに走り出そうとしたその時、ふと倒れ込んでいるフードの男が視界に入る。

ミカは一瞬だけ足を止め、ゆっくりとその男に近付いていった。


「いきなり襲ってきて、せめて顔だけでも拝んでおかないと、気が済まないわ」

ミカはゆっくりと、そのフードをめくった。


「な、なんで……あなたが……!」

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