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第十話 『強敵、現る』

「あ゛あ゛〜〜!!俺の!弁当が!な、い!」


そう気が付いた時には、遅かった。

突如として黒い"ナニカ"現れ、目にも止まらぬ速さで俺の弁当を箱ごと奪い去っていったのだ。

しかも、盗られたのは"俺だけ"。


「今のは、何……?」

ミカとパコは一瞬の出来事に、目をまんまるく呆気に取られている。


「ゆ…ゆ……ゆるさんぞ………よ…よくも……よくも……」


プチン――

その時だった。

俺の内なる何かが、弾ける音がした。


「オレはおこったぞ――――‼︎‼︎フリーザ――――ッ‼︎‼︎」

ステルは激怒した。

頭髪は逆立ち、怒りのバトルオーラが溢れ出す。

それはまさに、某冒険バトル漫画の戦闘民族:サ◯ヤ人の如く。


「いや、フリーザって誰!?いくら弁当盗られたからって怒りすぎよアンタ!?」

平常心を失った男に、ミカの声は届かない。

 

「待て――――っ!!」

そう言って、ステルは山の上へと走り去っていった。


「アンタこそ待て――――っ!?勝手にどこいく……って、もう行っちゃった…」

ミカはステルを引き止めようと立ち上がり、手を伸ばしたが、時すでに遅し。

その指先が届く前にステルの姿は遥か先へ遠ざかっていた。

脱力したように、ミカはその場にぺたんと座り込む。


「パコ、どうしよう!?アイツ、勝手に1人で山登ってっちゃったわ!これから先に何が待ち受けてるかもわからないのに…」

ミカが肩を震わせながら訴えると、パコはふむ、とひと息ついた。


「う〜む。だが、幸いまだ昼間だ。盗んだ相手もそれほど遠くへは行っとらんようだし、ここで待ってれば戻ってくるじゃろっ」

と、パコはそれほど気にしてない風に、カモミールティーを杯に注いだ。

たちまちふわりと、穏やかな甘い香りが周囲へ漂う。


「……そ、そうよね?それじゃあ私達はここで待ってましょ。うわ〜美味しそう!パコ、いただきま〜す」

パコの言葉に安心したのか、ミカは置いていたフォークとナイフに手を伸ばすと、我慢の限界!っといった様子で食べ始める。

空腹だった胃袋に、森猪の絶品ローストが染み渡る。


「う〜〜ん美味しいっ!鹿といい猪といい、こんなに臭みもなくて食べやすかったなんて知らなかったわ、パコの料理が上手なのもあるけど!」


「おお、それはよかったっ。それにしても、ミカは本当に美味しそうに食べるな」


「だって、本当に美味しいんだも〜ん」

二人はステルの事などすっかり忘れ、束の間の休息を満喫していた。


その頃ステルは――。

「おい、この泥棒犬! 今なら許してやる!! 大人しくその弁当を置いていけッ!!」

ステルは必死にその後ろ姿を追いかけていた。

奪われた一瞬――その姿はただの黒い影としか認識できなかった、だが今は違う。

荒れ地を駆けるその姿は、四足で地を蹴る野犬のような獣――いや、魔獣だ。

 

(クソ…流石に速いな。撒かれることはないが、このままでは追いつくことも難しそうだ)

と、ステルが脳内であれこれ作戦を考えていると。


(ステル様、あれは"ガロウルフ"という魔獣の一種です)

モデスが俺の脳内でこう語りかける。


ガロウルフ――

分類:魔獣種/狼型

危険度:D-

主に山林や荒野に生息する中型の魔獣で、狼に似ている。

全身を覆う黒灰色の硬い体毛と、鋭く湾曲した牙が特徴。

その名の由来は、「(ガロ)」と「(ウルフ)」を合わせたものとされる。

優れた嗅覚と聴覚を武器に狩りは集団で行い、夜に活動することが多い。


「なるほどな、危険度で表してくれるのはありがたい」

(はい、補足としてこの間の"ホブゴブリン"がC-、"ゴブリン ロード"がC+ですので、戦闘力的には問題ないかと思いますが…)


ガロウルフを見逃さない様に注意を配りながら、モデスと脳内会議をしていると、突然。

何かを察した様に、ガロウルフは突然ピタリと足を止めた。


「フッフッフ…オステリオ山(この場所)はお前の縄張りじゃないのか?テンパって道を間違えたか、まぁいい。もう逃げられないぞ」


ガロウルフの目の前は、断崖の絶壁が立ちはだかっていた。

気がつくと、ステルがいる現在地点の標高は1,000mを越え、落ちれば一貫の終わりである。


「観念しろー!!」

そう言ってステルは逃げ場のないガロウルフに飛びかかろうとした、その時だった。


ウォオオォオォオン――!

ガロウルフが遠吠えを上げると、瞬く間にステルの背後から複数の影が現れた。


「仲間を呼んだな。だが、甘い。俺は幼少期から狼とはよく喧嘩していたが、それは十歳までだ。断捨離スキルで強くなった今なら、何匹来ようが関係ない!」

俺は臆する事なく一匹のガロウルフへと飛びかかる。

すると、ガロウルフは口でくわえた弁当を下に置くと、俺の顔面目掛けて勢いよく飛びかかってきた。


グラァウッ!!

「遅い」

俺はその鋭い牙撃をするりとかわすと、そのまま狼の首を腕で掴み、噛まれる前に一瞬で締め落とす。


ギュウウッ

狼は声一つあげる隙もなく、一瞬の間に意識を失った。


「よし、何匹でもかかってこい!まとめて相手してや…」


(ステル様…!この状況…かなりまずいですっ!)


「何を言うんだモデス、今の見ただろう?ガロウルフ位何匹いたって」


(ガロウルフじゃないですっ!後ろにいる一際大きな狼をよくみてください!)

モデスがこんなに取り乱すなんて珍しいな。

俺は数十匹いるガロウルフの群れの後ろをよくよく覗いた。


「な、なんだ……アイツ、頭が3つあるぞ……!?」


ケルヴォルフ――別名:地獄(じごく)番狼(ばんろう)

分類:魔獣種/狼型

危険度:B+

黒鉄のような体毛と、灼けた岩盤をいとも簡単に砕くほどの顎を持つ大型の狼型魔獣。

かつて、辺境の村をひと晩で壊滅させたという記録が残る。

王国の騎士団が複数部隊を動員し、犠牲を払いながらようやく討伐に成功したという記録からも、その危険性は明白だ。

単なる「強い狼」などという常識では通用しない。


(逃げましょう!いくらステル様でも、この魔獣はまだ早いですッ!)


グルルルルルルルッ……!!


「マジかよ……」


こうして、俺が異世界転生して初の、大きな窮地(ピンチ)が訪れる――。

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