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処刑された私、知らない魔法が発動した。誰の?私の?  作者: OwlKeyNote
第一章:私のせい? ちょっと待って、この騒動、誰の?私の?
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3.貴族の朝食と暗黙の序列

貴族と平民、その間にある見えない境界線。学園の食堂では、今日もそれが静かに示される。

「お嬢様、行ってらっしゃいませ」

 カトリーヌの見送りを受け、アリシアとエレーナは食堂へと続く長い廊下を歩き始めた。


 朝の廊下は涼やかな静けさに包まれ、壁に並ぶ窓から柔らかな光が差し込んでいる。遠くからは、生徒たちの談笑や食器の触れ合う音が微かに聞こえてきた。

 エレーナは歩調を合わせながら、「さて、どこに座ろうか?」と軽く冗談めかして笑うと、そのまま食堂の扉を開けた。

 アリシアは、ちらりと食堂内を見渡した。朝食の時間はすでに始まっており、貴族生徒たちは優雅に席に着き、それぞれのテーブルで談笑している。


 この学園では、貴族の身分によって自然と座る席が決まっていた。中央の大きなテーブルには王族や公爵家の子息、その周囲に侯爵、伯爵と続き、壁際には平民や下級貴族の生徒たちが控えめに食事をしている。


 エレーナはそんな事情を理解しつつも、普段はあまり気にしていないようだった。しかし、アリシアと共に行動する以上、注目を浴びるのは避けられない。


「……今日はどこに座るの?」


 エレーナが小声で尋ねる。


「いつも通りの席よ」


 アリシアがそう言って足を向けたのは、侯爵家に相応しいテーブルの一角だった。すると、その場にいた貴族生徒たちが一瞬だけ視線を向けてくる。


 しかし、彼らは直接何かを言うことはない。ただ、自然と会話のトーンが落ち、空気がわずかに硬くなる。視線を交わしながら、興味と警戒が入り混じった表情を浮かべる者もいる。カップを持つ手が一瞬止まり、小声で何か囁く姿もあった。


「……相変わらずだね」


 エレーナがぼそりと呟く。


「気にする必要はないわ」


 アリシアは平然とした表情で席についた。エレーナも少し肩をすくめながら隣に座ろうとしたが、一瞬ためらい、わずかに距離を置いた。


 エレーナのように、アリシアと親しい平民の生徒がいたとしても、さすがに同じ席に座ろうとする者はいない。学園の暗黙のルールが、それを許さないのだ。


 すると、すぐに給仕が朝食を運んできた。焼きたてのパン、スープ、新鮮な果物——そして、アリシアが期待していたハニーフルーツが添えられていた。


「わぁ、これが特別に用意されたハニーフルーツ!」


 エレーナが目を輝かせる。


「……厨房の皆が頑張ってくれたのだから、ちゃんと味わわないとね」


 アリシアは控えめに言いながらも、ナイフを手に取り、上品に果実を切り分ける。


 そんな二人のやり取りを、周囲の貴族生徒たちは静かに観察していた——。まるで、そこに何か見逃せないものがあるかのように。


貴族と平民の間にある見えない壁を、食堂の席順を通して描いてみました。最初はエレーナが気にせずアリシアの隣に座るシーンだったのですが、学園の空気感を大切にするため、ためらいを入れる形にしました。次回は、さらに学園生活の中での小さな波紋が広がっていきます!

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