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処刑された私、知らない魔法が発動した。誰の?私の?  作者: OwlKeyNote
第一章:私のせい? ちょっと待って、この騒動、誰の?私の?
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10. 私いましたっけ?

――変わるのは、いつも唐突だ。

誰かの言葉が、心の奥に届いて。

誰かの想いが、触れられたくない傷に、そっと触れて。


彼の目が変わったのは、

あの子の声が、真っすぐに届いたから。


エレーナの手で編まれた、あの一枚の護符。

あれは、ただの魔術じゃなかった。

誰かを想い、誰かに託す――そんな願いのかたち。

「……ありがとう。大切にする」


 ラウレンツは、受け取った護符を丁寧にたたみ、制服の内ポケットへとしまった。


 エレーナはその仕草を見届けると、ふいにため息を吐いた。


「はぁ……でも、私としては本当に情緒めちゃくちゃなんですよね」


「……何がです?」


 ラウレンツが眉を寄せて問い返すと、彼女は手を広げて叫んだ。


「だって、お二人が順当に勝ち上がったら、最後はラウレンツ様と私の推し――ヘルムートが戦うんですよ!?

 もう、どっちに感情を乗せたらいいのか分からないんです! 応援が大渋滞してます!」


 アリシアが少しだけ瞬きをしながら、淡々と応じる。


「……試合の応援に、そこまで混乱が要りますか?」


「え、アリシアさん、無風!? まさかの無感情系!?」


 ぐいっと詰め寄るように言うエレーナに、アリシアは少しだけ視線を逸らした。


「私だって、誓いを受けたときには――少し、胸がぎゅっとして...たかな」


「それそれそれ! それを“ときめき”って呼ぶんです!」


 エレーナが瞳を輝かせながら叫ぶ。

 その隣で、ラウレンツが小さくため息を吐き、眉間に指を当てた。


「……君までそうなるとは思わなかった」


「……正直に言うと、少し驚いてしまって。あの時の記憶、やや曖昧なんです……」


アリシアは首を傾け、不思議そうな顔で続けた。


「気づいたら終わってた気がします。……あの騒ぎに、私…いましたっけ?」


「おっと、それ一番アウトなやつですよ、アリシアさん!」


 ほぼ食い気味。

 アリシアのセリフが言い切られる前に、エレーナの鋭い言葉が飛んできた。

 呆れというより、ほんのり嬉しそうな声音が混じっている。

 アリシアが目を伏せながら、笑いを堪えるように小さく肩を揺らしていた。


 それに気づいたエレーナが、思わず吹き出しそうになる。


 ふと、三人の視線が交わる。


 一瞬の沈黙のあと、誰ともなく、くすっと笑いが漏れた。


 それだけで終わるはずだったのに――

 なぜか、笑いが止まらなくなった。


 エレーナが肩を震わせ、アリシアが目元を押さえ、ラウレンツまでも口元を緩める。


 重く張り詰めていた空気が、やっと緩んだのだと気づいたときには、

 三人とも、言葉にならないまま、小さな笑いを重ねていた。

今回は、ちょっと肩の力が抜けるようなお話でした。

誰かの言葉で笑って、誰かの一言でちょっと動揺して。

でも、たぶんそれでいいんです。ぎこちなくても、少しずつ。

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