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閑話 エウレカ史

 エウレカ・プライムは、アールカノ帝国暦3084年に開発が始まる。

 このエウレカ入植計画の最高指導者には、わずか28歳のレオボルドーヌ・ヤンバルクが任命された。

 彼は一応、帝室の遠縁にあたる家系で、当時の皇帝の四男とは大学生時代の悪友だった。

 その悪友の推薦と実家のごり押しで、この開拓計画の最高指揮官となり、第一陣の500万人を率いてエウレカ・プライムでの入植指揮を執る。


 経緯がどうあれ、彼は精力的に働き、よく現場にも赴き、その熱意が空回りすることもしばしばだったが、概ね順調に第一次入植作業を進めた。食糧や生活物資の自給体制を整え、第二次陣の受け入れを行っていったのである。

 さらに彼は、順次派遣される入植民を受け入れつつ、最大の目標だった極地開拓計画を推し進め、寒冷地にいくつもの開拓鉱山を設けて試掘や本格的な採掘を次々と開始していった。


 しかし、エウレカの入植者たちにとって不幸なことが一つ判明する。当初の調査結果より、貴重鉱石の埋蔵量が少なかったのだ。

 とはいえ、これらの鉱石は帝国にとって貴重な戦略物資だったうえ、帝国全支配地域でも産出量が限られ需要を満たせていなかったことから、開発は継続される。さらに資金と人員が投入され、開発事業は拡大を続けた。


 500万人だった人口は、わずか20年で3200万人にまで膨張し、雪に閉ざされていたエウレカの極地には大規模な鉱山が建設された。当時の帝国にとって重要な希少資源の産出地として、辺境ながらも発展を見せ、帝国暦3130年からの10年間、エウレカは黄金期を迎える。

 経済は発展し雇用が促進され、それに合わせて各地から人々が集まり、エウレカの人口は最高潮の4178万人に達した。


 だが帝国暦3141年、レオボルドーヌ・ヤンバルクは採掘現場の視察中に事故死する。これにより統治行政上の混乱と内部の権力闘争が発生し、恒星政府は機能不全に陥った。

 エウレカの中央政府は長年、ヤンバルクの開発独裁のもとに置かれていた。開拓初期から長年経験を積み、比較的有能な為政者だったため、独裁体制への不満はほとんどなかった。

 しかし彼の死により、その体制は崩壊した。今までは独裁体制ゆえのトップダウン式で急進的かつドラスティックな改革が行われていたが、突如、合議制のようになり、かつてのような迅速な対応ができなくなった。

 政府の独裁官には彼の娘であったユリア・ヤンバルクが後を継いだが彼女には殆ど実権が無く、傀儡として扱われた。実行力の無い指導者、権力闘争と各部署合議制による停滞によりエウレカ内部では不満が高まっていった。


 帝国暦3144年、帝国内でこれまでにないほどの埋蔵量を誇る貴重鉱石を含む恒星系が新たに発見される。帝国政府や民間企業は維持コストのかかる辺境の開発事業から手を引き始めた。

 帝国暦3148年には権力闘争こそ収束したが、その間にエウレカの経済力は急速に落ち込み、人材の流出も止まらず、3150年には最盛期の半分以下の人口となってしまう。経済力も危機的水準にまで低下し、多くの街が放棄された。

 帝国暦3153年、残ったのは貧困層やここで生まれ育った人々ばかり。エウレカ政府はエウレカ出身のハルゼークト・モンラートを筆頭とする「エウレカ再建の十人委員会」が設立され、彼らの下で経済再建に取り組むこととなる。


 彼らの政策は、惑星内需を満たす鉱業生産のみに寒冷地採掘場を絞り、赤道付近の農場などを拡大してエウレカ内部での自給経済を主軸とするというものだった。

 当時のエウレカは帝国の辺境で、何かを輸送するのにも多大なコストがかかり、一部の食品は輸入に頼っていたため、それが食糧・生活必需品の高騰、ひいては貧困化を招いていたのである。


 3160年にはそれら自給化の政策が功を奏し、内需を満たすレベルでの自給が可能となった。3165年には工業生産も賄えるまで成長し、それまで盛り上がっていた労働者運動は収束に向かう。都市部の安定化も進み、内需拡大政策と併せて出産を推奨し、再び緩やかな経済成長を目指した。

 この頃の十人委員会は一心不乱に働いており、特にハルゼークトは1日12時間から16時間も働いて各部門の調整や現地視察、改善案の検討などを行っていた。

 妻の証言によると「一年に60日以上休んだことは一度もなかった。休みの日だってずっとエウレカのことを考えていて、多分一日も休んでないわね」という。

 そんな彼への求心力は凄まじく、支持者たちは委員会というより、ほとんどハルゼークト個人を支持していたといっても過言ではない。


 ところが、彼ら十人委員会が各種政策で立て直しを図り始めた帝国暦3169年、工業委員のバルドルスが交通事故で死亡し、翌月に農業委員だったエリカが脳梗塞で再起不能となる。

 エリカの助手として働いていたサヤカが農業委員を継いだが、引き継ぎの時間もなく、工業・農業の二大部門が一時混乱した。委員会のメンバーは支援を続け、何とか持ち直そうとしたが、帝国暦3172年、ハルゼークトが航空事故に遭い、二日後に死亡。これが致命傷となる。


 ハルゼークトという舵取り役を失った十人委員会は急速に空中分解を始める。実際、十人委員会を中心としたエウレカ政府は彼の熱意と強い指導力に支えられ、彼を中心としたトップダウン式で動いていたからだ。

 帝国暦3174年には十人委員会が実質的に崩壊し、そこから28年にわたってエウレカは無政府状態となった。

 もっとも「無政府状態」といっても、旧十人委員会の一部は活動を続ける。エリカの後を継いだサヤカや林業委員のガニメド、畜産委員のナグルファ、商業委員のマルンなどが代表例だ。

 しかし彼らは連携を欠き、派閥に分かれて権力闘争を繰り広げる様相となり、嫌気が差した者たちは政府を去った。


 ただしサヤカは中央での権力闘争から距離を置き、各地の農家を巡りながら従来通りの農業指導や治水管理を続けた。

 彼女は市街地から離れた農村部で強い支持を得て、政府から事実上離脱した自治体主体の地域コミュニティを発展させ、そのバックアップを得つつ農業指導を継続した。

 さらにハルゼークトの熱心な信奉者だったサヤカは、各地で「自給の重要性」を説き、できる限り彼の政策を踏襲する政策を各地で展開した。

 それは地方における農業拡大と出産の推奨という形で具現化し、さらなる人口増加と経済的成長をもたらした。

 しかし、サヤカ自身はあくまで農業の専門家であり、政治経済など治世に関しては門外漢だったため、人口増加に対して必要な公共機関などを適切に理解しておらず、教育不足、特に地方での小学校教育レベルの欠如を招くことになった。

 さらに農地拡大も工業製品不足で限界が生じたが、人口増加は止まらず、失業者の増加と治安の悪化、さらには食糧不足まで発生する。


 帝国暦3202年、中央政府は新しい独裁官としてヤークトンを任命し、ようやく落ち着きを取り戻すが、そのころにはエウレカの状況はもはやどこから手をつければよいのか分からないほど悲惨だった。

 各地の街は自治体ごとに半独立状態となり、資源や食糧をめぐって自警団という名の武装組織が乱立し、半ば内戦状態にある地域もある。恒星首都エウレカ・シティー郊外ではスラムが拡大し、治安の悪化が止まらない。

 何より痛手なのは、無政府状態の間に徴税能力が極端に低下しており、政府の金庫はカラを通り越して財政赤字ということだ。

 ヤークトンは先ず帝国政府に支援を求めたが帝国政府もドラゴミアン王国との対立激化で手が回らず放置され、非常に限定的な資金的支援しか行われなかった。

 それでも郷土愛にあふれるヤークトンは熱心に活動し、何とか惑星に秩序を取り戻そうと苦慮しているが、実際には恒星首都近郊を統括する地方政府に成り下がっているのが現状で、足踏み状態が続いていた。

 ヤークトンはとにかく職を作ろうと尽力し、わずかな予算を生活資材の生産拡大や、特に鉄工業の発展に振り向け始めたが、いまいちうまくいっていない。

 各地方の分裂が進み、所々で武力衝突が発生し、エウレカは群雄割拠の様相を呈している。

 SF要素is何処?状態なのでざっくりとした世界観紹介。

 私がこの物語を作るにあたってざっくりと考えた"物語が始まる前の流れ表"を整理したものになります。


 今は頑張って毎日更新しておりますが、時折り不定期になると思いますので、その際は気長にお待ちいただけると嬉しく思います。

 感想やご意見など、気軽にコメントしていただけると励みになります。

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