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第四話 ブートキャンプ

 吹雪が過ぎて数日。クズリ(※1)を狩ったりしていたのだが、時間ができたので妹をしごくべく、缶を持って何もない平野へ連れてきたわけだ。


「それで今日は何をするの?」

「気分が向いたから、野外活動とか射撃を教えようかなと」


 さて、もう少しで前に木こりをした場所だが、そこを通り過ぎてさらに先へ向かう。

 軽快に速度を出して走るのは楽しい。しかも狩りで走った道だから、基本的には安心なのもいい。

 今日の空は少し雲があって雲底が低い。典型的な冬の空模様といったところだ。


「とりあえずこの辺でいいかな」


 家からはけっこう離れたな。時間にして一時間半くらいは来ていると思う。


「やっと着いたの?」

「おう、移動だけでもキツいか?」

「大丈夫。それで何をするの?」

「訓練だな。準備はいいか?」


 見たところ、まだいけそうだし、本人も大丈夫と言っている。


「はい」


 さて、ここからが気合いの入れどころだ。


「これは訓練だからな。俺の言ったことは絶対だ。『いいぞ』と言うまで何もしちゃダメだ。わかったな?」


 実際、人を殺せる危険な武器を教えるわけだし、少し言いすぎかもしれないが、それくらいの緊張感は必要だと思う。


「わかった。それで、あの的を撃つの? あっちのおっきなライフルじゃないの?」


 ヘルミが指さしたのは、俺が狩猟に使っているボルトアクションライフルだ。


「まだあれは早い。まずはこいつで慣れるんだな」


 ライフルを使うには体格的にも足りないし。


「分かった」


 というわけで、講習の始まりだ。


「んじゃ、まずこいつの分類な。これは何て種類の銃だ?」

「拳銃?」

「そう、拳銃だ。携帯性に優れるが、火力や射程は劣る。こいつが活躍したのは、人類が母星内で争っていたころ、塹壕って呼ばれる溝の中での近接戦闘だな。その後は基本的に護身銃として扱われている」


 面白いよな。人類の歴史って、そういう流れは前世と同じなんだよな。短機関銃が開発された後、また護身銃に戻るのも全く同じなのが不思議だ。


「へぇ、どれくらいまで撃てるの?」

「有効射程はまあ、50mくらいかな。それより遠くても弾は飛ぶけど、当てるのは難しいと思う」


 多分100mくらいまでは飛ぶだろうが、狙って当てるとなると厳しいかな。


「ふーん? 銃弾って真っすぐ飛んでるんじゃないの?」

「いい質問だな。弾は基本的にジャイロ効果で真っすぐ飛ぶんだが、重力の影響で遠くまで飛ばそうとすると山なりになる」


 そう言いながら、俺はマーチン4のマガジンを取り出した。


「ヘルミ、持ってきた枝をちょっと遠くに刺して、その上に空き缶を乗せてきてくれる?」

「分かった」


 ヘルミがスノーモービルから空き缶と枝を回収し、おそらく20mくらい先に的を用意してくれた。


「置いてきたよ」

「よし。これからあれを狙うわけだが、俺が見本を見せるから、よく見ておけ」


 俺はマガジンをマーチン4に差し込み、スライドを引いてから安全装置を外し、空き缶を狙う。


 パン。

 カン、といい音がして無事命中。ここで外したらダサいからな、少し緊張した。


 今度は安全装置をセーフティー位置にして、マガジンリリースボタンを押しマガジンを抜いたあと、スライドを引いて薬室内の弾を排出。


「まあ、こんな感じだな」

「おにぃ、早いよ。ゆっくりやって」

「大丈夫、ちゃんと教えるから。これを持て。今、中に弾は入っていない」


 そう言って手渡すと、ヘルミはまじまじと銃を見て、構えたりしてみている。


「トリガーに指をかけるのは撃つときだけだが、今は弾が入ってないから一度かけてみろ。固くて引けないはずだ」

「うん、多分この突起をアからタにしたらいいんだよね?」


 よく見ていたようだ。やっぱりヘルミは観察力があるし、粘り強く考えるタイプだと思う。


「そうだ。そいつが安全装置なわけだ。これがマガジンで、中には8発の弾が入ってる。装填してみろ」


 マガジンを手渡すと、少し手間取ったがちゃんと挿入できた。


「さて、これから狙っていくわけだが、そいつの照準はアイアンサイト。ゼロインは25ヤード……約22mで調整されてる。俺が撃った感じ、クセもなくいい銃だ」

「つまり、この照準機で狙った場所に弾が飛んでいくのは22m先ってこと?」

「そういうことだ。じゃあ、それより近かったらどうなる?」

「えっと、近いと落ちないぶん、少し上に当たる……かな」

「そうだ。じゃあ遠かったら?」

「遠かったら落ちるから、狙ったところより下に当たる」


 他にも極付近なら惑星自転の影響とか、弾丸が横滑りするとかいろいろあるが、そのへんは家で教えるとしよう。


「そうだ。じゃあこれはなんだ?」


 弾を二発、ポケットから出して手のひらに乗せて見せる。


「ちっさいのが.22ロングライフル弾?」

「そうだ。こっちは?」


 一発取り出して見せる。俺がいつも使ってるやつだ。


「7.62×54mm弾?」

「そうだ。これなら間違えようがないが、世の中には9×19mmとか9×18mm、9×21mmとか色んな弾があるから、間違えないようにな。渡したのは.22LRのホローポイント弾(※2)だ」


「そう。安全装置は外れてるが、薬室に弾はまだ入ってない。だから手前側にスライドを引いて、弾を装填してくれ」


 ゆっくりとスライドを引くと、後ろにボルトが出っ張る形になった。このマーチンは拳銃にしては珍しく、ティルトバレル式じゃなく固定バレル式なんだよな。


「これで撃てる。じゃあ、あそこに見える的を安全装置を外して撃ってみろ」


 そう言うと、ヘルミは拳銃を両手で構え、目線の高さに持ってきて狙う。


 タン。

 初弾は缶の底の端に当たった。


「おお、当たったか」


 一発目から命中とはなかなかだ。反動で少し上に逸れたんだな。


「やった!」

「ああ。撃ったとき目をつぶらないようにな。それと反動をちゃんと受け止めるのが大事かな?」


 思ったよりセンスがあるし、もう少し撃たせてみるか。


――――――――


 多分30分くらい撃ち続けて、的は穴だらけになった。このへんで射撃訓練は終わりだろう。集中力も落ちるし、弾だってタダじゃない。

 缶はそのままにして、今度来たときも使おうと思う。

 空を見ると、まだ時間がある感じだし、ヘルミにスノーモービルの練習もさせて、そのへんを軽く回ってから帰ろう。


「ヘルミ、終わりだ。よく扱えてる」

「うん。でも手が疲れる……」


 いくら軽めの銃とはいえ、金属の塊だからな。いいタイミングで切り上げられたと思う。


「ボーイスカウトに入ったら、射撃訓練で上位成績者になれそうだな」


 ヘルミも褒められてニコニコご機嫌だ。

 よほどマーチンがお気に入りらしく、「家までホルスターに入れて帰りたい」と言い出したが、ベルトがないから装着できないと説明すると、「家に帰ったらベルトちょうだい」と言い始めた。

 そのへんは帰ったらおかんに相談かな。俺の古い予備ベルトがあるけど、ボロボロだしなあ。


「まあ、その辺は家に帰ってから考えるとして、次はスノーモービルの運転練習だな」


 こいつは二人乗りしながら教えられるから楽なもんだ。

 ヘルミを乗せてスノーモービルを走らせる練習は、射撃ほど楽しそうではなかったが、真面目に取り組む生徒だから教えがいがある。

 あまりスピードを出さなければ大きな事故も起こらないし、銃に比べればずいぶん教えるのも簡単に感じる。




(補足情報)

(※1) クズリ:森林やツンドラ地帯に生息するイタチ科の肉食獣。イタチ科では最大級の体格をもち、非常に獰猛。

(※2) ホローポイント弾:弾頭の先端部に穴が開いており、命中後に弾頭が変形・膨張して内部に大きなダメージを与える。

 昨日キーボードが死亡してしまって昔使っていますので態勢に影響は有りませんが、違和感がありますね。

 エネルギー切れで最後の方は少し手抜きになってしまったので、そのうち修正したく思います。

 更新は不定期になると思いますので、気長にお待ちいただけると嬉しく思います。

 感想やご意見など、気軽にコメントしていただけると励みになります。

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