第三十二話 試験
バイクが楽しすぎて投稿をサボり過ぎました。
ソフィアにはみんなを呼んでもらって、俺は早速試験を受けていた。
リクルートスーツもなしに、と少し思ったが、この惑星にはそんな文化はなかったのである。
「おっ、早速来てくれたね。久しぶり、覚えているかな?」
ルーロー市の警察本部に入ると――
「えぇ、お久しぶりです、ローザさん。この度は推薦いただきありがとうございます」
「そう畏まらなくていい。私はあんまり堅苦しいのは苦手なんだ。それじゃ堅苦しい奴が試験とやらをしてくるが、そんなに難しくないからサクッと済ませて来い」
背中をバシッと叩かれて送り出された……普通に痛てぇ。
ともあれ会場とやらで筆記試験を受けているのだが――最初の文章読解と、与えられた説明からの報告書作成なんかは、文章自体が報告書なのでそれをテンプレートにして書けばよかった。数学は高校レベルといった感じか。
別にレベルが低いわけではないんだな……普通に忘却の彼方から掘り出すのが大変だったが、ほとんど解けたし、そう悪い結果にはなるまい。
ただ、何と言うのだろう、推理問題?になるのかよく分からないが――
□ 例題1
すべての強盗は夜に起きる。
昨日の夜にコンビニで事件があった。
それは強盗だった可能性があるか?
A. 必ず強盗である
B. 強盗である可能性がある
C. 強盗ではない
D. 不明である
――多分 B だろ、みたいなよく分からないのもあった。
□ 例題2
「以下の情報をもとに犯行時刻を推定せよ」
被害者の死因は刺殺、死亡推定時刻は午前4時〜6時
被害者宅のセキュリティカメラは午前3時56分にオフ
午前5時13分、近隣住民が悲鳴を聞いた
午前5時18分、警察に通報
午前6時05分、警察が現場に到着、鍵は施錠
容疑者Aは午前5時前後に犬の散歩をしていたと主張
最も合理的な犯行時刻は?
A. 3:50〜4:10
B. 4:55〜5:15
C. 5:15〜5:30
D. 6:00 以降
――これは普通に考えて 5:13 頃に起きたと見るべきだから B だな。
「ふぅ〜……」
久しぶりに自分がテストを受ける立場になると、些か緊張するな。
テストが終わって一息ついていると、今度は事務員ではなく警察の制服を着た人当たりの良さそうな男性が来た。
「ゆっくりしててくれていいよ。まだ休憩時間だからね」
「えぇ、久しぶりに頭を使ったのでゆっくりさせてもらいます」
「ハハハ、さっきチラッと採点している答案用紙を見てきたけど、小学校にも通ってないのにすごい正答率だったよ。正直どんな変人が来るのかと戦々恐々としていたから助かるよ」
変人って……ひどい、とも言い難いか。
「世の中には“本”という偉大な発明品がありますからね。科学が発展しようとも紙に字を刷り続ける所以でしょう。字さえ読めればどこでだって勉強できる、素晴らしいモノですよ」
この世界に来てから数学なんて全く勉強していないけどな!
「いや、そうですが高校レベルの勉強なんて生活で使わないでしょう? 私はもう卒業してから十年以上経ちますから、ほとんど覚えてないのに――若さですかね」
まあ、俺も忘れてたし、問題を見て何とか掘り返した感じだったしな。
「実際に使うかは別として、例えば微分なんかは――目標の方向変化を λ、自分の旋回変化を γ として、 N を比例定数にすると dγ/dt = N・dλ/dt。いまいる位置から目標が横移動しているときの変角率から、次に移動する場所を計算して撃てば理論上は当てられるわけです。要は頭の中で推測して撃っているだけです」
誘導ミサイルの比例航法の応用だから、目標速度 Vt、弾丸速度 Vs で sinθ = Vt・sinα / Vs の正弦定理の方がシンプルかもしれない。目標距離 D、時間 t = D / Vs、偏差距離 L = Vt × t――パッと思いつく限りだとそんな感じ。
「……お、おう……前職は猟師と聞いていたんだが、もしかして数学の先生でしたか?」
「いえ、猟師ですよ。でも考えてみたください他にも三角関数は距離(R)=基線長B×cotθ=B/tanθで求められますよね、私達は機械がそうやって演算する事を経験と言うインプットから脳内シュミレーターで想像して"カン"と言う形で実践しているだけです、後はそれを言葉に出来るかと言う事だけなんです」
「農村部って、下手な都市部より教育がちゃんとしてたりしますか?」
いや、俺が例外なだけなんだけどな。
「文盲の奴もいるから、そうでもないですよ。ただ私が変なだけです」
まあ、こういった雑談も試験の一部だろうし、本気のガチ回答をせざるを得ないだけだな。
「そうですか……ゴホン。それでは次の試験です。今から 10 秒ほど写真を見てもらいます。犯人追跡に役立つ特徴を覚えてください」
なるほど、短期記憶力テストといった感じか。
「それでは――はい」
写真にはサングラスで拳銃を持つ男性が斜めに写っていた。ホルスターには予備マガジンが1つ。帽子は被っておらず、服装は黒いパーカーにGパン。黒髪の短髪だが、ややぼさついている。
「そこまで。では相手の特徴を教えてください」
「相手はおそらく男性で単独犯。右手に拳銃を所持し、ホルスターには予備マガジンが1本。サングラスを着用、髪は短髪。服装は黒パーカーにねずみ色のGパン」
「はい、結構です。次は文書が書いてあります。30 秒ほど提示しますので読み覚えてください。では……どうぞ」
茶色のジャケットを着た男性が、午後3時ごろスーパーマーケットから走って出てきた。その際、彼は左手に青いリュックを持っていた。警備員は彼を追いかけたが、男性は駐車場に止めてあった黒いフェートンに乗って逃走した。
「では質問します。1、男性が着ていたジャケットの色は?」
「犯人は茶色のジャケットを着用していました」
「男性は何を持っていた?」
「左手に青いリュックを持っていました」
「良いですね。次は 10 枚のマグショットを見てもらいます。その後 5 枚のマグショットを見せますので、前にいた人物がいたかいなかったか、答えてください」
……この手の試験は、頭を使うよりしんどいぞ。
――――――――――
「おい……そっちの結果はどうだったんだ?」
警察本部の事務所は中途採用試験の話で持ちきりだった。
最初は“田舎の猟師の青年”――去年の射撃大会若手トップという噂と、検問所での聴取記録から「辺境の田舎者で、村がなくなっても生き残った家族のために頑張る青年」というイメージで語られ、高校レベルの試験はさすがにやり過ぎだろうと囁かれていた。
だが蓋を開けてみれば、数学 88 点、文書作成 96 点、理論推理 100 点と、予想を裏切る高得点が並んでいた。
「記憶力テストは 93 点だったよ。前職が猟師なのに普通に微分の話が出てきたんだけど、猟師って頭脳系の職業でした?」
その言葉に「あぁ」と頷く反応が返る。
予測外の方向にも優れているカイという人物に注目が集まれば、雑用係として雇用しようという話が、妻ソフィアの印象へも自然と飛び火した。
町一番の美人にはなれないが、村一番にはなれそうな長い黒髪で、少し背の高い女性――明るそうに見えたが、実は知的ではないか、などと勝手な憶測が飛ぶ。
だが算数に毛の生えた程度の計算力と、普通の文章が読めて日記を書ける程度の文章力しかソフィアにはない。それでも学校すら無い農村部では十分優等生だが、都市では小卒か中卒レベルと判断される。識字率4割を下回る世界であれば、それでも優秀と言えるかもしれないが、比較対象が大学教育まで受けたカイなのが悪かった。
「ローザさんから“まだか”と催促の電話が……」
「あの人せっかちだからな……“いま体力試験中”と伝えてくれ」
第一射撃試験は昼からの予定……あの人、なんであんなにせっかちなのにスナイパーなんかできているかな?
そんな穏やかな警察署に、一本の電話が掛かってきた。
「はい、ルーロー市警察本部です」
『ルビャネツク市警察本部です。各派閥が武装蜂起をして……内戦です。同市は内戦状態になりました!』
お金が無いのでXSR-155を買ったのですが楽しいですね、ついでにあちこち回ってインスピレーションを補充してきたので、こう取材旅行的なモノだと思って許してください。
更新は不定期ですが、気長にお付き合いいただけると幸いです。
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