第十三話 空は暗く家は明るく
極夜、一日中夜の季節。
空が明るくなっても日は見えない。
みんなこの時期に子供が出来るらしい、家に引きこもって暇だもんな。
俺は別に盛ったりしてないよ、しかも別にそれ程暇でも無い。
「はい、ヘルミももう三桁の足し引きはもう問題ないな」
妹達に算数と国語を教えると言う仕事が有るからな。
「テストの点数は何点だったの??」
気になって仕方がないようだ。
「100点満点だよ」
薪にする為に切った木の一部をA4サイズの板に加工して表面を軽く鉋で削って木板に加工したテスト木板を手渡す。
ニヤニヤと笑う妹は今日も可愛いな。
「おにぃ、これ何て読むの?」
俺の読んでいる本で字を読む練習をしてるのだが、全くそう言う用途には向いていない本だ。
「ん?あぁ、公権力だな」
「どう言う意味?」
意味か……うーん。
「統治機構かな、つまりは支配者の支配力とでも言った感じかな」
「ふーん、分かった」
どんな本を読ましてるのかって?自衛惑星と言う本だな。
まぁ、防衛に関する指南書と言った感じかな。
要は無力な政府に頼らず、各々が武装し互いに武器を突きつけ合ってる状況にしましょうねって事だ。
概念的には相互確証破壊が近いかな、核による平和ニュークリアピースならぬ武装平和、アームドピースと言ったところか。
まぁ、コレには致命的な問題が有ることは人類史を学んだ人々なら分かるだろう。
最近ならば第一次大戦、第二次大戦、それら総力戦を見ればただの武装では些か力が足りないのだ。
結局のところそれらはマンパワー、国力の勝負になり、国家崩壊にまで続く地獄だった、独ソ戦なんていい例だ。
最も相互確証破壊だって必ずしも平和だった訳ではない、代理戦争はあったし、冷戦時代に熱戦だって有ったのはご存じの通りだ。
結局平和は次の戦いまでの戦間期でしかないと言う意見もあるし、それを裏付けるように調査で次の戦争が起きないと答えた人は少数で、何時か起きると答えた人が多数派だったんだからな。
「はい、おにぃ掛け算も多分出来た」
おっと、考え方込んでる場合では無かったな。
「どれどれ」
一つ一つ見ていくが、一桁の掛け算は覚えたみたいだな。
にいちがに、ににんがし、まったく懐かしいフレーズだ。
「完璧だ、今日は二桁の掛け算を覚えていこうか」
「うん」
休み何ぞ、無い!!お兄ちゃんはスパルタなのだ。
でも実際のスパルタってそんな軍事国家じゃ無かったとか……言わぬが花だな。
「今日も頑張ってるわね……」
サーラ姉さんが少しずつ引き気味に言って来た。
「勉強は大事だからね、欠かさず毎日コツコツやれば一生役に立つ、サーラ姉さんは……それは、ウシャンカか?」
「そうそう、せっかく狐の皮があるし作ってるのよ、2つ合わせたから狐の尻尾がツインテールみたいでしょ?」
まぁ、うんそうだけど……邪魔そうだな。
「今邪魔そうとか思ったでしょ、わたしもそう思うから固定出来るようにはするから大丈夫よ、それに可愛いでしょ?だから多分売れるわ」
可愛い……のか??
「お、そうだな!」
分からんし適当に同意しとけばええやろ、の精神。
「もぉ、適当に言て」
「ハハハ」
この何気ない日々こそ日常であり平和だよな。
――――――――
翌日、午前中の授業を終えて何気なく窓の外を眺めていれば、エンジン音がきこえてくる。
やがてそれが二発機の音と理解した途端に俺は外套をひっつかんで外に飛び出していた。
まさかこの極夜に帰って来るとは。
俺の他にも何人も家から出て飛行場に向かうのがが見えた。
「カイ!おじさん達が帰って来たみたいね!」
振り返ると外套のボタンを閉めながら走ってくるリサが、あ。
ドサッ。
「おいおい大丈夫か、今時顔面モップとか流行らんぞ」
見事に顔面から雪に突っ込んだリサを駆け寄って引き起こす。
「ありがとう、新雪じゃ無かったら多分怪我してた」
「下手したら鼻が折れそうな突っ込み方だったからな、全く命拾いしたな」
そうしゃべりながら外套のボタンを閉めてやる。
「もうぉ、子供じゃないんだから自分で閉められるって」
「自分で閉められ無かったから顔面から雪に突っ込んだんだろうが……」
そう呆れ気味に言うとツーンと猫がそっぽを向くように私知りませんって顔をしやがった。
「ふーんだ、それより早く行くよ!!」
「また走りって、また転けても知らんぞ!」
俺も雪原を駆けて、飛行機が着陸した飛行場に向かう。
何人かがもう降りて来ている。
「お~い!おかえり~!!」
リサは元気だなぁ。
「お~!たでぇま~!!」
少し息を切らしながら飛行場に来たが、この穏やかな感じから察するに、特段問題は無かったようだ。
「お帰りなさい、この時期に帰って来るとは思いませんでした」
そう訪ねると帰って来たおっさんズ達が皆一様に渋い顔をした。
「まぁな、その何だあそこもダメかもしれん……」
その言葉に一つ引っかかる点があった。
「も、ですか?」
リサもそこは気になったようで訪ねていた。
「あぁ、あのハーヴイ村周辺部の村、殆ど全部酷い事になってやがった、みんな賊共が食い荒らしちまってな……お前らを先に返して良かったよ」
「ヤンフトさん、どうなって……」
少し被せ気味にリサが質問したとき遅れて来た、というより普通に来た皆が集まって来て話は中断された。
「おぉ!ボーリン!てめぇは死に損なったか!」
「馬鹿やろう、当たり前だよ!」
少し重かった空気もどこえやら、騒がしくなってきた。
皆が歓迎して迎え会場は直ぐに集会所に移動しつつある、寒いからな。
その最中リサとさっきの話しを話し合っていた。
「周辺部の村がダメだったって事はつまり……」
「多分賊占領されたり、略奪されたりしてしまったんだろうな……問題はだ、少なくともこの前戦った賊の多くは都市育ちが多いと言う事だ」
ハーヴイ村の時の賊共を見た感じの話だが、多分間違ってないと思う。
今世ではマジの辺境出身だから言えるが、田舎出身者は大なり小なり銃が取り扱える、しかもそれは狩猟が出来ると言う意味でだ。
特段得意ではないけどサーラ姉さんも狩りは出来るし、兄貴だって夏や秋は狩猟をしている。
ソフィア何て完全に農家の家出身だけど畑に出る兎を狩り、穀物を食い荒らすリスを狩り、俺と一緒にカリブーを狩りと家の手伝いの傍らで狩猟をしている。
熊だって出るしクズリだって出てくる、そいつらは基本人間を襲わないが腹が減っていたら別だ、本当に良くも悪くも辺境の農村部では、銃が無いと生きていけない。
「少し分かる気がする、こう皆の雰囲気が少し遠かった」
それは俺とは違う着眼点だったが、大いに頷ける話しだった。
「そもそも服装が俺達より薄かったし、何て言うのかな、女性達も死んだ敵も比較的みんな手が綺麗だった」
そう、この農村部での生活も別に楽と言う訳ではない。
農業用トラックの数も少ないし手作業も大い、軍手をしてない何てザラだ。
だからある程度怪我をするし、手の皮も自然厚くなるのだが、彼等にはそれがあまり無かった。
「手……相変わらず凄い観察力ね」
「リサもなかなかのもんだと思うよ」
そんな考察を二人話していると後ろから何かに抱きつかれた。
「うお!?」
「なぁ~にを話してるの?」
ソフィアの声がびっくりするぐらい平坦何だけど、こわ。
「ソフィア、さん、えっと……向こうがどうなったかを話していました」
リサが直立不動となり、まるで軍人のような話し方になった。
「ふぅ~ん、そう」
リサは何か直立不動のまるで平社員が社長に会ったかのようにカチカチになっている。
ここは俺が何かいい感じに取り持たないと駄目な奴だな。
「妬いてくれるとは光栄だな」
そう言うとソフィアはスッと背中から降りた。
「ふーんだ」
照れたり、そんなことないです、みたいな反応を予想していたのだけど違った。
なんと言うか……女心は複雑怪奇ナリ、さて脳内内閣は総辞職するか。
「ソフィアさん、私はその、横取りとかはしませんから、大丈夫です」
それ本人がいる中直接ソフィアに言うか?
リサのあまりにもストレートな物言いは今日に始まった事でもないし、個人的には好ましくも思うし言わないと伝わらないからそれはそれで良いと思うけどさ。
「分かってる、モヤモヤするだけ」
リサよ、そこで俺に助けてって言いたげな目線を投げないでくれ、多分庇ったら余計妬くぞ。
まぁ、かと言って放置する訳にもいかんか。
「ほらソフィアも行くぞ、みんなも移動し始めたし」
「むぅ……分かった」
はぁ、コレはいい加減身を固めねばならんか……出来れば個人的には村から外に行きたかったんだけどなぁ。
でも外の情勢が悪い中か、今日明日戦争にならない事を祈ろう。
暫らくは日常パートの予定です、ドンパチは既に始まっているのですが近辺にまでその波が波及するには時間がかかりますからね。
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花粉症ツライ




