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第十二話 休息の日

 無事家に帰ってきて丸一日だったが何もやる気が起きない。

 もうひたすらに妹達とじゃれている。

 おかんは血塗れの上着を、姉貴は血塗れのギリーを文句一つ言わずに洗ってくれた、感謝しかない。

 何時も何かとうるさい兄貴もあの血塗れの服を見てか、何も絡んで来ない。

 誰もどうだったとか戦った事には触れてこない、ひたすらに甘やかされている。

 大変だっただろう、ゆっくり休めと言葉ではなく行動で示されていた。

 おまけに家に有った火薬と薬莢、弾頭、雷管は全て合体して弾丸になっていた、見た感じ軽く400発以上あるだよな。

 多分姉貴が全部作ってくれたんだろうな、必要になったら送れるように。

 何だか家族に悪いことをしたと我ながら思う。

 さっきだって何か食糧保管倉庫が綺麗だなと思ったが、よく見れば保存食糧が幾つかの木箱に詰められていたりした……本当に次からは気をつけよう。

 まぁ、いざとなれば戦うのを厭いはしないが、いろいろ家族何だし配慮はすべきだなと改めて思った。

 そんな事を考えながらソフィアでゴロゴロしていると、何やら扉が開いた音がしたが、動く気が起きない。

 ヘルミを膝の上に載せてぼんやりと本を読んでいる。

 今読んでいるのはいわゆる公刊戦史と言われるモノで、ベリルタルと言う原始文明が存在した惑星を従属化した話しだ。

 発行日が帝国暦3168年1月15日、この文明を発見した日は帝国暦3165年8月20日、200年以上前の話か。

「ソフィアねぇさんが来たみたいだよ?」

 本の内容をダラダラと考えていたら何か言ってくる。

「そうだな」

 そうおざなりに返していたら本が誰かに持っていかれた。

「私、来てるんだけど??」

 え?何でソフィアが居るんだ?しかも微妙に怒ってるし。

「あぁ、ソフィア、ご機嫌斜めだな」

「はい、今ご機嫌斜めになりました」

 もう構ってちゃんなんだから。

「すまんがなんもやる気が起きないんだよ、だらけさせてくれ」

 本当に何もやる気が起きないのだよな、本を眺める以外生きる活動を除いて何もしてねぇもん。

「もう十分休んだでしょ、出かけるの」

 えぇ、動きたくない。

 そう目線で語るとソフィアが大きな溜め息を吐いた。

「ダメです、おにぃは休んでいるから無理強いするなら私が頭に風穴を開ける」

 いやいや待ってヘルミ、落ち着こう、と言うかどこでそんな言葉使いを覚えたんだ?

 多分俺か、今はそれどころではなくて、ヘルミを止めないと。

「動くからヘルミは落ち着こう、ホルスターに手をかけない」

 ヘルミの右手を取って一緒にヘルミと立ち上がった。

「むぅ……」

 ヘルミはどこか不満そうでなんかソフィアを睨んでるし、ソフィアはソフィアで何かにこやかに微笑んでいる。

 何か二人の間でバチバチしてない?二人とも比較的だが仲良かったよね??

「ふふん」

 何でそこでそこでソフィアは得意げに鼻を鳴らすんだよ、ヘルミの機嫌が悪くなるだろ。

「それで、どこに行くんだ?」

「散歩、お話しでもしながらあるこ」

 散歩か、気晴らしでは無いがずっと家でゴロゴロしてても身体が固くなるし良いか。

「分かった」

 俺は起き上がってペラペラの長ズボンではなく、厚手のスボンに履き替えた。

 もちろんソフィアとヘルミが居る中で。

 何か二人ともチラチラこっちを伺いながら視線で会話してるし。

 さっさと着替えると二人は何を言うでも無く左右それぞれに陣取った。

 ソフィアが右、ヘルミが左、両手に花……と喜んで良いのかね?

 妹とは言え女の子に変わりは無いし、花で間違いはないか。

「両手に花とは、光栄な事だな」

 そうふざけて言うと二人とも手を強く握り締めて来た。

「そうでしょう?」

「妹じゃなかったら背徳者だね」

 アールカノ帝国は一夫一妻至上主義だもんな、複数の女性と関係を持つ何て論外。

 何なら手を繋ぐだけで背徳者扱いだから厳しい。

 それはともかくだ、二人と何故か手を繋いで外に出ると今日は珍しく天気は良い。

 空には雲が散りばめられている、だが晴れ模様には変わりはない。

 だが太陽は低く、一時間もすればに夕焼け空となるだろう。

 今は、13時か....。

「もうじきに極夜だな」

 1ヶ月もすれば日が昇らぬ日々の始まりだ。

「春になれば多分忙しいぞ」

 冬に土木工事は出来ないが、夏なら出来る。

 どこまでするは知らないが、村を柵で囲うとか何とか。

「おにぃ、何か良い村の守り方とか知らない?」

 良い村の守りか、国力じゃないが、そもそものマンパワーに限界がある。

 戦争に置ける徴兵可能人口を12%程度と仮定しても村から絞り出せる戦力は10人程度、帝国の標準的な一個分隊12人よりも少ない。

 防衛ならば戦力三倍の法則に基づいて36人と考えても50人の徒党となれば守れまい。

 そもそも村人が俄か作りの陣地を作っても防衛しえるとは思えない。

「そもそも論武器が悪い、そりゃ動物を殺せるから人間も殺せるが連射出来ないのはきつい」

 マキシム機関銃、M2ブローニング、MG-42、DP-28、そう言った機関銃があれば、俄か作りの陣地どころか地に伏せるか遮蔽物に身を隠して、掃射するだけで済む。

 それら機関銃で無くとも中間弾薬などを用いた自動小銃、AKやstgなどをでも構わない。

 それらが連射され、自身に降り注ぐと言うだけで雑多な訓練不十分な敵の士気を打ち砕ける。

 相手は軍人じゃぁ無いんだからな、指揮統制など貧弱きわまる。

「連射ね、確かに出来たら強いと思うけど……手に入るの?」

 そう、そこが問題何だよね。

「分からん、最悪オープンボルトのショートリコイル方式辺りの短機関銃でも自作するかなぁ」

 具体的にはステンみたいな奴、でも俺作動原理はアメリカ陸軍だったかの教育映画を見たこと有るから何となく分かるけど詳しくは分からんぞ。

「え?おにぃって銃を作れるの?」

「いや、今は作れないけど最悪勉強して作れるようになろうかなぁと」

 本当に最悪の場合だけどね。

「もう私は戦いたくない、でもそれは……贅沢なのかな……」 

「それが贅沢になるならもう世も末だ……いや、もう末やもしれんが」

 冬には珍しく晴れ晴れとした空には相応しくない、あまりにも重たい話しだと思い話を変えようと思った。

「あぁ止めだ止め、そんな事ばっかり考えていたら鬱になる」

「そうね」

 ソフィアと二人で憂鬱な雰囲気を纏っているといつの間にか手を離してヘルミが居なくなっていた。

「うお!?」「キャ!?」

 雪が飛んで来て俺とヘルミそれぞれに当たった。

「休みなのに暗いのはだめ、ほ~ら!遊ぼ!」

 そう言って再び雪玉を投げてくるが今度のは雪がサラサラのせいで散らばって殆ど俺らには届かなかった。

「全くもってそうだ、な!」

 俺は適当に雪を握ってヘルミに投げ返すがサラサラで散らばってしまう。

「サラサラだから全然固まらないね」

 ソフィアも握ってみたようだが同じように直ぐに形が崩れてしまって雪玉にならないようだ。

「乾燥してる、うお!?っっっつべた!?」

 至近距離で持っていた雪を投げつけられて服の中に入ってくそ程冷たい。

「こんにゃろう、その気なら!」

 雪を固めずにそのまま投擲してやる。

「わっ、服に入るじゃない!」

「入れようとしてるんだよ!」

「おにぃ!覚悟!」

「うお!?っっっ!?!?」

 後頭部に当たった雪玉が背中に幾らか入ってくそ冷たい。

 くそソフィアもヘルミもフードを被りやがって、真正面から雪をぶち込んでやる!!



 

 と言う事をすれば風邪も引くので、今はサウナを準備中と。

 ヘルミの家のサウナのストーブに薪をくべるのが今の俺のお仕事だな。

 いわゆるロウリュ型で外で薪をくべてストーブをあっためて、そこに水を放り込んで蒸気であったまるタイプだな。

 ちなみに我が家にサウナは無い、清拭が基本的な衛生維持になる。

 あんまり汗をかかないしな。

 俺はしばし小さな椅子に座り、定期的に薪を放り込む作業に勤しみながらぼんやりと物思いに耽る。

 この世界における自分とは何なのだろうか?

 ゲームでいえばバグのようなモノ?

 それとも強くてニューゲームを私のプレーヤーが行った?

 そもそも自分を自分たらしめている自我とは、今俺の抱える過去と思っている記憶のそれと同一のモノ?

 ただの誇大妄想の産物か、それとも本当に頭がイかれてしまったのか。

 もしかしたらモレル医師にオイコダールやらを放り込まれた支配者のようかもしれない。

 頭がイかれて、自分の妄想する世界を信じる愚物なのやもしれん。

「……ハ」

 思わず変な笑いが漏れた、何だが世界が酷い虚しいモノに感じる。

 薪を更に何本か放り込んで右手で軽く頭を抑える。

 若さのせいか、自分でも呆れる程感情が揺れる。

 静謐不動とはいかない。

 若い頃とはコレほど感情豊かで、僅かな考え一つで心乱していたかと、最近は思わずにはいられない。

 もしかしたら現代社会や教育とが個性を殺して、感情を殺していたのではと今は考察したくなる。

 アナーキストが泣いて喜びそうな程、良くも悪くも自由で開かれた社会だ。

 発想の自由、言論の自由、ただ自由とは広範で一人の人間が扱うには余りにも過ぎた代物のように感じる。

「自由、汝の名の下でどれほど多くの罪が犯されたことだろうか」

 何となく自らが手を見る。

 手袋をした手、決して綺麗ならざる手。

 何匹モノ動物をバラし、そして幾人かの人を殺めた手。

 後悔は無い、驚く程自責の念などは湧いて来ない。

「創作物は創作物か」

 手が血に濡れてる幻影など見えるはずも無く、ただ必要だから殺した以上の感想も湧いて来ない。

 創作物ならばずっとうじうじ悩み続けたりするんだけどナァ……。

「ハァ……」

 いかんな、もう少し俺の思考は明るくなれんものかね。




 カイの先に暖まってこいとの好意で先にサウナに入ると、まだ水をかけてないのに暖かかった。

 お母さんが先に火を焚いててくれたからだと思う。

 脱衣場で衣服を脱いで籠に入れてから木製の扉を開ける。

 中は熱いくらいにまで暖まってて良い感じ。

「むむむ」

 何か唸りながら私を睨むヘルミちゃん。

「もう少ししたら大きくなるよ」

 おっぱいの事かなと思ってそう言うと何故か溜め息をつかれた。

「お母さんはあんまりおっきくないですし、お姉さんもそんなにおっきくないです」

 変わりにお尻が……とか言うべきじゃ無いんでしょうね。

「私だって別に普通よ普通、この前来た……えっと、エカチェリーナさん?は割と凄かったけど」

 あれはおっぱいにそれ程こだわりの無い私でも思わず見るぐらいのサイズで、個人的には肩こりとか大変そうと思う。 

「ムムム、お兄ちゃんはおっぱい好きだし……」

 何やら考えて唸っているヘルミちゃんを放置しておいて私はストーブに暖められたサウナストーンに水をかける。

 立ち上る蒸気と共に部屋が更に熱くなる。

「胸寄せてもおっきくなったりはしないから……」

「持たざる者に持つ者の気持ちは分かりませぬ」

 どこですそんな言葉の言い回しを覚えたのかしら……多分十中八九カイね。

「はいはい、そもそもカイに妹しか見られてない時点でおっぱい以前の問題だから、何か考えるならその後にしなさい」

 その前に私が貰うけどね。

「むぅ...」

 唸るヘルミちゃんをよそにもう一度サウナストーンに水をかける。

「正直カイは私のことをどう思ってるのかな……」

 悪くは思って無いと思う、好ましく思われているとも思うけど……それが異性としてかは正直自信が無い。

「……悔しいけど多分一番可能性の有るのはソフィア姉さんだと思う、でも多分自分から攻めて来たりはしないと思う」

「攻めてこないと言うのは私も分かる、受動的と言うよりある程度距離を保とうとして来る感じがする」

「そう、お兄ちゃんは怖がりだから、何か大切な何かを失うのが多分心から怖いのだと思う、だから敵なら積極的に立ち向かったけど……」

 怖がりね、腑に落ちる表現だと思った。

「積極的に、能動的に愛したりするのは失う怖さが勝るのかな……」

 何でかは分からない、でも恐れている、怖がっているのは確かにと感じる、だから今を保とうとしている。

「お兄ちゃんも年回りとしてはそろそろ結婚したりする年だから、頭の中では分かってると思うから、積極的に攻めたら多分落とせるよ」

 やっぱり胸を押し付けるとか?それとも腕を組む?

 二人で街に出かけて手をつないで街を散策するとか??

「積極的に攻める……想像しただけで少し恥ずかしい、はしたない」

「他に取られるくらいならソフィア姉さんが捕まえて欲しいから、気持ち的に微妙だけど応援はする」

「……恥を忍んで頑張る」

「お兄ちゃんに聞こえてたら面白いね」

 そうからかうように言ってくる、壁に耳を押しつけてたら多分聞こえてると思うけど、カイはそんなことはしないと思う。

 でも仮にそうだとしたら、恥ずか死しそう。

「それは……それで手間が省けて良いような気もするわね」

 ここで動揺したら年下にからかわれるみっともない姿を曝すことになる。

 だから出来るだけ自然に答えたつもりだったのだけど、何故か嘆息された。

「ソフィア姉さんもいい性格をしてる、多分お兄ちゃんの影響をたくさん受けたせい」

 それをヘルミちゃんが言うのは違う気がする。

「否定は出来ないけど、ヘルミちゃんが産まれる前から私達は遊んだりしてずっと仲良くしてるの、だからお互いに影響しあってるからおあいこよ」

 ちょっと喧嘩したりとか、川に落ちたりとか、かまくらを作って入って遊んでたら崩れて生き埋めになったり……。

 良い思い出も微妙な思い出もいくらでも思いつく。

「二人みたいにラブじゃなくても、同い年の友達が居るって少し羨ましい」

 小さい村だからね、同い年に二人子供が居るって本当に珍しい。

「世界の女子にドヤりたい」

「たまにカイが言ってる変な言葉、多分自慢したいって言葉だと思うけど、他の子に言ったら多分殺されるよ?」

 少しふざけただけなのに真面目な考察が飛んでくる辺りとか、本当に似てると思う。

「別に喧嘩は売らないけど、そもそも意味を理解されないから大丈夫よ」

 カイの謎言葉を理解するにはある程度の経験値が必要だしね。

「正直私も時々お兄ちゃんが何言ってるのかわからないから、頑張って」

 頑張って、ねぇ?

「そうね、そろそろ出よっか」

「うん」

 サウナを出て用意してた、半袖と短パンに着替えてう外に出る。

「ふぅ~」

 冷気が心地良い、熱く火照っていた身体にちょうど良い。

「出たから変わるよ」

「分かった」

「ごゆっくり~」

 はぁ、おっきくて逞しい背中、子供の時は私の方が背は高かったのに。

 ずっと一緒に居ようね、カイ。

 日常パートって難しい、何書いたら良いのか何時も悩む。

 更新は不定期となると思いますので、気長に待っていただけると幸いです。

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