第十一話 強制送還
長い長い一日だった。
何にせよ長居は無用だったし意味がない。
粗方回収した物資を一応持ち帰って俺達の野営地に戻ってきた。
元気な者達はスノーモービルと橇に乗って村戻ったが俺達を含め殆どの者はヘロヘロのドロドロだ。
一応、歩哨として俺が起きていると言ったらソフィアもが起きていると言い出して、紆余曲折の後に二人一組で見張りを立て交代で寝ることになった。
テントには荷物が置かれているし、それの上や間で寝るんだがな。
手狭とは言え暖炉に火が入れられ暖かくなってきた中だし凍死は無いと思う、俺達は木箱や帆布、集めた針葉樹の枝葉の上に寝込んでいた。
その中でも俺とソフィアの組は最後の歩哨となる事になったし、みんなの気遣いで荷物に被せていた薄い幌を使わせて貰った。
「ほらおいで」
別に添い寝する必要は無いと思うんだよな。
俺達は幌を貰ったから暖炉から一番遠い所にいるし確かに寒いけど。
「はーやーくー、寝る時間無くなっちゃうよ」
「まぁそうだな、それにしてもソフィアと寝るのなんぞ何年ぶりだ?」
「二年半ぶりかな?」
思ったより最近だった、てか良く覚えてるなぁ。
そう思いながらソフィアと同じ幌にくるまった。
どことなく良い匂いがするな、香水なぞ付けている訳もないが、女性特有の香り何だろうか。
そんな匂い香りを嗅いでいると落ち着くし何より目蓋も重くなってくる。
「ねぇカイ」
「ん??」
「髭が結構生えて来たね」
俺も二度目の18だしなぁ。
「一応剃ってるんだがなぁぁぁ……眠い」
ソフィアは眠くないのか横に向いて欠伸をしている顔をつついてくる、寝るんじゃないのかよ。
「全部コレが終わったらね、また一緒昔みたいに寝たり遊んだりしよ、それで今回嫌だった事を全部忘れたい」
「そうだな、昔みたいにおねしょして朝から身体を洗ったり、意味もなく雪の中に突っ込んだり、そう言うのも良いかもしれんな」
「おねしょはもうしないから、何時までも言わないでよ」
いかんな、眠すぎていらんことまで言ってるな、もう寝よう。
「すまん、またつまらん事を言う前に寝る」
そう一方的に宣言したんだが、ソフィアはご不満なようでツンツンしてくる。
俺も横を向いてソフィアを軽く抱き寄せた、これでちょっかいはかけられまい。
「ん~~!?!?」
何か言ってるけど知らん、眠い奴にちょっかいをかけたやつがわるい。
起きたらもう朝だった。
起きるとソフィアもスヤスヤと寝ていた、仲良く寝坊らしい。
「ふぁ~、もう朝か」
テントが日の光に照らされて少し明るい。
俺が起きるとソフィアも起きて何か知らんが抱きついてきた。
「おはよぉ~」
無垢な少女のように甘えてくるソフィアはただ可愛い、その頭を優しく撫でて頬にキスをした。
「おはよう、ソフィアのおかげで思っていたより遥かに良く寝れたよ、ありがとう」
いや、マジでソフィアの事で頭がいっぱいで、要らん事を考えずに脳が溶けたのは大きかった。
「お姉ちゃん何だから当たり前ですよ~」
「1ヶ月ちょいだけ産まれるのが早かっただけだろうが」
「それでも私の方がお姉さんです~」
何か幼女退行してるが……まぁいいか。
「分かったから行くぞ、朝起きれば今日も今日とて仕事だ」
俺はソフィアと一緒に立ち上がってテントを出た。
外にはリサが独りで歩哨として立っていた。
「おはよう、すまんなリサ、寝坊しちまった」
「い、いえ、元々そのつもりでしたし、でもその二人で寄り添って……凄いです」
どういう事だ??
「相思相愛ですから」
何そのドヤ顔、別に否定はしないけど何?そう言えば親父も母も添い寝とかしないような?あんまし帝国文化圏では一般的じゃないのかな?
未だにそう言う細かい文化が分かってないだよな、下手に前世の文化的地盤があるせいで順応しきれない。
「別に添い寝しただけだぞ?」
何か顔が茹で上がってるな、何というか……リサって割と純粋何だなぁ
「リサもザンドリクさんと仲良くしたら良いのよ」
そりゃそうだ、家が決めた婚約者とは言え仲良くするに越したことは無い。
「いえ……正直あんまり好きじゃないです、暗いし不器用ですし……」
うん、まぁ分かる、リサからして四つ年上なのもあるしあのぶっきらぼうな話し難い性格じゃ突っかかりにくいよな、正直俺もあいつは苦手だ。
「ふーん、私はカイ以外興味がないからあんまり気にならないけど、確かに面倒な人よね」
否定はしないけど面倒って、ド直球すぎやしないか。
「それに少しひょろいし、私はカイさんぐらいの筋肉が欲しい」
まぁな、コレでも筋トレを欠かしてないから若手の中では一、二を争うマッチョなのだよ、ちゃんとお腹も割れてるし。
「自慢したい、この筋肉」
そう言って力こぶを作るポーズをするとリサもソフィアもパチパチと拍手をしてくれた。
「朝から筋肉自慢とは元気そうだな」
そう言うロックは嫌みのない笑顔をしている。
「まぁな、手持ち無沙汰な日はやることと言ったら仕事するか筋トレか、そのくらいしか無いしな」
酒は飲めるが別にそんなに好きでは無いし、煙草も高いし別に好きじゃない。
あえて言うなら女の子が好きだが、別にソフィアと妹達で事足りるしな。
ヤるのはあれだ、避妊具とかねぇし、ヤる=結婚な価値観の世界だから気軽に出来ないし。
それでも別に女の子に拍手されたり、雑談したりするだけで楽しいし気分もいいからな、それでいいと思ってる。
「言葉は脳筋何だけどお前は実際頭も良いからな、あれだな考える筋肉って奴だ」
何だよ考える筋肉って。
「そう言えば心臓にも記憶器官?が有るとかで心臓移植したら、記憶がその相手に移るとか本当に有るらしいぞ」
そう、とあるエロゲーでそう言う二重人格キャラが居て調べた事があるが、マジであるらしい。
「マジカ、心臓って筋肉の塊だろ?ガチ筋肉で考えたりできるのか……」
考えるとは違うが、言わんとする事は分かる。
「そんなことはどうでも良いから、荷造りをしてくれ」
昨日は帰れないからここに泊まったが、今日中には帰る予定だ。
「その前にカイとソフィーはご飯、カーシャ(※1)は出来ないからパンとカチカチのお肉と燻製したお魚だけど食べないと凍えちゃうよ」
雑談に興じていたらリサにたしなめられた。
「そうだな」
俺達は火にあたりながら飯を食うが、何故か捕虜が二人死んでいるようだな。
見た感じ撃ち殺されてる、これはあれだな逃亡しようとしてダン!
つまり俺銃声がしてたはずなのに寝てたって事か、軍人にはなれないな。
とにかくも飯を身体に押し込んでしまう、パンはあんまりおいしく無いがシャケトバはおいしいな。
――――――――
何でも荷物は後でスノーモービル運んでくれるそうでまとめておくだけで良いらしい。
だがそれは非常に助かる話しだった、疲れてるし早く家に帰りたい。
スノーモービルが牽引する橇に分乗して村に帰らして貰えるらしい。
「良いんですか?」
そう説明してくれたミサさんに聞くと微笑んだ。
「当然です、怪我人は夜を徹して村にまで運びましたし後急ぎはあなた方を運ぶだけですよ」
そりゃ良かった、何より歩かなくて良いのは助かる。
何かエンジン音も近づいてきてるし楽に帰れるな。
「え?軌道車両」
「あれ?」
そう履帯を履いた1.5トントラックみたいなんが来てるんだが、ミサさんも聞いていた話と違うと言った表情だ。
「どうだ!うちの輸送車君だよ!寿命で少しヤバメだけどね!」
ヤバいってなんだよ、爆発とかしてくれるなよ??
「大丈夫何ですか?」
「大丈夫よ、たまーにエンジンが止まるだけだから」
アウトだよ、何がたまーにだよ、まぁこの辺じゃ車検もへったくれも無いけどさ。
「えぇ...」
ドン引きしていると俺らの近くにトラックが止まった。
「おら、ボケッとしとらんで荷物を積めや」
「えっと、載せちゃって下さい、多分何か変更があったんでしょう!」
それで大丈夫なんだろうか、不安だ。
「分かりました、荷物を積むぞ~」
そう言って皆で荷物を運んで積んで、今度は空いてるスペースに捕虜を載せた。
何か戦闘が終わって一段落してるだけに罪悪感が半端ないなぁ。
――――――――
その後で遅れてやってきたスノーモービルに今は載せてもらっている、曰くスノーモービルで荷物と人は一緒に運べなさそうだから分けたらしい。
スノーモービルの橇に乗って村に帰ると飛行機が来ていた、朝一番で援軍を寄越してくれたんだな。
「おー、ハスクさんじゃないですか」
「カイか!おめぇら無事か!!」
村のおっさんらを主体とした14人ばかりの集団にがゾロゾロと集まってくる。
「お前ら無茶しやがって!」
「にーしーろーはー、全員いるぞ、誰も死んで無ねぇ!」
「リサ!無事か!!怪我は無な!?」
何とも熱烈な感激だ、おっさん達にされてもあんまり嬉しく無いけど、気持ちは楽になった。
ワーワーと騒ぎになってしっちゃかめっちゃかだ。
敵陣に突っ込んだやら戦闘で上着が血塗れになったから上着が無いとか話したら、全員仲良く飛行機に詰め込まれた。
ライドさんが外のおっさん達と話している間、俺達は椅子に座って完全弛緩していた。
もう脱力と言っても良いかもしれない。
どこかまだ少しだけ張っていた空気が途切れ、寝入る者も多かった。
「離陸するからシートベルトを締めろよ~」
「了解」
その呑気な声に何となく癒されるが、帰ったら大変何だろうなぁ……。
防衛の為にも自警団とかも必要だろうし、それなら狩りで使うようなライフルでなく、突撃銃や短機関銃、軽機関銃、重機関銃、迫撃砲とかいろいろ欲しいし必要だろう。
あぁ、考えるだけで頭が痛くなりそうだ。
いや、迫撃砲とか持ったらそれは普通に武装勢力だよな、でもホームガードウェポンとかにもあったしギリギリ……。
「ほーら、帰るんだがら難しい顔をしない」
「そうだな、今はただ生きて故郷に帰れる事を喜ぼう」
今は故郷に帰れる、それも生きてだ、それで良いじゃないか、後の事は後で考えよう。
――――――――
さて、若い奴らを返したし後はおっさん達の仕事だな。
全く俺達が間違っていた、範を示すべき大人が引っ込んでガキを送る何ぞするべきで無かった。
何が可愛い子には旅だ、旅なら良いが戦争に送る何ぞ馬鹿げていた。
精々小競り合い程度で、念のために武器も持たしたし大丈夫だろう、復興の手伝いぐらいなもんだろうと考えたのは大間違いだった。
せめて後始末だけでも俺らがやらねぇと立つ瀬がないってもんだ。
(※1)カーシャとは、スラヴ諸語における粥。蕎麦の実を牛乳で柔らかく煮てバターなどを入れたもの。けっこう美味しかったです。(個人的感想)
冗長かなと思って戦後のグダグダを切って捨てるとなんか味気ない...体力次第で冗長かなと思って切り捨てた部分を整頓して差し込みたいです。
この辺はまだ去年の12月中頃に書いた部分ですが、このペースで投稿していると、4月には間違いなく現在書いている27話に確実に追いついてしまいます。
追いついたら多分一週間一話か二話が関の山になるでしょう。
今の所は残業が無かったら編集を頑張って投稿出来るところまで一気に毎日投稿してしまう方針ですので今現在では27話までの投稿はお約束します。
更新は不定期となると思いますので、気長に待っていただけると幸いです。
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