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光るすいかと館の面々

 お祖父ちゃんのすいかが、たくさんの光の玉を吸い込んで激しく光っています。

 

ハヅキさんが変身する時の様に、優しくて眩しい閃光です。だけど、今回の光はそれよりもはるかに大きくて、私を包み込むように広がっていきます。


 そして、光は私の視界を埋め尽くすほどにに広がったあと、ネットの中のスイカへと徐々に収束していきました。


「え? え? え!?」 


すいかが、光を集めた不思議な発光体の様に輝いています。

 

「……やはり、こうなったかい」


 ババ様が言いました。ババ様は、すいかが光り出すことを初めから知っていたみたいな言い方です。


「え? どういうこと?」


 ハヅキさんはババ様に尋ねます。


「森実家の人間が森に持ち込んだ食い物は、いつもこうなるのさ」

「えっ!? ウチですか??」


 ――私の家族と関係があるって、どういうことなんだろう?


 私は家族について考えました。お父さん、お母さん、弟、お祖父ちゃん、お祖母ちゃんそしてひいお祖父さん。


 私の家族はこの不思議な森と、どういう関係なのでしょうか? 「持ち込んだ食べ物」ってどういう事でしょう? 

 

 ババ様に尋ねようとしたその時、知らない声に呼びかけられました。


「今の光。ひょっとして、あなたは森実家のヒトですか?」

「はい?」

 

 ――――!?


 声のする方へ振り向くとそこにはとても大きな鹿がいました。


「うわぁあ!!」


 驚いて思わず大きな声を出してしまった私ですが、すいかは落としませんでした。「これは大事なものだ」という意識が働いたんだと思います。 


「花華を脅かすんじゃないよ!」


 ババ様が大鹿をたしなめます。


「おや? それは申し訳ない。お嬢さん大丈夫ですか?」

 

 大鹿はそう言うと、私の方へ頭を突き出しました。私の目の前まで迫ったその大きな頭の上の立派な角の間から、小さな顔が現れました。


「こんにちは、人間のお嬢さん。ボクはホムラと言います。この大きいのはボクの分身で、本体はボクです」


 声の正体は大鹿の頭の上のホムラさんでした。ホムラさんは縫いぐるみの様なふわふわとした毛に覆われていて、頭には耳のような角のようなモノが生えています。


 体はババ様より一回り大きくて、浴衣のようなものを羽織っています。「毛玉の小人」という感じです。


 大鹿はよく見ると角の先に炎が灯っていて、チラッと見えた尻尾も炎でできています。


「ボクはこの結界樹の館の門番です。だから安心してください」


 ホムラさんがそう言うと、ババ様があきれたように口をはさみました。


「それはお前が勝手に言っているだけだろう。この結界の中で門番など必要ないじゃないか!」

「何を言っているんですかババ様、結界の中だからこそボクが門番をしているんじゃないですか」

 

 そこまで言うとホムラさんは、私の隣で退屈そうにしていたチョウさんをチラッと見ました。


「だって、チョウくんがどんなに強くたって結界の中じゃ役立たずじゃないですか」


 ホムラさんはとても得意気です。なんだかちょっと感じが悪いです。


「ハヅキもそう思うでしょう?」


 得意満面のホムラさんがハヅキさんに問いかけます。


「知らない。なんでわざわざチョウくんに酷いこと言うの!?」


 ハヅキさんが私の言いたいことを言ってくれました。さすがハヅキさんです!


 ご立腹のハヅキさんがホムラさんを睨んでいます。睨んでいても美少女です。


「……そんなことより、ソレ、何ですか?」


 ホムラさんは気まずい空気を切り替えるように、お祖父ちゃんのすいかを指さします。


「え、えーっと……」


 もうなんて答えればいいのか、よくわからなくなりました。


「これは花華のすいかだ。これから長の所へ持って行く」


 ババ様が私の代わりに答えました。特に異論はありません。


「そうですか。なら、ボクも一緒に行きますよ」


 ホムラさんはそう言うと私の肩に飛び移りました。すると大鹿は炎になって地面に吸い込まれていきました。


「邪魔だから来なくていい」

「いやいや、ボクが護衛してあげますよ」

「だから、結界の中じゃ必要ないと言っているだろう!」


 私の両肩でババ様とホムラさんが揉めています。


 今私は、手には光るすいかを待ち右肩にはババ様、左肩にホムラさんそして頭の上ではミナモが寝ています。

 そんな私の愉快な姿をハヅキさんが、不思議スマホで撮って見せてくれました。


「ボクがいるので安心してください」


 結局ホムラさんも一緒に行くことになりました。


 苔むした石畳の先に、結界樹と一体化した瓦屋根のお屋敷があります。

 木造のお屋敷が大樹にめり込んでいる様にも見えるし、その逆の様にも見えます。


 私たちが近づくと、お屋敷の重々しい大きな扉がひとりでに開きました。まさかの自動ドアです。


 開いた扉から見よとしても、ハヅキさんのミニスカートと同じ様に不思議な力で全く中が見えません。


「行こう、はなちゃん。ジジ様はこの中にいるよ」


 ハヅキさんが、緊張する私の手を引いてくれます。


 恐る恐る足を踏み入れた館の中は、外から見たよりも明らかに広くて、明かりもないのに外よりも明るいくらいです。


「ようこそ、結果樹の館へ」

「お前の家じゃないだろう!」


 私の両肩は相変わらずです。

 

 板張りの大広間の奥に目をやると、そこには一本の木が立っていました。


「あそこに座ってるのがジジ様だよ」


 ハヅキさんに言われてよく見ると、木の前に誰かが座っています。


「それでね、あっちが銀ちゃんだよ」


 ハヅキさんの指さした先にいた「銀ちゃん」は、細くて小さな体の上に大きな頭が乗っていて、ここからでもはっきり分かるくらいの大きな目はアーモンドのような形をしています。

 

「あれが銀ちゃん……」

「あのね、ホントの名前は違うんだって。でも、『言語化できない』って言うから私は銀ちゃんって呼んでるんだよ。全身銀色だから銀ちゃん」


 ミシミシと足音を立てながら徐々に近づいて行くと、次第に二人の顔がはっきりと見えてきました。


 ジジ様はおとぎ話の翁や仙人のような白髪のお爺さんです。


 そして銀ちゃんさんは……。


「えっと、銀ちゃんさんは森の外からやって来たんですよね?」

「うん、不思議な鉄の乗り物に乗って来たんだよ」


 …………ハヅキさん、銀ちゃんさんは(シルバー)じゃなくて「グレイ」だと思います。

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