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不思議な森と謎の美少女

 今、私は手に小玉のすいかを抱えて森の中を歩いてます。


 お祖父ちゃんの畑で採れたすいかを、山本さんの家に持って行くように頼まれました。 


 神社の裏から森を抜ける道を通っています。こっちの方が近道だからです。


 小玉でも私には十分重いので、すいかを持って歩くのは大変です。すいかを入れたネットの持ち手が指に食い込みます。

 でも、大変だけど、お祖父ちゃんがお小遣いをくれたのでラッキーです。


 このお小遣いは、推しのグッズ購入に使おうとと思っています。推し活です。


 私の推しはアイドルグループ『ノアのソラフネ』のメンバーのキッキこと木崎鏡花ちゃんです。


 キッキは私の天使なのです。

 

 普段は全く見ないはずの歌番組で、彼女を見つけた時からずっと神推しです。

 キッキの魅力が何かと聞かれれば、それはズバリ美少女であるということです。

 キッキは美少女天使なのです。


 例えば、去年キッキが出演した映画『雪の声』では、完全に主役を引き立て役にしてしまっていました。


 映画中盤の主人公といっしょに雪の中を下校するシーン。ただ歩いているだけなのに、美少女すぎて泣きました。


 私はキッキが世界一の美少女だと思っています。絶対で、別格です。


 ちなみに私は女子です。中二です。


 美少女に夢中な私だけれど、同性愛とかではありません。

 恋愛経験が全く無いので絶対とは言い切れないけど、多分違うと思います。


 でも、私は美少女が好きな女子です、それは間違いありません。


 キッキみたいな美少女がいたら、こんな森の中だって天国です。

 キッキみたいな美少女ががお姉ちゃんだったら、毎日がしあわせです。

 キッキみたいな美しょ――


「「ねえ、あなたどうしてここにいるの?」


 ん? 誰ですか?

 誰かに話しかけられました、でも周りを見回しても誰もいません。


 ――あれ? ここは何処?


 ……いつのまにこんな森の中に入ってしまったのか、見たことのない景色です。

 大きな樹がいっぱい生えていて森の奥って感じで、なんとなく不思議な空気を感じる知らない場所です。


 キッキの事ばかり夢中で考えながら歩いていたら、迷子になってしまいました。

 

「ホントに、ここは、どこなの!?」

「ここはね、精霊たちが住んでる『霊樹の森』だよ」


 ――――!?


 声のした方を見ます。今度は声の主を見付けることができました。

 見知らぬ美少女が目の前で、にこやかにこちらをうかかがってます。


「あなたは人間でしょう? ここへはどうやって入ってきたの?」

 

 美少女がまた私に話しかけてきました

 森の中に突然現れた、綺麗でおしゃれな美少女です。


 ファッションに疎い私にはよく分からないけれど、彼女はとてもおしゃれだと思います。

 彼女は夏らしい白のワンピースを身にまといそして、清潔感のあるさわやかな金髪が風に揺れています。

 

 そして、なぜか目の前の美少女は腰から下が地面に埋まっています。上半身だけの美少女です。

 都会の美少女が田舎の地面から一輪の花の様に可憐に生えている。そんな感じです。


 …………。


 イヤイヤイヤ、美少女は地面から生えません。


 ――現実逃避? 妄想? 美少女の事ばかり考えていたから、美少女の幻覚を見ているの?

 そんなことを考えながら、美少女の顔をよく見ようとして目が合いました。


「あなたやっぱり、わたしのことが見えてるのね!」


 私の目を見つめたまま、美少女の顔がスーッ近づいてきました。

 埋まっているように見えた脚も、土の中をすり抜けるように、少しずつ見えてきました。

 

 美少女の体が徐々に地面から浮き上がってきます。


 謎の美少女がその全身を地上に出しました。足下の地面に穴は開いていません。

 おしゃれなミニスカートから、スラリ伸びる美脚も、まったく土で汚れていません。

 そして足が地面から少し宙に浮いています。


 幽霊ですか? そういえば精霊って言ってたような……。


「あなた名前は?」


 謎の美少女が興味津々という感じで、私の名前を聞いてきました。


「も、森実花華(もりさね はな)です……」


 素直に答えました。


「はなちゃんね。はなちゃんは何歳?」

「14歳です……」

「わたしの名前はね、ハヅキだよ。」


 美少女の名前がわかりました。ハヅキさんです。


「えっとね、わたしは150年くらい生きてるかな」

「ひゃ、ひゃくごじゅうねん!?」

「うん、150年。はなちゃんから見たら、すっごいお婆ちゃんだよね」


 ハヅキさんはとても楽しそうに笑っています、めちゃめちゃ可愛いです。

 どう見てもお婆ちゃんでは無いです、高校生ぐらいで美少女です。


 神秘の美少女です。


「それは何?」


 ハヅキさんは、私の手元を指さしました。


「す、すいかです」


 お祖父ちゃんのが庭の畑で採れた小玉すいかです。


 ハヅキさんの質問が続きます。


「はなちゃんは何処から来たの?」

「今夏休みだから、イナカのお祖父ちゃんのウチに遊びに来てて……」

「じゃあ、はなちゃんの家は都会にあるの?」

「そ、そうですね、都会だと思います……」

「わぁ! スゴーイ! はなちゃんは都会から来たのね!!」


 突然ハヅキさんのテンションが上がりました。


「都会の可愛い女の子だ!!」


 ハヅキさんはとても楽しそうです。楽しそうに宙を飛んでいます。


 今、私の頭の上を美少女が無邪気にミニスカートで飛び回っています。

 でも不思議な力でスカートの中は見てえいません。安心です。


「わたしね、はなちゃんに会えてとってもうれしい!!」


 ハヅキさんは、私との出会いをとても喜んでくれているようです。


「ここはわたしたち精霊が住む聖域だから、本当は人間はめったに入って来られ無いはずなんだよ」


 ハヅキさんはやはり精霊さんなのですね。


「わたしね、都会の街にとっても憧れてるの。ホントは行ってみたいのだけど、わたしたち精霊はここから出ることが出来ないから」


 えっ!? 出られない?


「あ、あの私、道に迷ってしまったみたいなんです。いつの間にかここにいて、ここがどこなのか、なにも分からなくて」


 そもそもどうやって来たのかよく覚えていません、気付いたらいました。


「えっとね、ここは「霊樹の森」って言ってね、はなちゃんたちが住んでる人間の世界と、同じ場所にあって違う場所にある、精霊の世界だよ」


 よく分からないけど、異次元的な場所みたいです。


「私、家に帰りたいです、帰れますか?」


 今はこれが一番大事な問題です。


「えっ」


 ハヅキさんは私の言葉に一瞬驚いた後、考え込んでしまいました。


「んー……えっと、ごめん、分からない」


 さっきまではしゃいでいたハヅキさんの顔が曇ります。


「でも私は出られないけど、はなちゃんは人間だから多分大丈夫」


 そうなんですか? 


「昔はね、頻繁に出入りしてた人もいたんだよ」


 なるほど、それなら大丈夫かもしれません。


 とりあえず歩いて来た方向に引き返てみようと思います。

 木が生い茂り、木漏れ日が虹色に光る見覚えのない道を、まっすぐに歩いて行きます。



 

 ――――来た時の何倍も歩いても、景色は変わりませんでした。


「どうしよう……」


 どうしよう、帰れなくなっちゃいました。

 

「大丈夫だよ、ジジ様ならきっとなんとかしてくれるから」

 

 ハヅキさんが途方に暮れる私の手を取って言いました。


「ジジ様?」

「そう、ジジ様。2000年以上生きてて、この森の事なら何でも知ってる森の長老だよ」


 2000年以上……さすが精霊の長老さんです。


「ジジ様はね、ここから少し行った森の奥にある『結界樹の館』という場所に住んでいるんだよ。さっきも言ったけど、森に入って来られた人間は、出ていくことが出来るはずだから。だから絶対に大丈夫!!」


 ジジ様にお願いすれば、家に帰ることが出来そうです。希望が見えてきました。


「それじゃあ、ジジ様の所に行こうか」

「はい、よろしくお願いします」


 こうして私は、美少女精霊のハヅキさんと一緒にジジ様に会いに行くことになりました……。

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