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信じたい

要は、朝の会議はそれで終わりにした。

今夜は妙を吊る事に決まっているし、妙も、消沈してはいたものの、それは仕方がないとあっさり飲んでいたのだ。

そこには、やっと解放されるという、ある種の安堵感も感じられ、要は妙がどこか真っぽく見えると同時に何やら羨ましかった。

…オレ、なんで噛まれないんだろう。

要は、息をついた。

そもそも要はずっと狩人の守りの中に居たし、狼からしても護衛成功が出る率が高いので、噛むのはリスクが高かった。

なので狼は要を避けて、忠司を噛んだりしていた。

護衛成功は、初日以外は出ていない。

初日は健と陽介は彰を、彰は要を守っていた。

彰はとても発言が伸びるので、襲撃されたとしたら理解できる。

要は、まだ共有者として出ても居なかったし、襲撃するには結構コアな位置だ。

とすると、やはり狼は彰を噛んだと考える方がスッキリする。


ならば、なぜ次の日も襲撃されなかったかというと、彰は狩人として露出していなかったし、次の日ももう一人の真狩人に守られる可能性があると狼が噛むのを断念して次の日浩平を襲撃したとしたら、辻褄は合う。

彰が狂信者だったとしたら、あれだけ頼りになる、占い結果で白しか出ない味方を、初日から噛むのはおかしい。

つまり、彰は村陣営、真狩人なのだ。

…そうだ、真しかあり得ないのに。

要は、思った。

彰をあれこれ聞いたらズバズバ答える、怖い存在とどれだけ白い発言をしても、心の端で疑う自分が居た。

健と陽介が破綻してもなお、疑わしいと感じてしまうのは、あのハッキリとした物言いが、全部見えて誘導している人外のように思えて、怖がっていたからなのだと要は気付いた。

…彰さんは、そういう人だ。

要は、スッと頭がクリアになった。

理解していたはずなのに、どうして疑ってしまっていたのだろう。

要は、思うが早いか急いで部屋を飛び出して、彰の部屋へと走って行ったのだった。


「彰さん!」

要が彰の部屋へと飛び込むと、彰が驚いたように振り返った。

彰の部屋の窓際の椅子に、彰とステファンが座っていて、こちらを見ている。

彰は、言った。

「要?どうしたのだ、何を慌てている?何か分かったのか。」

要は、何度も頷いた。

「彰さんが、絶対狂信者じゃないって!」

彰は、目を丸くしていたが、フッと笑った。

「そうか、信じると会議で言っておきながら、まだ怪しんでいたのか。まあ、妙さんが真であっても私が狐である可能性は残るのだがね。健と陽介の様子を見たら、絶対にどちらかが偽だとやっと分かったのか。」

要は、バツが悪そうな顔をした。

「その…まあ確かに博正偽なら彰さんが狐の可能性はありますけど。それなら狼が彰さんを襲撃してもおかしくはないし、護衛が入ってなくても生き残るだろうけど…。」

彰は、クックと笑った。

「いい、そっちから判断したのだな。まあ、初日から要を噛むのはおかしいと私も思う。私襲撃なのだろうなと。だが、私は襲撃されやすい位置だったが、守られやすい位置でもあった。初日さえ凌げばなんとかなると、内心思っていたのだよ。とはいえ、だからこそ狼にわざと噛ませた狂信者かも知れないぞ?それでも私を信じるか。」

要は、恨めしげに彰を見た。

「…一度思ったからには、もう信じます。そもそも、彰さんは一度も破綻していないし、昨日までならいざ知らず、今朝の破綻はあの二人が決定的に怪し過ぎる。だから、あなたを信じます。」

彰は、満足げに頷いた。

「そうか。ならばいい。それで?何を話しに来たのだね。」

要は、答えた。

「ステファンとは何を?」

ステファンが答えた。

「私が狼ではないだろうなと言う話をだ。」要が目を丸くすると、ステファンは続けた。「先ほど博正が真である場合の話を彰がしていただろう。その場合、私は限りなく初日に囲われた狼に見える。が、彰はそれはないだろうと言うのだ。」

彰は、頷いた。

「ステファンは何度も言うが、私と同じく生き残ろうとするのなら何とでも発言して村を説得する能力を持っている。わざわざ初日に囲わせて、じっと黙っているなどあり得ないと考えた。もし私ならば、自分よりまず、もっと非力そうな所を囲わせるか、それとも初日は村人に白を打たせた。そうすれば、初日の吊りは免れるからだ。」

ステファンは、頷いた。

「やはり初日から、仲間を吊られるのは痛い。それに、私は他を守ろうと考える戦い方をするので、身内切りはしないと自分でも思っている。彰がそのように言うので、よく分かっているなと思ってはいたのだ。それに、私は彰が狩人だと知っていて、襲撃しないわけはない。何より脅威になるのは分かっているし、初日に噛めなくても隙を見て必ずもっと早くに襲撃したよ。これを吊ろうというのは自殺行為だ。私は恐らく、議論で負ける。」

彰は、顔をしかめた。

「私は逆に考えていた。議論で勝てるので狼ならば吊りに掛かるだろうと思っていたのに、ステファンは一向にそんな様子は見せなかったし、襲撃もしない。ステファンが敵なら、あまりにもお粗末だとずっと思っていたのだ。」

要には、よくわからない。

が、恐らくお互いによく知ってるからこそ、思うところがあるのだろうと思った。

「…彰さんがステファンを信じると言うのなら、オレも信じようと思います。その上で、もう一度聞きます。妙さんを、真だとどれぐらい思っていますか?」

彰は、答えた。

「…そうだな、92%は真だと思っている。彼女が未熟なのでいろいろ惑わされたが、博正目線での狼位置、狐位置が納得できないからだ。とはいえ…倫子さんのどこかコロコロと意見を変える所や、洋子さんの他力本願な所が狐と言われたらそうかもしれないとは感じる時があるので、そこはマイナスだ。狩人がここまで一度も襲撃されていない事実は、私の中では理解できないし払拭できない要素なのだよ。狂信者など、さっさと切って縄を消費させ、狩人を殲滅してしまわないと後に困った事になるからな。」

要は、真剣な顔で彰を見つめた。

「…妙さんが、昨日襲撃されなかった理由は?ワンチャンならそっちの方が良かったんじゃ。」

彰は答えた。

「妙さん真を確定させるのがまずかったからだ。妙さんを噛んでも真司が残って妙さん真を証明する。襲撃したところで、彼女と正希のグレーは詰まっている。今朝も話したように、妙さん目線で正希の白先も除けばもう、残っているのは久美子さんだけ。つまり、久美子さんが人外だと透けてしまうのだ。仮に、靖に囲われた狐だとして、狼からそれが透けているので、本来妙さんを真確させて、久美子さんを吊らせたかっただろう。が、それでは狩人に狼が出ている事になり、3人吊りきっても勝てる縄がある。狼としたら占い師が確定するのは絶対に避けたいのだ。そして私は、久美子さんは狐ではないと思っている。」

要は、問うた。

「それはなぜ?」

彰は、答えた。

「なぜなら、昨日、真司を襲撃しているからだ。狼ならば、それがラストウルフなのだから自分が破綻する噛みはできない。健に妙さんから白が出ていることから、妙さん真なら健は狼ではない。私目線では、陽介が狼ということになる。その陽介は、吊り先指定に入ったことで自らCOし、おかしな言い訳をして護衛先を交換したと言っている。そもそも狼が狩人に居たらさっさと真を噛んでいるので、真司はとっくに居なかった。昨日まで残るなどおかしい。本来ここまで追い詰められる事はなかった。この盤面まで狩人を放置している事実が、どう考えても狩人に狼が居るとは考えられず、噛みが陽介を追い詰める形になっているので、恐らく陽介が狐で、久美子さんがラストウルフなのではないかと私は思っている。」

要は、更に聞いた。

「それでは靖は知らずに久美子さんを囲っていたということですね。なぜ陽介を囲わなかったんですか?」

彰は答えた。

「そもそも初日でないと囲うのは難しいのだよ、要。狐が居ることから、占い先は全て指定だ。陽介が先に狩人として露出したことから、その暇もなかったのだと思う。こうなった時に白先は疑われる事になるので、やり方としては良いやり方だった。が、妙さんが健を占ってそこが狐の可能性が消え、結果的に陽介は追い詰められる事になったのだ。これが妙さん真として私が考えた全てだよ。」

彰の頭の中には、全ての答えがあるように思った。

それが怖いと思わせるのだが、要はもう、彰を信じると決めていた。

迷う事はないと、要の中の誰かが言っている。

「…妙さんを、残して進行しても、間違いがないと彰さんは思うんですね?」

彰は、要の目を見返しながら少し考えたが、頷いた。

「私を心底信じられるのならな。とはいえ、ステファンとも話していたのだが、皆こちらが思っているほど考えていないような空気を感じてね。私がこうして考えていることも、水泡のように消える可能性はまだある。つまりは、陽介が何も考えていなかった狼で、真司を噛みたいから理由を考えて噛んだだけ、とかな。なので確証はない。が、ここまで狼はかなり狡猾に立ち回っている。博正噛みがその良い例だ。なので、私の考えは間違っていないと思う。」

ステファンも、頷いた。

「私もそのように。だが、博正が狂信者であったなら、あれが司令塔であった可能性が高いから、奴が居なくなってどうしたら良いのか分からなくなっている可能性もある。」

彰は、苦笑した。

「だが、博正が司令塔なら、狼が出ている事になるからもっと早くに狩人を襲撃させているだろう。やはりここまで狩人を残して真司を生き延びさせていた事実から、狩人には狐が居るのだろうな。だとしたら、博正が生きていた時点で靖が健を囲っていると見えていたはずだし、陽介に白を打ったのも分かる気がする。だが、それならなぜ陽介を噛まなかったのかな?」

ステファンは、顔をしかめた。

「さあな。博正に聞くしかあるまい。まあ、しかし要、今夜は妙さんを吊るのだろう?妙さんに陽介を占わせるのなら、誰を吊るつもりだ。久美子さんはラストウルフかも知れないので、今夜吊ったら狐勝ちになるぞ。まだ妙さん目線、どちらが狼なのか分かっていない。あくまでも、状況からこうだろうと私達が推理しているだけなのだ。どちらかに手を掛けるのは危険だ。妙さん真なら、他は皆村人になるのだからな。」

要は、少し考えた。

「…必ず村人である場所を吊れば良いんです。」え、と彰とステファンが眉を上げると、要は続けた。「オレを。オレを吊ったら必ず明日が来る。その間に妙さんに、この二人の色を見てもらいましょう。黒なら残してもう片方を吊る。次の日ラストウルフを吊る。妙さん真なら、そのルートで行けます。」

ステファンが目を丸くする。

彰が、ため息をついた。

「…分かった。君がそこまで私を信じるというのなら、今夜は私を吊るといい。」え、と今度は要が驚いた顔をすると、彰は続けた。「だが…そうなると妙さんが襲撃されるだろうがな。健は昨日妙さんを守っていて守れない。だが、溶けていなければそれは狼だ。そこを残してもう片方から吊る。それでどうか?」

要は、ブンブンと首を振った。

「嫌です!彰さんは吊りません!」

彰は苦笑した。

「だから、私はまだ狐の可能性も一応あるのだろう?吊られた方が村目線も楽になる。」

それでも要は首を振った。

「絶対に嫌です!」

共有者を吊る方があり得ないのに。

彰とステファンは、困ったように顔を見合せたのだった。

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