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夕方まで

真司が要の部屋に入ると、要はまだ悩んでいるような顔をしながらそこに座って窓の外を見ていた。

真司は、言った。

「…なんだ、護衛はオレが決めるって言っただろう。」

要は、頷いた。

「分かってる。でも姉ちゃんと倫子と久美子さんが…一緒に上がって来たんだけど、さっきまで廊下でちょっと話してて。妙さんが偽だと思うのに、いくら色を見るためでもって真由さんを吊るのを反対してる。博正が噛まれたのに、妙さんを一日生き残らせる意味がわからないとかで。妙でも白黒分かるんじゃないかって。」

真司は、顔をしかめた。

「まあ…妙さんが偽だと思ってたらわざわざ博正の白先を吊るなんてって思うだろうな。じゃあ、こうしたらどうだ?今夜は妙さんを偽だと思う人は妙さん、まだ真があると思う人は真由さんに投票してもらったら。」

要は、頷いた。

「うん…。その方がみんな納得しますよね。でもオレは、まだ妙さんが偽でも狂信者の可能性があるし、できたら真由さんの方を吊りたいんだけどな。」

真司は、頷いた。

「分かってる。オレも同じだから、今夜は真由さんに入れるよ。」と、椅子に座った。「それで、オレは健と陽介の二択だったら、陽介に守ってもらおうかと思ってるんだ。」

要は、頷いた。

「陽介には博正から白が出てるし、より信頼できますよね。ただ、狂信者の可能性はまだありますけど。健よりは破綻してないし、信頼はできます。」と、身を乗り出した。「でも真司さん。本当に二人に守らせなくて良いんですか。その方が確実なのに。」

真司は、それを聞いて真顔になった。

「…オレの考えを話していいか?」

要は、突然真司が鋭い目でこちらを見たので、驚いて姿勢を正した。

「はい。聞かせてください。」

真司は、頷いた。

「オレが心配したのは、彰がそれを提案したからだ。」

要は、目を丸くした。

「え、彰さんが?」

真司は、頷く。

「あいつなら先の先まで計算して動いているはずだろう。仮に狩人のうち彰が偽で、あの二人が真だった場合。彰は恐らく要護衛なのは予測はできる。つまり他は噛み放題だ。もしオレが狼なら、狩人の一人を噛む。それで真が一人落ちる。もう一人の真狩人は、明日はオレを守れない。オレを護衛できるのは彰一人になる。」

要は、不安になりながら頷いた。

「…そうですね。オレを噛んだら彰さんが破綻してしまうし、今夜は真司さんは噛めない…けど、明日は?彰さんが真司さん護衛で、残りの一人がオレ護衛。」

真司は、頷いた。

「そこまで来たら、護衛成功が出ない限りは縄が心もとなくなっている。まず、明日は9人だ。縄は4。もう余裕はないが、霊媒結果次第で吊り位置を決める。そして明後日は7人、縄は3つ。博正が真だったら、オレ襲撃で彰が破綻していても、狂信者である彰を吊るか迷うところだ。むしろ、彰が偽だったら絶対にその日、オレを噛む。何しろその時点でもグレーは広い。狐の処理ができているのかも判断つかない状況だ。できたらまだ残して、とりあえず狐処理を急ぐだろう。間違って狼を吊れば、そこで村は負けることになるから、投票は彰に任せて狼位置を避ける投票をしなければならないかも知れない。次の日、5人で2縄。そこで初めて彰を吊らねばならない。が、狐が残っていたらもう村はまずいことになる。次の日3人で村、狐、狼で村勝ちはなくなるからだ。そんなわけで、彰が偽だったらまずいんだよ。」

要は、顔をしかめた。

「…つまり、明日さえしのげば彰さんは破綻覚悟で真司さんを噛めるってことですよね。村が間に合わなくなるから。そして破綻したら、狂信者でしかないから狼位置を知っているだろうし、彰さんに投票を任せて狐らしいところを処理するしかないって事ですか。そしてそこを外したら、もう村勝ちはない。」

真司は、頷く。

「その通りだ。彰が真ならいいんだが、あいつの事は信用ならない。人外でも平気で仲間を切って真を取って、最後に機を計って村を裏切って来るからな。こっちの耳触りの良いことを言うが、それは自分の信用を得るためかもしれないのだ。そもそも今朝も言ってただろう。妙さん真だともっともらしいことを言って、村はあいつが妙さんを真で決め打ってるぐらいに思っていたが、違っただろう。ああやって惑わして来るんだ。だから、ここまでは彰に守らせたら噛まれなかったが、これからは分からないってことだ。」

要は、息をついた。

「…それはそうかも知れませんけど。でも、それでもオレは彰さんが真狩人なんじゃないかと思ってるんです。だって彰さんだったら、もっとえげつない方法でさっさと村人ばかりを吊って行って、多分狼からは狐が透けやすいだろうから、そこを占わせるように誘導してもっと早く勝ちに行く気がするんですよね。博正を噛むのももっと早くにしてた気がする。それこそ、占い師なんか今頃残ってなかったんじゃないですか。そしたら盛大なグレランしかないから、村は相当困ったと思うんです。それに、ステファンだって。まだ生き残ってますよね。」

真司は、眉を寄せた。

「それなんだよ。博正が真だったらステファン狼はあり得るだろう。昨日博正に指定されてたのは、ステファンか倫子さんだった。博正ならまずステファンを選んでたんじゃないか。黒が出ていたら、真由さんと対抗でどうなっていたか分からない。仮に真由さんが吊られていたとしても、オレが生き残って色を落としたらどっちが真なのか透ける。ステファンは吊られるだろう。その夜博正には護衛が入り、それが彰でない限り噛めなくなる。瞬く間に盤面は詰まってアウトってわけだ。博正噛みには意味があるんだよ。」

そう言われてしまうと、なんだかそんな気がして来る。

が、要は言った。

「…でも、あくまでも推測ですよね。オレ…なんでか分からないけど、これは彰さんのやり方じゃない気がするんです。あの人って本気でやれば徹底的に相手を打ちのめしてしまう気がする。面倒を嫌うから、早く終わらせたいと思ってると思いませんか?なんか…そう、奥さん!彰さん、奥さん命ですよね?いや、29歳ってことは、まだしてないのか…?」

要は、何か浮かんで来る情報のようなものに、戸惑った。

彰がやたらと言っていた妻の…名前が出てこない。

「痛…!」

要は、頭を押さえた。

なんだか、頭がおかしい。

変な記憶みたいなものが、何もかも知っているような意識が、今の自分を飲み込むように思って恐怖を感じた。

真司が、要を気遣いながら言った。

「要…?!要、大丈夫か?!」

要は、余裕なく手を振った。

「…大丈夫…なんか頭が痛い…。」

「…待ってろ!」

真司は、部屋を飛び出して行く。

要は、テーブルに突っ伏して頭を抱えていたが、そのまま意識が遠くなるような気がした。


「…要?」

気がつくと、要はベッドの天蓋を見上げていた。

どうやら、ベッドに横になっているようだった。

要を覗き込んでいたのは、真司とステファン、そして彰だった。

「…あれ。」と、要は起き上がった。「オレ、テーブルに突っ伏してたのに。」

「気を失ったんだ。」真司が言う。「こいつらを呼んで戻って来たら、そこで泡吹いてたから急いでこっちに運んだ。もう大丈夫か?」

要は、頷いた。

「何も。なんか…変な気持ちになって。なんかこの世の何でも知ってるような気になって来て、飲み込まれそうになったんです。でも、今はなんともない。全部消えたみたい。」

彰は、息をついた。

「連日ストレスを抱えていたからな。無理はしない方がいい。後は真司に任せて、今夜は早めに休むといい。」

要は、頷いた。

「はい…あの、ごめんなさい。心配かけました。」

彰は、首を振った。

「良い。気にするな。」

彰は、さっさと出て行く。

ステファンが軽く要の頭を撫でて、そうして真司と共に、三人はそこを出て行った。

要はなんだか疲れた気がして、そのまま昼寝でもしようと目を閉じたのだった。

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