表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/52

5日目の朝

何事もなく、要は目を覚ました。

…オレは襲撃されなかった。

これで、健はまだ二度目の破綻からは免れたことになる。

閂が抜けてもはや儀式のように、廊下へと飛び出すと、右を見た。

左には、もう誰も居ないのを知っている。

「…みんな無事?」

この階には、もはや要と洋子、久美子、陽介しか昨夜残って居なかった。

そして、その4人は廊下で揃って顔を合わせていた。

…今日も陽介は生きてる。

要は、思った。

狩人が一人でも噛まれてくれたなら、残りの精査を進められるのに、まだ狼は狩人を残しておくつもりらしい。

それとも健が襲撃されているのだろうか。

「…二階に降りようか。」

皆が頷いた時、下から真司の声がした。

「…要!」良かった、真司は生きてる。要が思った次の瞬間、続いた言葉に要は凍りついた。「博正だ!博正がやられた!」

「ええ?!」

そこに居る全員が叫ぶ。

…そうか、多くが妙さんの真を切るような投票をしたから、こうなるか…!

要は、博正に護衛を入れていなかった自分を恨みながら、二階へと階段を駆け下りて行った。


二階では、博正の部屋の前で、真司がこちらを見ていた。

「…まさかこんな思い切ったことをして来るとは思わなかった。」真司は、悔しそうにしている。「狼が仲間を切り捨てて占い師を消しに掛かるターンじゃないと思ってしまっていた。」

要は、青い顔で頷く。

何しろこれでは、妙が吊られるのが目に見えているからだ。

それとも、妙は狂信者で狼はそこを切って来たのだろうか。

脇を見ると、妙が震えながら皆に遠巻きにされてそこに立っていた。

「…妙さん。」

要が言うと、妙は震える声で言った。

「こんなの…こんなのおかしい!私が真なのよ!なのに、どうして博正さんなの?!みんなが言うように、博正さんも真だったってこと?」と、真由を見た。「…真由さんが、狼だったわ。なのに誰も信じてくれないの!」

真由が狼…。

真司は、言った。

「莉子さんは白だった。狐なのか村人なのかは分からない。だから縄の余裕はあと一本だと思って進めた方がいい。」

彰とステファンが、博正の部屋から出て来た。

「博正は間違いなく襲撃されている。こうなって来ると、思考を更新せざるを得ないか。」

ステファンが、頷いた。

「そうだな。わざわざ博正を襲撃して来たということは、狼は妙さんを切って来たということになる。妙さん目線では、博正が相方か、狂信者だったということになるのだろう。」

倫子が言った。

「でも、まだ妙さん偽を決め打つのは早くない?仮に博正さんが狂信者だったら、その白先を白くしようと噛んだのかも知れないわ。」

彰は、頷いた。

「私もそのように。だが、博正が襲撃されている以上、妙さんを残せないのだ。妙さんが私を占っていたら、まだ真感情かとも思えたのだがね…何しろ、私は強く妙さん真を推していたし、真ならばそれが逆に怪しく映るかと思った。なので、それらしいことを言ってとりあえず占わせて色を出させようと思っていた。が、占ったのは真由さんだった。単にスキルの問題かも知れないし、私個人的にはまだ妙さん真も追っているが、この状況ではな。皆の感情が難しい。」

彰は、別に妙を真と決め打っていたわけではなかったのだ。

ステファンが、苦笑した。

「なんだ、私は君と意見が合うと思っていたのに。単に筋道の一つなのか。」

彰は、頷く。

「博正の真もあると思っていた。ああしておけば、博正を噛まないだろうと思ったが、思った以上に博正真の状況になって、狼を追い詰めたのかも知れないな。まあ、しかしまだ分からない。状況は変わったが、妙さんを貶めようと狼が狂信者を噛んで来ている可能性も充分ある。後は真由さんの精査ではないか?狩人は3人共に無事だ。今日は妙さんを残して、真由さんから吊って真司に色を見させる手もあるとは思うがね。」

真由が、言った。

「そんな!私は村人なのに、吊られなきゃいけないって言うの?!偽物に黒を打たれたから?」

真司が、息をついた。

「まあ、それでも良い。が、オレが明日生き残れるかどうかだ。というのも、狩人は3人居てそれらでオレの護衛を回して受け持ってくれている。誰が偽なのか分からないが、連続護衛ができないので昨日守ってくれた狩人にはもう指定できない。つまり、今夜は健か陽介に守ってもらうわけなんだが、どっちが真なのかまだ分かっていないだろう。両方真なら良いが、そうでなかった場合、どちらを選ぶのかでもしかしたらオレが襲撃される未来があるかもしれない。」

要は、ハッとした。

そうだ、真狩人が誰か、未だに分からないのだ。

彰のことは信じたいが、昨日真司を守ってしまっているので今夜は彰は関係ない。

陽介か、健の二択を外したらヤバいことになりそうだった。

「…それは、後で。」要は、内心焦りながらも言った。「いつものように7時半に、リビングで。」

全員が、バラバラに頷く。

妙はまだ震えていたが、皆それを気遣う余裕もない。

ステファンが、そんな妙に声を掛けた。

「お嬢さん、何も君が偽だと決めてるわけじゃない。真なら自信を持つのだ。博正が狂信者という可能性だってまだあるだろう。大丈夫、落ち着いて話せば良いのだ。」

妙は、ステファンを見て少し、肩の力を抜いて、頷いた。

要はそれを横目に、三階へと戻ったのだった。


朝食など喉を通らなかった。

彰がまた冷蔵庫の中にある重箱を見つけてそれに印を付けていたが、そんなものも気にならないほど要は護衛のことで頭がいっぱいだった。

二択をミスったら、真司の命はないのだ。

そんな中、健が要に近付いて来て、言った。

「要、オレが守る。」え、と要が健を見ると、健は続けた。「破綻したから信じられないのは分かる。でも、オレが守るから。オレが真なんだよ。」

同じテーブルに居る、陽介がそんな健を見つめている。

要は、言った。

「…正直、博正が襲撃されて恐らく真だろうと思われる今、どうしたら良いのか分からないんだ。何しろ、博正が真なら正希が呪殺の可能性が高いだろ?妙さんが博正と違った結果を出してる以上、この二人は敵対陣営だ。でも、博正真なら陽介で白が出てるし…今のところ、陽介の方が良いように思い始めてて。靖が偽物だったら君の白は確定しないからね。」

健は、言った。

「博正真でも陽介白なら狂信者かも知れないじゃないか。もう一人が誰だか分からないから比較のしようがないけど、少なくともオレはオレの真を知ってるから。オレに守らせて欲しい。それは、陽介も真なら問題ないけど…。」

倫子が、言った。

「…こう言ったらなんだけど、強く守らせて欲しいっていうのがなんか、人外だから真司さんをどうしても噛みたいって感じに見えるのよね。もし狂信者なら、狼を守って自分が吊られることにメリットがあるもの。一度破綻してるのよ?信じるのは難しいわ。」

要は、ため息をついた。

「…とにかく、オレが決めるよ。真司さんとも相談して。だから、狩人達はその決定を待って欲しい。忠司さんが襲撃されて健の信用は狩人達の中でも最下位だから。よく考えさせて。」

健は、仕方なく頷く。

破綻したのは確かなのだし、これ以上は言えないのだろう。

しかし博正が言っていたように、靖が真で相方であったなら、健は偽なら狂信者でしかなく、陽介も同じだ。

狐の可能性は彰だけになるが、その彰も博正から白を出されている。

つまりは、もしかしたら狩人には狂信者が出ているのではないか。

こんな風に噛まずに残して、狐が出ていると思わせておいて利用しようとしているのでは…。

要の頭の中は、もうわけが分からなくなっていた。

…せめて誰か一人でも真だと決め打てれば…。

要は、苦悩していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ