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関係性

彰が、口を開いた。

「…ステファンも一緒か。」

ステファンは、頷いた。

「君に話をと部屋を出たら、要がちょうど来たのだ。一緒でも良いと言うので。」

彰は、怪訝な顔をした。

「…博正は?」

ステファンは、苦笑した。

「部屋の中に居る。いくら私達でも、廊下に立って中の音を聞き取る事はできても、部屋の中に居て廊下を挟んで向かい側の部屋の中の声までは聴こえない。ここは完全防音なのだからな。とはいえ、壁を通した隣りならば、壁に寄り添えば聴こえるがね。」

つまり、ステファンの部屋から彰の部屋の会話は聴こえるということだ。

彰は、息をついた。

「…こちらで話した事は筒抜けか。」

ステファンは、首を振った。

「いいや。誰か来たということは分かるが、ヒソヒソと話していたら聞き取れない。なので、昨日要が君の所に来たのは知っているが、その中身までは聞き取れていない。まあつまりは、一昨日要が来ていたのも知っているということだ。」

…なら、狩人に護衛指定していると1日目の夜から知っていたということか。

何しろ、護衛指定を誤魔化すために個人の部屋を全部回り出したのは、昨日からなのだ。

「それは…博正も知ってると思いますか?」

要が不安げに言うと、ステファンは首を振った。

「いいや。その時博正はどこかに行っていて部屋には居なかった。部屋を出て階段を上がって行ったのは気配で知っていたが、戻って来た気配を感じない間に君が来たからな。君が帰ってしばらくして、扉の音がして博正が戻ったのだと知った。なので、初日のことは博正は知らないだろう。君達は博正を疑っているのかね?」

彰は頷いたが、要は首を振った。

「まだ分かりません。彰さんの言う事は分かるんですけど、狼が博正を貶めようとわざと噛まなかったとも考えられると思って。オレはまだフラットに見てます。」

ステファンは、息を付いた。

「そうだな、まだ君目線ではあんな風でも健と陽介が真狩人で、彰が狂信者という事も考えられる。彰があんな風に博正を貶める事で、逆にそう意図して噛まなかったのではと考えてもおかしくはない。」

彰は、言った。

「…あなたは1日目から私が狩人に出ている事を知っていたのだな。」

ステファンは、頷く。

「その通りだ。だが、単に私が耳が良いだけで得た情報だったし、それは知らない前提で話をしていたつもりだ。知っている人数が多いほど漏れる可能性が高まるだろう?私は知らないのだと自分に言い聞かせ…」と、そこで声を落とした。「…博正が出て来たようだ。廊下に居る。」

要は、思わず息を詰めた。

…何も聴こえない。

要は、なぜかドキドキして来る胸を抑えて、黙っていた。

そのうちに、ステファンは言った。

「…階段を降りて行った。」と、続けた。「だから呼吸まで止める事はないのだ。いくら我々でも呼吸音は扉に貼り付かないと聴こえない。そんなことをしたら怪し過ぎるだろう。そもそも、博正は敵ではないかも知れないのだからな。」

要は、ホッと息を吐いた。

「…そうなんですけど、聴こえると思うと構えてしまって。」と、彰を見た。「もうバレてるから言いますけど、彰さんは今夜はオレを守ってください。」

彰は、頷きながらもステファンをじっと見て言った。

「…あなたは本当に村人なのか。知っていたらいくらでも私を噛めただろうに、昨夜は忠司だったし。」

ステファンは、頷いた。

「私は村人だが、君は本当に狩人なのか?まあ、現状信じてはいる。君が狼陣営で司令塔なら私が一番面倒だと知っているのだから、真っ先に襲撃しただろう。君が言うように、昨夜とかな。私はどう考えても護衛が入る位置ではないし、要とそんなに頻繁に接していないので共有者でもないと君になら透けているだろう。私の考えでは、共有者はもう居ない。」

要が驚いた顔をする。

彰は、眉を寄せて言った。

「…私もそのように。要を見ていたら、共有者の位置は自ずと透けて来ていた。初日に投票指定されたので違ったかと思ったが、昨夜占い師や陽介ではなく白くなったとはいえグレーの忠司に護衛を入れていたと聞いた時、やはり忠司が相方だったかと思っていた。要は隠したいようだったので、口には出さなかったがな。」

彰とステファンには、透けていたのだ。

要は、自分が忠司にばかり話を振っていたから、と後悔した。

もしかしたら、狼にも透けていて、だからこそ襲撃されたのかも知れないからだ。

「…それでも、ステファンを白置きできない。」彰とステファンが要を見ると、要は続けた。「だって忠司さんが襲撃されているから。知ってた人は怪しく見えます。」

彰が、言った。

「だが、知っていたら忠司にも護衛が入っている可能性があるので、尚更昨夜は私を噛む方が良かったのだよ、要。私目線でだがな。現に君は健に忠司を護衛させていただろう。そんな危ない場所は襲撃しないと私は思う。なので現状、私はステファンは白いと思っている。」

ステファンは、頷いた。

「私も同感だ。誰かが私と彰を対立させて、縄消費させようとしているように見えて来ているのだ。もちろん、今の時点でだがね。私達は各々自分が村人前提で話しているからそう見えるが、君からしたらわからないのは理解出来る。」

ステファンと彰は、忠司が共有者だと気取っていた。

ステファンは彰を狩人の一人だと最初から分かっていた。

この事実は要の頭を更に混乱させた。

…誰を信じたら良いんだよ。

要は、もう分からなくなって、彰とステファンをその場に置いて、彰の部屋を出た。

真司に相談したくてたまらなかった。


一刻も早く真司と話がしたかったが、彰と話してからすぐに真司の所へ行くと、いくらなんでも何かあると博正が狼だった時に気取られる。

何しろ、要とステファンが彰を訪ねたのは、部屋の中に居た博正には聴こえていたはずだからだ。

なので、グッと我慢して健の部屋や、倫子の部屋を訪ねて歩いた。

健には決めた通りに発言力のある、彰がそろそろ危ないからと理由を付けて、彰護衛を伝えた。

健は、今夜こそきちんと守ると約束し、要は頷きながらももう、あまり健は信じていなかった。

倫子の部屋を訪ねると、そこには洋子も居て、椅子に座ってお菓子を食べながら、話しているところだった。

「あれ。要、どうしたの?私の話を聞きに来た?」

倫子が言う。

要は、頷いて言った。

「そう。またみんなに話を聞いて回ってるんだ。倫子はどう?どこか怪しい位置は見つかった?」

倫子は、洋子と顔をみあわせながら、答えた。

「…今洋子とも話してたんだけど、久美子さんが怪しくなったよね。昨日までは黙り気味だったのに、今日は積極的だわ。敦さんのことをめっちゃ吊りたいみたいだし。だから敦さんの意見に共感しちゃって敦さんを吊って良いのかなって話してた。でもまあ、明日敦さんの色は絶対分かるはずだから、白だったら靖さん偽で久美子さんを囲ってたって思うかなって今話してたとこ。それ以外はあんまりわからないよね。怖いのは彰さんとステファンさんだけど。」

要は、顔をしかめた。

「それはなぜ?」

洋子が、答えた。

「だってめっちゃ見えてそうなのに、あんまり話さないじゃない。特にステファンさんの方。思ってる事があるならもっと話してほしいなって思ってたところよ。このままじゃ色が見えないから、吊りたくなっちゃうわ。占い師の真贋がついてからになるだろうけどね。」

要は、顔をしかめた。

確かにステファンは、黙り過ぎているように思う。

個人的に話を聞きに行けば話してくれるが、会議の時に割り込む事は基本的になかった。

唯一昨日、自分から話したのは陽介に噛まれ懸念がないということ。

それがあったので博正は陽介を疑うことになり、そこを占うと主張した。

結局、呪殺は出ずに陽介は白。

しかし博正が偽物ならば、その情報は当てにならなかった。

「…わからないよね。オレ、今からリビングに行こうと思うんだけど、姉ちゃん達はどうする?疑問に思ってるならみんなと話した方が良いんじゃない?」

洋子は、頷いた。

「そうね。何人居るかわからないけど、明日からのために話を聞いて来るかな。」

倫子も、頷いて立ち上がった。

「そうしよう。彰さんとステファンさんの話が聞けるかも知れないよ。」

2人はまだ部屋に居るかも。

要は思ったが、頷いて倫子と洋子と共に、一階へと降りて行ったのだった。

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