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3日目の朝の会議

朝食はほとんど食べられなかった。

今キッチンにはほとんど全員が居て、大きなダイニングテーブルの椅子に座ってパンやらおにぎりやらを食べている。

彰が冷蔵庫を開けて、そこに見慣れない使い捨てではない重箱のようなお弁当を複数見つけて何やら興奮していたが、そんなことはどうでも良かった。

頭の中は、忠司を失った事でいっぱいだったのだ。

無理やりパンをペットボトルのお茶で流し込んでいると、博正が言った。

「要?大丈夫か、顔色が悪い。」

要は、博正の後ろで彰が見つけた弁当箱に名前を書いた紙を貼り付けて、他に取られない対策を打っているを見ながら、言った。

「…なんで忠司さんだったのかって。もちろん、白くなってたから警戒してた。昨日は、健の部屋を訪ねて護衛先を言った時に、陽介は守らないのかと聞かれたんだ。真狩人なら噛まれるだろうし、それを見極めたいって、納得させたつもりだった。それなのに、今朝になって陽介を守ったなんて。どう考えても許せる事じゃない。真だとは思えない。」

彰が、冷蔵庫の扉を閉じて、振り返った。

「私もそのように。今朝忠司が襲撃されていたと知って、慌てて陽介を守ったと言った気がした。健が偽物だとしたら、君に昨日そんな風に言ったのも、もしもの時を考えて、もしかしたら別を守ったと言っても怪しまれないようにという気持ちも透けて見える。偽物は保険をかける事が多い。例えば、占い師なら絶対に呪殺が出ない事を知っていて噛み合わせられるかもしれないとか、言い訳じみた事を言い出したりな。」

要は、え、と博正を見た。

博正はむっつりと彰を見た。

「なんでぇ、オレを疑ってるのか。」

彰は、答えた。

「私は起こった事実から言っているのだ。君は陽介でさも呪殺が出るような事を言っていた。が、結局陽介は生きていて白結果、そして襲撃は陽介どころか君にさえ入らず忠司だ。さっきも言ったが、忠司は昨日急いで噛まねばならない位置ではなかった。もし私が狼ならば、博正の真が確定しようと噛み合わせなど遠回りなことはせず、博正を噛んだ。なぜなら陽介で呪殺が起こって真確したら、真司よりも優先的に守られて噛む機会がなくなるからだ。しかし狼は、陽介すら噛まずに忠司を選んだ。その事から、私は博正が狼で、狩人に狐が出ていると知っていて、その筆頭位置である陽介は襲撃できないと思ったのではと考えた。なので陽介を噛まずに、村に白置きされていた忠司を選んだのではないかと思う。」

要は、それを聞いて手を止めた。

「…でも、だったら自分が占うとか言ったらまずくないですか。しかも今朝、博正は陽介に白を出したんです。狐だと思っているのなら、黒を打たないと吊れなくなるでしょう。」

彰は、答えた。

「朝、明らかに君の様子がおかしかった。」要は、驚いた顔をする。彰は続けた。「何か不測の事態が起こったのだと誰でも気取る。仮にそれが狩人の破綻であった場合、その張本人が陽介ではなく他の狩人だったら、黒打ちしてしまうと自分も道連れになる可能性がある。白と言っておけば、まだ狂信者の可能性も追わせる事ができるし破綻が陽介でも自分は破綻しない。だから私は、博正が怪しいと思っている。」

博正は、彰を睨んだ。

「オレが狼なら、そもそも陽介を占いたいとは言わなかった。狐が狩人に出ていると知っているなら尚更だ。理由を付けて、他の真らしい占い師に占わせて、今お前が言ったようにその占い師を噛んだよ。そうか、お前は狂信者なんだな?やっぱり狩人には狐が出てるんだ。今言ったことは、そのままお前が考えたことなんじゃないのか。忠司なら噛めると思って忠司を噛んだ。健は本当に陽介を守ってしまった真狩人かもしれねぇ。それとも狐なのか。陽介を噛まなかったのは、真でもどうせ怪しまれて吊られるし、狐ならオレに呪殺されると思ったからなんじゃないのか。」

それはない。

要は、心の中で思った。

何しろ狩人に狐が出ているのなら彰は狂信者ではないからだ。

博正が彰に白を見ている以上、彰は博正目線狐では有りえないのだ。

だが、博正は彰が狩人に出ている事を知らない。

こうなって来ると、博正が偽物ならば彰が狐という事も考えられるようになって来た。

狐なら、狼を警戒して吊りに行くはずだし、村人と同じような動きをするはずだ。

要は、頭を抱えたい気分だった。

キッチンに居る、皆が息を飲んでそんなやり取りを聞いている。

要は、ペットボトルの蓋を閉めた。

「…そろそろ時間だ。リビングの椅子に行こう。続きは、会議で話そう。」

忠司が居てくれたら。

要は思いながら、動き出す皆を後目に先にリビングへと出て行ったのだった。


キッチンに居なかった数人とも合流し、皆が椅子に座ったのを見て、要は言った。

「…昨日は忠司さんが襲撃された。護衛指定は陽介がオレ、健が忠司さん、残りの一人には真司。占い結果は妙さん忠司さん白、博正陽介白、靖敦黒、正希姉ちゃん白。霊媒結果、早希さん白。靖の白先の健が狩人で指定を無視して陽介を守ったと主張している。皆の意見を聞こう。」

靖が、真っ先に言った。

「オレからしたら、オレが真だから敦に黒を出すのが昨夜から分かっていて、オレを嵌めるためにわざと狂信者である健の護衛先を選んで噛んで来たと思ってる!」皆がハッとした顔をした。確かにその可能性はある。靖は続けた。「だから今日は敦を吊って欲しい!明日確実に真司さんが生き残るんだから、色が見られるじゃないか!オレ目線じゃ健は狂信者でしかないから、分かってる狼から吊りたい!真司さんが明日証明してくれるはずだ!」

健は、言った。

「オレは狂信者じゃない!ほんとに昨日は陽介で護衛成功が出ると思った!もし今朝それでも陽介が襲撃されてたら、博正の呪殺が確定できるし噛み合わせられても大丈夫だと思ったんだ!だから陽介を護衛したのに…まさか忠司さんが襲撃されるとは思ってもみなくて!」

健が真だとしたら意図した事は分かる。

が、それなら何のための護衛指定をなのかと言うのだ。

「…言いたい事は分かるけど、狩人は3人なんだよ。騙りが出ているのに、どうしても陽介が守りたかったなら、その理由を今みたいに話してオレを説得してからにしてほしかった。でないと、今こうなったからと言われても、後付けの言い訳にしか聴こえない。でも、靖の主張は分かる。狂信者なら、狼は切り捨て時かも知れない。真の靖に1指定された敦が狼なら、確実に黒が出るのが分かっているから、遠回しに破綻させようとこんな事をしているのかも知れない。それは、確かにそうかも知れないと思う。」

倫子が言った。

「でも、それなら靖さんを噛めば良かったんじゃない?だって、狼が狩人に狐が出ていると思っているのなら、呪殺が出るかも知れないから、博正さんには護衛が入ってるかも知れないと噛めないかもだけど、靖さんなら確実に噛めたわ。そしたら結果も落ちなかった。わざわざ狂信者を破綻させてまで疑わせるなんて、遠回し過ぎない?」

久美子が言った。

「でも、襲撃だったら縄を消費できないわ。靖さんと健さんで縄を使わせようとか考えていたのかも知れない。だって、もう余裕はなくなって来てるんでしょう?」

縄消費か…。

要は、考え込んだ。

沈黙が訪れるのに、ステファンは口を開いた。

「状況を整理しよう。」と、皆の視線を受けて、続けた。「占い師は4人出ていて二人が人外。霊媒師は1人襲撃されて1人生存。狩人は3人出ていて1人が人外。つまり役職には内訳は分からないが3人の人外が出ている。なのでグレーには人外がまだ3人残っていると思われる。次に、占い師一人一人の白先を見てみよう。妙さんは私、倫子さん、忠彦に白で彼女単体のグレーは今、彰、敦、真由さん、久美子さん、洋子さん、莉子さんの6人。その中に残りの人外が居る事になる。次に博正。博正の白先は彰、真由さん、陽介でグレーは私、倫子さん、敦、久美子さん、洋子さん、莉子さんの6人でこの中に3人外。靖の白先は久美子さん、健で敦に黒。ここで一人外。そしてグレーが彰、私、倫子さん、真由さん、洋子さん、莉子さんの6人でこの中に2人外。最後に正希の白先は莉子さん、浩平、洋子さんでグレーは彰、私、倫子さん、敦、真由さん、久美子さんの6人でこの中に3人外だ。その中で、先ほどのキッチンでの会話を鑑みるに、彰は博正を疑い、博正は彰を狂信者ではないかと発言している。靖は敦に黒を見て、護衛破綻をした健を狂信者だと言っている。靖が噛まれなかったのはなぜかと妙さんの白先の倫子さんは問題提起し、靖の白先の久美子さんがそれに縄消費のためではないかと発言している。今16人、吊り縄は残り7。真司は恐らく明日も生き残り、露出していないもう一人の狩人が昨日真司を守っていることから、そこが今夜襲撃されない限り明後日も生き残るが、恐らく明々後日は分からないだろう。残り確定で吊った色を見られるのは2回。誰を吊るのが良いと思う?」

要は、綺麗にまとめられたその意見を聞いて、考えた。

あと2回、効率的に情報を落とすにはどこを吊れば良いのか。

全員が黙って考え込む中で、暖炉の上の金時計は静かにくるくると回っていた。

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