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2日目投票

結局、洋子は置き去りのまま、早希は狼なら身内切りする、敦は狼に入れている、という白アピを延々聞かされる事になった。

聞いているうちに、結局両方共狼なのではないかと思えて来た。

というのも、狼の中では恐らく全く同じ行動はしていなくて、必ず分かれているだろうからだ。

積極的に話す人、寡黙な人、わからないと言い戸惑った風を装う人など必ず役割は振り分けられているだろう。

そうなると、洋子も村人からは怪しくなって来るようで、要目線では恐らく村人だろうと思えても、司令塔がそう指示していたらと考えてしまう。

そんな意見も出て来るようになって、10分前の放送が始まり、埒があかないと彰が見かねて言った。

「…ここはもう、とりあえずあちこち怪しんでも仕方ないので、裏を読むのではなくストレートに自分が今怪しいと感じる所に入れてはどうだろう。どうせ明日にはそこに色が付く。間違えても大事にはならない縄数だ。だからみんな、迷うなら最初に直感で怪しんだ所に入れてはどうだ?もう時間がない。あれこれ新しい事を話す時間はない。」

忠司も、頷いた。

「そうだ。」そこで、『5分前です』の放送が流れる。忠司は少し考えてから、続けた。「ここはもう、自分の感覚を信じるんだ。もう時間はない。腕輪を開け。それで落ち着いて入力するんだ。敦は5、洋子さんは12、早希さんは17。」また声が『3分前です』と言う。忠司は自分の腕輪を開く。「とにかく、入力できなければ投票放棄でルール違反になるんだから、それだけは避けないと。」

それがあった。

皆が思ったのか、急いで腕輪を開いた。

要は、まだ迷っていた。

「要?」洋子が、小声で言う。「どこに入れるの?同じ所に入れる。」

そうか、姉ちゃんはオレに合わせるって。

ギリギリまで迷おうと思っていた要は、眉を寄せた。

「…今日は自分で考えて。オレも迷ってるんだ。違っても責めたりしないから。」

洋子は、硬い表情で、頷く。

そのやり取りは皆が聞いていたので、恐らくその事で怪しまれる事はないだろう。

『投票1分前です。』

要は、額から汗が流れて来るのを感じた。

早希は昨日雄吾を庇った。敦は雄吾に入れている。洋子は…今のところ白い。

『投票してください。』

全員が、一斉に入力を始める。

早々と『投票を受け付けました』という声が聴こえ始めて、要は焦ってキーを押した。

間違えてもまだ大丈夫…!

要は、思っていた。

『投票が終了しました。結果を表示します。』


1  神原 彰→5

2  多田 勝喜→5

3  牧野 妙→17

4  安村 倫子→17

5  郷田 敦→17

6  増田 真由→17

7  大井 真司→5

8  田代 博正→17

9  藤井 健→17

10 田辺 靖→17

11 塚本 久美子→17

12 立原 洋子→5

13 岡田 忠司→5

14 立原 要→5

15 青木 陽介→5

17 吉田 早希→5

19 田村 正希→17

20 志田 莉子→17


まためっちゃ割れてる…!

要は、それを見て思った。

パッと見ではどっちになったか分からない。

どちらにしろ、洋子には一票も入っていなかった。

『No.17は追放されます。』

「え、嘘!」

早希が、びっくりして立ち上がる。

よくよく数えてみると、早希には10票、敦には8票入っていた。

完全に割れているのだ。

…昨日もこうだった…もしかしたら人狼が吊れた…?

要が思っていると、早希は皆に必死に訴えた。

「私は村人!村人なの!縄を使っちゃって、明日後悔する…、」

そこで、早希はガクンと椅子の背へと倒れた。

目は見開いたまま、天井を向いていたが何も映していないのはひと目で分かった。

『No.17は追放されました。夜時間に備えてください。』

声は、無遠慮にブツリと切れた。

彰が、長いため息を付いた。

「…恐らく浩平や雄吾と同じだろう。どうやってるのか知らないが、恐らくこれ。」と、腕輪が巻かれた腕を上げた。「これが何かやっているんだ。それしか考えられない。つまり、私達はここを抜け出せたとしても、逃れる事はできないのだ。勝って帰れる事を信じて、ゲームを続けるしかない。」

要も、それには気付いていた。

何か飛んで来るわけでもなく、いきなりにこんな事になるのは、遠隔で腕輪に仕込まれた何かが体に投与されるからなのだろう。

呆然とする皆に、忠司が言った。

「じゃあ、早希さんが人外だった事を祈って部屋に運んで来よう。占い師達は、要から占い先を聞かなければならないだろう?その他の人は、手伝ってくれないか。」

それを聞いて健と靖が早希を運ぼうとすると、陽介がその手を掴んだ。

「オレが運ぶ。」と、早希を抱き上げた。「軽いから。早希さんに投票した人には触らせたくない。」

そんなことを言うのに驚いて陽介の顔を見ると、陽介の目は真っ赤になっていて、涙を堪えているようだった。

何も言えずにそれを見送る皆の前を、陽介は一人で早希を抱いて歩いて行ったのだった。


要は、気を取り直して言った。

「じゃあ、生き残った完全グレーは3人。敦、姉ちゃん、忠司さんだ。この3人を…まず、妙さんは敦、博正は姉ちゃん、靖は忠司さんで。正希だけ決まってないけど、自分のグレーで占いたい所はある?」

正希は、頷いた。

「真由さん。」え、と真由が驚いた顔をすると、正希は続けた。「みんなに怪しまれてたじゃないか。だから、白なら博正が限りなく相方かなと思うし、黒なら博正はみんなに真っぽく見られてたけど、オレ目線じゃ偽物だ。それが分かるから。」

ステファンが言う。

「それでも良いが、他の占い師と不公平ではないか?この際皆でクジでも引いたらどうだ。それとも、完全グレーから占いたい位置を決めさせるとか。」

真司が言う。

「確かにそうかも知れないな。正希にだけ決めさせるのは少し面倒が起こるかも知れない。どうする?」

要は、うーんと皆を見た。

「…どこか占ってほしいと思う白先ある?」

みんな、顔を見合わせている。

彰が、言った。

「皆が、真由さん白という結果だけで博正を疑うのなら、とりあえず真由さんを占うという事にしても良いと思う。が、誰にどこを占わせるかだ。敦、洋子さん、忠司、真由さんは確定として、占い師達に意見を聞こうか。その上で要が決めたら良いだろう。」

博正が、言った。

「ちょっと待て、だったら陽介から占うのはどうだ?」皆が、え、と博正を見る。博正は続けた。「オレからしたら真由さんは白だし、別に占ってくれても良いが騙りが縄消費に使おうとし始めたら厄介だ。それより占われたくなさそうな動きをしている陽介を入れて、そこを占わせてくれ。狩人は3人なんだろう。他は誰なのか知らねぇが、色が付いてたりついてなかったとしても今日色が付くんだろ?陽介だけ残して良いのか。あいつは一生占われない事になるし、狩人決め打ちの時に役に立つんじゃねぇのか。」

博正は、呪殺を出したいのか。

要は、思った。

確かにそうなれば、こちらは真確定して助かる。

彰が、言った。

「…ということは、博正が狐を疑っているというのは狩人なのか?狩人に狐が出ていると?」

この会話をしたら、彰なら気取るだろう。

博正は頷いた。

「そうだ。お前は間違ってないと思う。なぜなら合理的なステファンが、わざわざ陽介のことを噛まれ懸念がないと言及した。これだけ議論が進んでも黙ってる奴が、あの時それだけを落としたんだ。ってことは、ステファンが狼で、狩人に狐が出ているのを知っていて、皆に怪しまれるように持って行こうとしてるんじゃないかとオレは思った。だから、要と真司にそれを言ったんだよ。」

ステファンは、軽く眉を上げたが特に焦る様子もなく、逆に面白がっているような顔をした。

彰が、軽くステファンを睨んでから、博正を見た。

「…そうか。だったら、陽介を入れて良いのかもしれないな。だが、狼がそれを気取っているのなら、君は今夜襲撃されるかもしれないぞ。真司からは護衛は外せないだろう。もう片方を君に割くかどうかは分からない。それでも君は陽介を占いたいか?」

博正は、頷いた。

「もちろん、オレの予想が外れてるかもしれねぇがな。やってみる価値はある。」

要は、息をついた。

「…じゃあ、占い先を選ぶのに時間を割くのもなんだし、博正は陽介を占ってくれ。で、残りは完全グレーの敦と姉ちゃんと忠司さんだけど、残りの三人はどこか占いたいとかあるか?」

正希が、言った。

「じゃあ、オレは…そうだな、どこでもいいけど。」

靖は、言った。

「オレもどこでもいいけど、できたらそろそろ黒を見たいなと思ってる。でも、もう囲われてるかもしれないしなあ…じゃあ今夜決戦に上がって生き残ったし、敦にしようかな。」

正希は、妙を見た。

「妙さんは?」

妙は、答えた。

「呪殺が出せそうな所がいいって思ってたの。雄吾さんは黒だったから、忠司さんが白だって言われてるんだけど、狐からしても狼は敵だし、狐はあるかもしれないなって思ってた。だから、忠司さんにしたい。正希さんは、洋子さんでいい?」

正希は、頷く。

「洋子さんは要に丸投げだから気になってはいたし、じゃあそこを占うよ。」

要は、頷く。

「じゃあそれで。博正は陽介、靖は敦、妙さんは忠司さん、正希は姉ちゃん。」

しかし、それを聞いていた倫子が言った。

「でも…博正さんが言う通りに狩人に狐が出てて、それが陽介さんだったとしたら、多分襲撃先もそこになるんじゃない?つまり、呪殺が確定しないってこと。仮に博正さんが偽で狼陣営だったとしても、そうやってお茶を濁したりしそうじゃない。どうするの?」

要は、顔をしかめた。

「まあ、そこは護衛先をどうにかして考える事にするよ。陽介を守らせるかもしれないし、もうそれはそれ。こっちに任せてくれ。」

護衛位置はさっき決めた通りに固定だけどね。

要は思いながらも、そう答えた。

2日目の投票は、そうやって終わったのだった。

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