2日目夕方の会議
「…もう、そろそろみんな降りて来るだろうし、ソファでなくこっちに座ろう。話さないと。」
要が言うと、ソファに座りかけた彰が、立ち上がって頷いた。
「その通りだ。狐がどうの、私達は知らない事だが、博正は誰かをそう思ったという発言があったのか?」
要は、話し合うための椅子の方へと歩きながら、頷いた。
「はい。今は明かしませんが、それらしいことが。まだ分かりませんがね。今夜は、違う方向で占い師達には指定しようと思ってるし。」
彰は、椅子に座りながら言った。
「任せる。真司と話し合っていたのだろう。」
彰は、多分知っている。
要は、直感的にそう思った。
あの時、部屋の中に要と真司の他に、共有者の相方が居ただろうことを。
だが、敢えてそれは口にしないのだ。
それを悟った時に、要は彰がどこに居るのか分からない人外に、それが漏れないようにあの時、博正達を止めてくれたのだと一気に彰を白く感じた。
何しろ、人外ならば何の気無しについて来た風で、中に入って来れば良かったのだ。
あの時、外に居たのは彰、博正、ステファン、敦だった。
確かに、この中に人外は混じって居そうな雰囲気もした。
要は、ホワイトボードの横に立った。
すると倫子が、洋子と共に急いだように入って来た。
何やら、後ろを気にしている。
が、二人の後ろには誰も居なかった。
「倫子?姉ちゃん?まだそんなに急がなくても良いけど。」
しかし、倫子が声を抑え気味にして言った。
「あのね、ここだけの話よ。早希さんがね、なんか知らないけど、陽介さんと一緒に雄吾さんの部屋から出て来るのを見ちゃったの。雄吾さんって死んでたよね?いえ、仮死状態だったっけ。」
え、と皆が驚いた顔をする。
彰が、言った。
「雄吾の部屋?私もステファンと今朝入った。」それこそ皆が仰天した顔をするが、彰は続けた。「浩平の様子が気になったからだ。だったら雄吾はどうなったと、見に行ったがもう雄吾はそこに居なかった。多分どこかに移されたのだろう。ちなみにさっきまた浩平を見て来たが、全く変わらなかった。硬直もないし紫斑もない。だから私達は彼は死んでいるように見えているだけなのだろうと結論付けた。」
倫子が、明るい顔をした。
「じゃあ、やっぱり勝ったら復活するかも!」
要が言った。
「そういう事ではないだろ。それよりなんでその空の部屋から二人が出て来たのかってことだ。」
博正が、行った。
「…誰も入って来ねぇから、そこでしっぽりやってたとか?」
忠司が、顔をしかめる。
「君じゃあるまいに。誰も来ないから何かを話し合っていたのかも知れない。自分の部屋だとノックも聴こえないから、いきなり扉を開けられるかも知れない。だから雄吾の部屋で話したのかも。」
ということは、あの二人は人狼…?それとも狂信者と人狼か?
皆が深刻な顔をしていると、リビングの扉が開いた。
ビクッとして振り返ると、そこには莉子が立っていて、驚いた顔をした。
「え?え?なに?あの、遅れた?…まだ5分前かと思ったんだけど。」
その後ろから、陽介が入って来る。
「もう始まってるのか?」
少し遅れて、早希もやって来た。
「…あれ。みんな早いね。早く座ろう。」
何やらおかしな空気だったので、三人は怪訝な顔をしながら椅子へと分かれて座った。
要が、言った。
「これで全員だ。夕方の会議を始める。ええっと、指定先は姉ちゃん、敦、早希さんの三人なんだけど、何か言いたい事はあるか?他の人でもいい。この三人のことで何か言いたい事があったら言ってくれ。」
すると、陽介が手を上げた。
「はい!話したい事がある!」
要は、今早希との密会の話を聞いたばかりなので顔をしかめそうになったが、言った。
「どうぞ。」
陽介は、言った。
「オレは早希ちゃんが白だと思う!最初は雄吾を庇ってたから怪しんでて、投票しようと思ってたんだ。でも、部屋が同じ三階だから廊下で会って、今さっきまで話を聞いてた。凄くよく考えてるし、オレの狩人目線の考えにも共感してくれた。オレの事を真だと思うって言ってくれるし、人狼だったらそんなこと言わないと思うんだ。だから白いと思ったんだ。みんなもゆっくり話を聞いたら分かるよ。もっと親身になって話を聞いてあげたら良いんだ。あ、そう言えばみんな、雄吾が部屋から居なくなってるの知ってるか?」
知ってる。
みんなは思ったが、要が辛抱強く答えた。
「それは彰さんから聞いたから知ってる。というか陽介はどうして知ってるんだ?」
陽介は、答えた。
「オレは部屋が隣りだから気になって。早希ちゃんと、そう言えば雄吾はどうなったって話になってね。早希ちゃんも隣りが浩平だから気になるって、ちょっと見たら浩平はまだ居た。」
部屋で話していたわけではないのか。
皆は思ったが、陽介の抽象的な早希の白置きといい、何やら怪しい。
陽介は確信を持って言っているのだろうが、こちらからしたら何やら余計に怪しく見えただけだった。
敦が、息をついた。
「なんだよ、仲良くなったから白いって言うのか。オレ達から見たらお前の狩人だって騙りかも知れないし、信じられないんだ。早希さんの、陽介真狩人だと思った根拠は?そこを聞かせて欲しい。指定に入って陽介の票を回収しようとしてそう言っただけに見える。」
早希は、言った。
「陽介さんはきちんと怪しんでいても話を聞いてくれたし、最後には分かってくれたわ!だから村人だって思った。村人ってことは騙りじゃないから真狩人でしょう?私はそう思ったからそう言ったの。それにね、さっきも言ったけど、私が狼なら分かってるんだから切るわ。投票してるわよ。だから、私は敦さんが怪しいと思うわ!洋子さんは敦さんを怪しんでいたから同じ考えだし今日は違うと思う。さっき、真司さんも初っ端に話していた事の弁明が、時系列が違うって言ってたじゃない。」
敦は、言った。
「だからオレは朝結果を聞いた時から、会議に出て来るまでに考えたんだって言ったじゃないか。君こそ陽介が役職持ちだと知って、抱き込もうとしてるように見えるぞ?」
同じ投票対象の洋子は、オロオロと二人の間に視線を言ったり来たりさせている。
なんのこっちゃ分かっていないのだろうなと要は思い、言った。
「…残った方は、必ず占い師に占ってもらうつもりだ。」二人は要を見た。要は続けた。「明日で完全グレーは全部消して、占い師とのラインを見ようと思ってて。今二人減って18人、明日は護衛成功しなければ16人。残り7縄で、今夜間違ってても6人外だからまだ一縄余裕がある。もちろん、護衛成功が出たら縄は8縄、もっと余裕が出て来るだろうから、それを目指すつもりではいる。明日は黒が出たらそこを吊るけど、状況次第ではわからない。みんな情報が少ない中で迷うと思うけど、昨日だって迷いながらも狼を吊れたんだ。今夜も自分を信じて、おかしいと思う方に投票して欲しい。両方白かも知れないし、両方人外かもしれない。とにかく詰めて行かないといけないんだ。」と、敦と早希を見た。「だから、感情的にならずに本当に村人なら自分の白い所を探してアピールして欲しい。村人だって、仲間を吊りたくないから。相手の黒い所を言うのも良いけど、冷静に。でないとわからないからより感情的になった方が怪しく見えて、間違って入れてしまうかも知れないんだよ。落ち着いて、とにかくまずは自分の白アピールをしてくれ。」
二人は、顔を赤くしながら言い合っていたが、それを聞いているうちに落ち着いた顔色になった。
要はため息をついて、二人の白アピールを聞くことにしたのだった。




