誰が
「オレは、夜に何もすることがないから、どこが怪しいかとか、今日はどんな進行になるのかとか考えていたんだ。」敦は、言った。「だから、今日はまたグレーから要が指定するだろうなって思ってて。昨日はみんなの意見を聞いてたけど、今日は占われなかったらしっかり発言しないといけないと思ってて、だから考えてたことを話した。それだけなのに、怪しまれるなんて心外だよ。オレから見たら、洋子さんは無知なふりしてオレに黒塗りして来てるように見えてるけどな。」
倫子は、言った。
「でも、今日の敦さんの発言って正希さんが襲撃先に白出してることと、博正さんが真由さんに白出してる事を怪しんでる内容だったよね。それなのに夜に考えて来たの?それってどこを占って何を言うのか分かってないとできないと思うけど。それに洋子はそんなに上手く嘘を付けないわ。ほんとに不器用な子だから。」
確かにそうだ。
要は思った。
敦は、答えた。
「洋子さんのことは知らない。でもだから、オレは昨日の夜考えてたことを合わせて今朝結果を知って、ここに集まるまでに考えた結果なんだよ。なのに印象悪いとかで片付けられたら困る。オレは雄吾に入れてるんだぞ?」
倫子は、首を傾げた。
「それはそうだけど、でも…昨日博正さんが真っぽいって言ってたよね。それなのに朝、真由さんに白を打ったから怪しんでるのに、昨日の夜と合わせてって?なんか…違和感感じるけど、私が間違ってる?」
真司が、首を振った。
「いや、間違ってない。時系列がおかしな感じだから、オレも耳障りのいいことを並べたように聴こえたな。間違ってるかも知れないが。」
敦は、真司を睨んだ。
「間違ってる。オレは本当にしっかり考えたんだ。昨日は博正が真っぽく見えてたけど、今朝印象が変わったんだから仕方がないだろ。あれから1時間あったんだから、考えをまとめる時間は充分だった。」
久美子が、言った。
「ねえ、早希さんの話も聞きたい。私はどっちかと言うと早希さんの方が怪しんでるの。少なくとも敦さんは雄吾さんに入れてるし、昨日は雄吾さんを庇ったりしてなかったわ。でも、早希さんは真司さんが言った通り庇ってるみたいだった。投票も忠司さんに入れてる。だから、そっちの話を聞いて考えたいの。」
要は頷いて、早希を見た。
「じゃあ早希さん。」
早希は、言った。
「私は村人よ!占ってもらったら分かるわ。昨日は雄吾さんを庇ったんじゃなくて、なんだか忠司さんの意見が強く感じたから、怖くなって誘導されてるみたいに思った。だから素直にそう言っただけよ。雄吾さんが明日はお前らだって言うし、それが響いて忠司さんに入れたけど、雄吾さんが狼だったなんて思わなかったの。だったら雄吾さんに入れていたわよ。知らなかったから忠司さんに入れてしまったの。昨日、私が狼ならそんな不用意に投票したり発言したりすると思う?霊媒師は二人居るし確定してるんだから、一人が噛まれても今日は確実に雄吾さんの色が分かった日だったわ。それが分かってるのに、雄吾さんに入れないなんて自殺行為よ。私はむしろ、昨日雄吾さんに入れてる人の方が怪しいと思う!先まで読んでて怪しまれないように行動しているはずだもの!」
それもそうなのだ。
要は、ため息をついた。
「…それもそうなんだよなあ…昨日吊られた人は、どんなに狼が頑張っても今朝確実に結果が落ちるのは狼目線分かってたことだったもの。初日の襲撃が失敗してるんだからね。もし仲間が吊られそうでも、庇える状況じゃなかった。次の日からの立場が変わるからね。」
彰が言う。
「個々のスキルの問題もあるし、そこは難しいかもな。それが分かっていた村人なのか、分かっていなかった狼なのか。まだ縄には余裕があるし、そこは村の判断に任せても良いかも知れない。」
要は、頷いた。
早希が分かっていなかった狼ならば、そんなことは考えずに庇ってしまい、夜時間に司令塔の狼にたしなめられて今の発言をしているのかも知れない。
分かっていた村人ならば、早希は今の発言通りにその時の印象で語っただけなのだろう。
その判断が、難しかった。
「…休憩を挟みます。」要は、言った。「吊り先は敦、姉ちゃん、早希さんで固定。そこから考えて投票って事で。夕方にもう一度全員の話を聞いてから、投票します。6時にここに集まってください。解散。」
皆が、息をついて足元のペットボトルを持ち、立ち上がって隣りの人と話したりし始める。
要は、敦と早希の間で揺れ動いていた。
昼ご飯を食べてから、要が一人ボーッと考えてリビングの窓から外を見つめていると、真司と博正がやって来た。
この二人はどうやら仲が良いらしいが、べったりという風でもない。
要がそれに気付いて振り返ると、真司が言った。
「要。ちょっと良いか?」
要は、頷いた。
「ええ。何かありました?」
真司は、博正と共にソファに座った。
「要は、狩人はどうするつもりだ?」
要は、驚いた顔をした。
「狩人は三人の内二人が真だからいつか決め打ちするつもり。まだ出してないから、いつか襲撃されるだろうし、黒打ちされるかも知れない。陽介が出ちゃって一人露出しましたしね。そこは相方と話し合って決めます。」
博正が、言った。
「それで良いだろうが、もし狩人に狼が出てたら生き残ろうと陽介がもし真狩人でも襲撃しねぇんじゃないかって。それに狂信者なら、真占い師が占っても白しか出ねぇ。」
要は、眉を寄せた。
「つまり、なに?」
博正は言った。
「つまり、全部出しちまって残りのグレーを占って詰めて、狩人は決め打ちしたらどうかって。」
要は、それを考えた。
確かに占い師目線では、余計な確定白を占って無駄にしたくないと考えるはずだ。
なので、博正の言うことは分かった。
「…考えたこともあるよ。でも、それをしたらオレも相方も真司も最後まで生き残れない。特に真司には生きてもらわないと。真司が生きていたら、偽の占い師は真結果しか出せないからね。村人に黒を打って次の日真司が生きていたら、即破綻だ。でも、偽は絶対にどこかに黒を打たないと占い結果だけで破綻する。そっちからも追い詰めたいと思ってるから。」
しかし真司は、言った。
「オレもそう思った。でも、もし狩人に狐が出ていたら?」
え、と要は目を丸くした。
「え、狐?」
真司は頷く。
「博正と話してたんだ。陽介だよ。ステファンが言ってただろう、噛まれ懸念がない。ああして出て来たが、本当に狩人ならば村が自分を失うのは危険なのは分かってるから、要が本当に自分から吊ろうとしていないのは分かったはずだ。なのに、あいつは指定の三人に入っただけですんなり出た。そこが違和感だったんだ。狩人だと知れたら、占い指定には入らない。それを見越して出たのかと考えた。襲撃されないから明日には怪しまれるだろうが、それでも仮に相方が占い師に出ていて、どこかに黒を打ったら有耶無耶にならないか?まあ、もしかしたらあんな感じの真かも知れないが、もし他の狩人の方が真っぽかったら、あいつを誰かに占わせても良いかも知れないぞ。」
要は、顔をしかめた。
「…三人居るけど、誰が真なのか今の時点じゃほんとに分からないんです。でも、それだと人狼は狩人に狐が出ているのを知ったって事ですよね。だって狂信者がここまで人狼に話し掛けてないはずないし、人狼からは狂信者が分かってるはずだ。狩人に同じ陣営から誰も出てないのに三人出ているから、一人は狐だって。」
博正が、ため息をついた。
「そう。だからオレは、やっぱ彰の奴が初日に言ったように、ステファンが怪しいかなと思い始めてる。オレがあいつが狐かもって思ったのは、ステファンが噛まれ懸念が無いって発言したからだからな。狼からは見えてたから、村にそれを知らせようとしたのかって思った。そこまで黙ってたのに、あの時発言しただろう?彰はステファンを合理的な奴だって言ってた。狩人のことは明日だって本人も分かってるのにわざわざそれを落としたんだ。オレはステファンを占わせて欲しいかな。」
要は、確かにそうだ、と思った。
必要なこと以外は発言しない感じのステファンが、あの時それを村に言ったのは、それが必要だからだろう。
仮に陽介が狐でなくてあんな真狩人であったとしても、あの時にそう落としておけば懸念は残る。
狩人に、狐が出ている可能性が。
「そういえば」要は、言った。「姉ちゃんが陽介が占い師の占い理由を聞きたがるのが占われたくないからに見えたって言ってた。あの時は、みんなにそれは必要な情報だからおかしな意見だって思ったけど、その視点から見たらその通りかもと思えて来たかも。」
博正は、頷いた。
「だろ?だからお前の姉ちゃんはオレからは白く見えてる。素直にそう思ったから言ってると思うし。」
狩人に狐…。
あり得ない事ではなかった。
一人は占い師に出ているのだろうと予測していたが、一人は囲われて潜伏していると考えるのが普通だからだ。
だが、よく考えたら役職に出たら、占われる事はない。
特にこの、狩人二人、霊媒師二人のレギュレーションならば、3COだと3分の2が真なので決め打ちを選ぶ方が多いだろう。
霊媒師は狂信者が出て来て4COになると、最悪結果を間違えてさっさと吊られてしまう。なぜなら、二人は必ず真結果を出し、狂信者もそれが分かっているので真結果しか言わず、分からない狐は間違う可能性が高いからだ。
だが、狩人ならばかなり生き残れそうだった。
もちろん、護衛指定先を襲撃されたら一貫の終わりなのだが。
要は、その可能性を考えて、ため息を付いたのだった。




