狩人
要が三人の内、誰から話を聞こうかと見比べていると、陽介が唇を震わせていたが、言った。
「…オレは、狩人なんだ!」え、と皆が目を丸くする。「狩人なんだよ!なのになんでオレを指定するんだ!おかしいよ!」
要は、心の中で舌打ちした。
確かに、陽介は狩人COしている。
話を聞いてみて、もし怪しまれるようなら庇って誘導して行くか、最悪狩人だと公表しようとは思っていた。
が、こんな風に最初から公表するつもりはなかったのだ。
彰が、眉を寄せて言った。
「…要?陽介の言っている事は本当か。それとも四人目か。」
要は、答えた。
「狩人だと聞いています。なので、オレが知っている三人のうちの一人です。」と、陽介を見た。「君が狩人だと知れたら噛まれると思って、どうしようもなくなるまで普通に扱うつもりだった。現にオレの相方も、他の狩人も普通に占い指定先に入れているし、吊り先指定にも入れるつもりだったよ。君が発言を頑張ればそのまま投票に入ればいいと思っていたし、駄目なら最悪狩人だと明かそうとは思っていたけど、最初に知らせるつもりはなかった。なんで出たんだって思ってるけど、もうどうしようもないよね。」
真司が、頷いた。
「そうだな。出たものは仕方がない。じゃあ早希さんと敦、それに洋子さんにするしかないか。そっちの三人の話を聞くか?」
要は、うーんと考えた。
「…姉ちゃんは、占い先にするつもりです。今夜は早希さんと敦の二択にしよう。残った方は当然占い先に指定しますけどね。」
彰が、言った。
「占い師が必ずしもそこを占うとは限らないぞ。というのも、占い師には狼の噛み合わせを避けるために二人ずつ指定するだろう。そうしたら、他の占い師の白先もそこに入って来る。そこが怪しいと思っていたら、占うだろう。そうしたら、明日は占い師の決め打ちになる。白黒になる所が出て来る可能性があるからな。明日洋子さんがグレーのままで残ったらどうするのだ。」
確かにそうか。
要は、洋子を見た。
その時、今日吊り指定に挙げられて生き残った人と、ただ生き残っただけの洋子だと、洋子の方が分が悪い気がする。
要は、ため息をついた。
「…確かにそうですね。きちんと意見を聞いて、村に決めてもらわなきゃいけません。」と、洋子を見た。「姉ちゃん、もし本当に村人なら頑張って思ってる事を話すんだ。今夜は三択、早希さん、敦、姉ちゃんだ。」
洋子は、一気に顔色を青くしたが、キッと口元を引き締めると、頷いた。
「分かった。」と、皆を見た。「私、ほんとに馬鹿だって言われるから、自分に自信がないけど、思った事を話します。」
皆が、頷く。
彰が言った。
「君は頭が悪いわけではないのだ。テストを見ていると、他と比べてかなり難問でも難なく解いていたりしている科目もあって、だができない科目がとことんできないと極端なだけで。恐らく興味がないものには全く頭を使いたくない方なのだろう。ようは、努力が苦手であるだけ。やる気になれば、要ほどではなくともそこそこできるはずだぞ。」
全くディスろうという意識は感じられなくて、洋子を元気付けようとしているらしい。
洋子は、顔を赤くして頷いた。
「はい。頑張ります。」と、続けた。「間違っててもとにかく聞いてください。まず、昨日はあんまり話してなかったのに、今日要が初っ端に白先を改めて言って、それについてどう思うって言われた時に、敦さんが真っ先に意見を言ってたのはなんでだろって思った。なんか準備してたみたいに思えて、でも占い結果なんか今朝まで分からなかったのに降りて来るまでに考えてたのか何なのか、とにかくそれを言わなきゃって感じに聴こえて、なんか怪しいなって思った。だからそれに対して倫子が反論した時に、内容は覚えてないけど反対意見言ってるなって思ったから私と同じように思えて白く見えた。だから久美子ちゃんも白く思った。」
言われてみたら、昨日はそこまで積極的に議論に参加してなかったのに、全体に何か意見はと聞いて、真っ先に敦というのは違和感あったかも知れない。
要は、洋子の変わった視点に少し共感した。
洋子は続けた。
「それから陽介さんは狩人だったけど、それまでは席が隣りだったからかもだけど、雄吾さんと仲が良かったから怪しんでた。占い師の占い理由を気にするのは普通なのかも知れないけど、私は知らないから、占い理由は何かって気にしてる所が占われたくないからなのかなって思った。指定に入った時に、どうやったら回避できるのか知りたいって思ってるのかなって。」
陽介がむっつりと言った。
「そりゃ狩人なんだから、占われるより他の色を知りたいからね。呪殺が出たらその占い師を守れるし。」
しかし真司が、言った。
「そろそろ騙りの黒が出て来る頃だし、君に黒を打ってくる人外が居たら、君視点ではその占い師は偽だと分かるだろう。要もその時になって初めて君の正体を知らせたいと思っていたはずだ。なのに、何も考えずに先に出てしまって、君視点では君が襲撃されたら残りは騙りの狩人と真狩人になるのだろう。それこそ真占い師の保護ができないかも知れないのだ。」
忠司が、言った。
「それはまた明日で良いだろう。明日襲撃されていなければ考えれば済む事だ。」と、陽介を見た。「君は今日出てしまった事で、命を縮めてしまったんだよ。恐らく要は今夜君には護衛は入れないだろう。なぜなら、どうせ出たんだから襲撃されるかどうかで真贋を確かめたら良いと考えるからだ。確定している真司と、要の護衛が最優先だ。しばらくはそれで固定されるかも知れない。占い師が確定するまでな。」
陽介は、苦い顔をした。
「…分かってます。でも、何も言わずに狩人なのに吊られる方が嫌だったんです!」
要は、じっと黙っている。
ステファンが、言った。
「…どうも襲撃を怖がっていないように見えるな。まあ、明日のことだ。今は洋子さんに続きを聞く方が良いのではないか?」
要は、ハッとして頷いた。
「姉ちゃん、他には?」
洋子は、顔をしかめた。
「何を言おうと思ってたんだっけ。あ、そうだ、妙さんの占い理由が共感できた。」
倫子が仲良しだから色が見たかったってやつだな。
要は、頷いた。
「他には?」
洋子は、うーんと唸った。
「…彰さんもステファンさんも、そんなに怪しいとは思ってない。だって二人とも別にどこかを庇ってるわけじゃないし、誘導しようとめっちゃ喋ってるわけでもないもの。だから昨日は言い合ってたけど、私はそんなことよりって思ってた。忠司さんの方がまだあちこち議論が飛んで行くのを戻したりとか動かしてる感じに見えてるかなあ。でも、雄吾さんを吊ってるから、忠司さんも今は白いと思ってる。それぐらい。」
結構話した。
しかも、変わった考え方だが、そういう見方もあるのだと何となく腑に落ちた。
そんな印象だった。
きっと、洋子は本当にそう思いながら、議論して聞いていたのだろう。
真司が言った。
「…思ってたより考えてるよな。議論の内容というより印象に左右されている感じではあるが、素直にそう思っていたのだろうと聞けたよ。」
忠司も、頷く。
「分かっていないなりにそういった感想を持っていたのだろうと思えたし、そういう見方もあるのだなと思ったな。」
要も、頷いて次に敦を見た。
「じゃあ敦。多分反論もあるだろうし、意見を聞こうかな。」
敦は、頷いて口を開いた。




