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朝食の席で

要が全く食欲がないままそれでもキッチンへと入って行くと、そこには彰とステファン、それに博正と真司と忠司の先生達が居て、そこにあるダイニングテーブルについて食事をしていた。

他にも人が居たが、みんな自分の朝ごはんを準備しているだけで、その大きなテーブルへ座ろうとはしていない。

出来上がったそれを持って、キッチンを足早に出て行くだけだった。

「おう、要。」博正が、要を見て言う。「お前も飯食うか?まだ冷蔵庫に惣菜あったぞ。米はそっちのチンするヤツ使え。」

見ると、彰はきっちりと定食のような形に惣菜やらサラダやらを前に、食事を黙々としている。

その隣りで、ステファンが野菜スープのような物にパンを突っ込んで食べていた。

要は、言った。

「…食欲ないんだよな。オレもステファンみたいな食事が食べやすそう。」

ステファンは、頷いた。

「あちらの棚にいろいろな種類のレトルトのスープがあった。レンジで温めるだけでいい。」

要は頷いて、言われた棚へと確認に行く。

真司が言った。

「大丈夫か?一番若いのにこんな気の張ることを仕切るのは大変だろう。オレももう皆に知れたし、頼ってくれていいからな。」

要は、本当にたくさんの種類が並んでいるスープの中から一つを選び、それを持って振り返った。

「ありがとう、真司さん。狩人に守らせまくるよ。ほんと手伝って欲しいから。真狩人は二人居るし、こうなったら襲撃されてたのが浩平で良かったのかも。真司さんだけを迷いなく守れるし。」

真司は、苦笑した。

「浩平が聞いたら怒るぞ?だが、ま、戻って来る可能性が出て来たんだ。浩平は死んでいないとオレも思う事にするよ。」

要は、頷いて電子レンジに器に移したスープを置いた。

「オレはそう思い込むつもり。」

彰が、箸を置いた。

「…うまかった。」と、要を見た。「要も、しっかり食べておいた方がいいぞ。いろいろまた分かって来たこともある。霊媒師が正確に抜かれたことから、君も言っていたように頭の切れる人物が狼に紛れている。そして、それは昨日吊った雄吾ではなかった。なぜなら、雄吾が追放されてから襲撃が起こっているからだ。まあ、指示して行ったなら分かるが、昨日の焦り具合から見ても、それはないだろう。彼はそこまで切れる男ではなかった。つまりは、まだ残っているのだ。」

ステファンが、言った。

「君に言わせたら、それが私だと思うわけだな?」

彰は、ステファンを睨んだ。

「もちろん、あなたが疑う筆頭位置だ。が…」と、視線を目の前の食べ終わった器に戻した。「…これはあなたの戦い方ではないようにも感じている。」

ステファンは、片方の眉を上げた。

「ほう?それはどういう所かね?」

彰は、答えた。

「敵に塩を送るつもりはないが、あなたは決して仲間を切るタイプではない。伊達に長くあなたを見て来たわけではない、初めてのゲームでも、それまでの日常の行動を知っている私には、初日に雄吾を吊っても良いとは言わないと思うのだ。ゲームが進んで来たなら分からない。その時は相手にしっかりと理由と戦略を話して納得させてからするだろう。昨日、忠司が雄吾の発言に突っ込んだのは本人の想定していないところからだった。その後部屋に籠っていたのにそんな暇はなかった。私はステファンと雄吾を密かに場を外しては監視していたから知っている。接触はしていない…だが、ステファンは雄吾を吊っても良いと言って、雄吾に投票している。その行動が、ステファンらしくない。」

どうやら、彰とステファンはかなりよく知った仲のようだった。

ステファンが彰を自分の子と錯覚すると言っていたのだから、分かっていたことだったが、彰から見ても、ステファンの事は父親のような存在なのだろう。

博正が、顔をしかめて言った。

「…だが、身内切りかもしれねぇだろう。それこそお前らしくないな、彰。命が懸かったら誰でも強い進行を取りたくなるはずだ。あそこで雄吾を庇ったらそれこそおかしいと皆に怪しまれるし、妙さんの偽も透ける。そうなった時、雄吾を切って自分が少しでも白い位置に入ることで、他の狼を守ろうと考えるもんじゃねぇか?今夜はどうせ、昨日雄吾に入れてないヤツの中から吊るんじゃねぇの?」

彰は、博正を見た。

「君は分かっていないのだ、博正。ステファンならどうにでも場を変える発言力がある。私と同じ。理由など、いくらでも頭の中にある筋道のうちのもっともらしい一つを皆に話して聞かせたら良いだけだ。私が狼ならばそうする。まあ、私とステファンの違うところは、別に相手が承諾していなくても、さっさと切って追放してしまうところぐらいか。」

博正が、顔をしかめる。

ステファンが、息をついた。

「…私も君が一番怪しいとは思っていた。しかし今の意見を聞くと、そうではないように見えて来たな。君は確かに私をよく知っている。それと同じぐらいに私も君を知っている。君が狼ならば、わざわざ要が居るここでそんな情報を落とさないだろう。それこそ、今君が言ったように、もっともらしい筋道の一つを話して聞かせて説得すればいいだけだ。君には説得力があるからな。だとしたら…誰かと思うな。」

ステファンは、その鋭い目を忠司と博正に向けた。

要目線では、忠司は相方なので絶対に白で、分かっていないのは博正だけだ。

だが、博正は最初から要達と積極的に話していたし、他の占い師達とは違って自分の考えていることをどんどん発言する。

狼ならば、かなり情報を開示しまくっている事になる。

「…真司さんは確定霊媒師だし…この中だったら、博正と忠司さんだけですよね、そうなると。でも、もしかしたらここに居る人の中には狼は居ないのかもしれませんよ?自分の能力を隠している人狼だって居るかも。だって、そうやって気取られたらまずいじゃないですか。だから、無能なふりをするんです。」

彰は、眉を寄せて要を見た。

「確かにその可能性もないわけではない。最初から目立った意見を出す者と、潜伏する者は分けているとは思うからな。」

真司が、言った。

「そもそも、彰とステファンが両方共白ではないかもしれないじゃないか。考えてもみろ、二人共が相手が自分を知っているのを知ってるわけだ。ってことは、それを逆手に取ることだってできるんだ。頭の良い奴らがどう動くのなんか分からないが、ここはもう読み合いだし騙し合いなんだぞ?確定占い師の白先でなけりゃ、信じるべきじゃない。分かったか、要。」

彰とステファンは、その意見に黙る。

何しろ、真司は数少ない確定村人なのだ。

要は、そうだったと頷いた。

「うん。分かってる。引き続き明日も占い師達には占ってもらうし、呪殺が出ても狩人とかオレの相方に黒が刺さっても、占い師の判別はついて来ると思うから。今夜はグレー吊り、雄吾が黒で確定したからまだ縄が二本余ってるし、間違っても大丈夫そうだ。投票先も、あれだけ割れたんだから、身内切りの票ももしかしたらあるかもしれないけど、入れてない中にも必ず人狼は残ってるはずだ。博正が言う通り、雄吾に入れていない中から、グレーの人をピックアップして話を聞いて行く事にする。ええっと、誰だっけ?」

彰が、スラスラと答えた。

「今の完全グレーは真司が出たことで敦、忠司、陽介、洋子さん、早希さん。その中で忠司に入れているのは早希さん、洋子さんの二人だな。ちなみに昨日、忠司に入れたのは真由さん、健、久美子さん、洋子さん、早希さん、莉子さん、そして雄吾の7人だった。」

要は、顔をしかめた。

女子票が多いのは、恐らく人狼でなくても昨日雄吾が訴えた、明日は我が身の意見が効いたからだと思われたからだ。

「…なんか女子ばっかで狼居なさそう。もしかしたら、もう囲われてるのかも。」

ステファンが、眉を上げた。

「なぜ女子が狼ではないと君は思うのだ?」

要は、説明した。

「違うんです、昨日の雄吾が明日はお前らだとか言って脅すような言い方をしたでしょう。だから、それを怖がって入れた子も多かったと思うんですよね。今朝の占い先は全部白で、呪殺無し。倫子、真由さん、健だ。その中で忠司に入れていたのは健、真由さん。昨日の白先まで入れたら久美子さん、莉子さんも。全員じゃなくても、絶対この中に囲いが起きていそう。」

彰が言った。

「そのうちの健と久美子さんは靖の白先だな。莉子さんは正希、博正は真由さん。誰かが誰かを囲っているように見えるということか。」

要は、頷く。

ステファンが、言った。

「ならば私は博正が真由さんを囲ったのではないかと思うな。」

え、と要がステファンを見た。

「…理由を聞いて良いですか?」

ステファンは頷いた。

全員が、じっとステファンを見つめた。

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