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夕方の会議

彰は、そんな会話の中でもずっと黙っていた。

要は、気になって話し掛けた。

「彰さん?何かありますか。」

彰は、要を見た。

「いや…何もかも明日の色次第だと思っている。君は占い師の占い先から狩人の護衛指定までしなければならない。しかも狩人は3人。相方としっかり話し合って決めるといい。独断では危ないぞ。」

要は、頷いた。

「はい。分かっています。」また考えに沈もうとする、彰に慌てて言った。「ところで彰さん、御いくつですか?ステファンが彰さんを人種が違うのに自分の子ではないかと思うぐらい似てるって言ってて。ステファンって50代なんですね。全然見えないから、その話になって。」

彰は、驚いた顔をした。

「ステファンが、そのように?」

要は、頷いた。

「正確な歳は伏せてるって言ってましたけど、50代だって。彰さんの歳は自分で聞けと言われました。」

彰は、答えた。

「私は29。」

え、とその場に居た皆が、びっくりした顔をした。

忠司と博正、真司は知っていたのか反応はない。

博正が言った。

「こいつは老けて見られたり若く見られたり忙しい奴でな。でも良く見てみろ、肌とか若いだろうが。まだ20代だよ。まあ、そのうち30代だが。」

久美子が、言った。

「女子の間でも話してたの。指輪してるし結婚してるんだろうなって…指輪が新しくなかったから、きっと結構歳上だよって。でも、20代だったんだ。」

そんな所まで見ているのか。

要は、女子の目は侮れないなと思った。

彰は答えた。

「もう10年になるからな。細かい傷はついているだろう。」

ということは、19の時に?!

更にびっくりする皆の事にはお構い無しに、彰は立ち上がった。

「ここでは考えられないので、部屋に帰って来る。6時には降りて来る。君達もしっかり考えておく方がいいぞ。ゲームは今日だけではない。明日もあるのだ。」

少し色めき立った女子達だったが、その言葉で一気に静かになった。

彰は、そこから出て行ったのだった。


夕方になり、要が指定した時間に近付くと、次々とリビングに人がやって来た。

それまでに、密かに隣りの忠司の部屋へと訪ねて、護衛先や占い指定先の事は話しを付けてある。

入って来た中には雄吾も居て、険しい顔をしている。

それは、投票対象にすべきだという声が出ていると聞いたら、村人でも落ち着かないだろう。

要は、皆が揃ったのを見て、言った。

「じゃあ、今日の投票対象は、忠司さんと雄吾の二択でお願いします。」要は、いきなり言った。「二人とも白かもしれないし、どっちかが黒かもしれない。でも、分からないから吊って確定している霊媒師に色を見てもらおうって思ってる。昼に話したみたいに、意見が対抗しているからって、オレはどっちかが黑だとは思わない事にした。だって、村人同士の争いかもしれないじゃないか。だから、彰さんとステファンはまた別の占い師の占い先に指定することにして、そこから考えるよ。じゃあ、投票まで1時間切ってるから、二人の話を聞こうかな。お好きな方からどうぞ。」

忠司と雄吾は顔を見合わせたが、雄吾が言った。

「オレは思った事を言っただけなのに、それはないと思ってる。理不尽だよ、全く意見らしい意見を落とせてない洋子さんとか、他にも居たのに!オレはそもそも人狼ゲームは得意なんだ。あのゲームはやってたら縄数とか普通に気にするものなんだ。人よりできるから怪しいって初日に吊られるのは納得いかない!」

要は、言った。

「じゃあ、君はどこが怪しいと思う?例えば忠司さんは君を怪しいと言い出した筆頭だから、今夜同じ土俵に立ったよね。対抗として。他に怪しむならどこ?」

雄吾は、回りを見回した。

「それは…今も言ったけど共有者に丸投げとかの意見しか出せない洋子さんとか。オレを黒塗りした忠司さんに同調した彰さんとかかな。博正はそこに白出してるから、みんな真っぽいとか言ってるけどオレは怪しいと思う。ステファンさんは彰さんに殴られてるから白く見えてる。」

ステファンが、眉を上げた。

「…殴る?」と、隣りの彰を見た。「私は単語を間違えているのか。何やら君が私に暴力をふるったと彼は言っているのか?」

彰は説明した。

「言葉の暴力のことだ、ステファン。物理的にどうこういう意味ではない。」

ステファンは、ああ、と頷いた。

「そうか、一般の人達とは話していなかったから、微妙な言い回しはまだまだのようだな。そうか、言葉の暴力も殴ると表現するのだな。」

言葉の壁があるのか。

要は、思った。

あまりにも流暢に話しているので全部理解しているように思っていたが、もしかしたら分かっていないところもあるのかも知れない。

「ちょっと聞いて良いですか。ステファンの母国語は何ですか。」

ステファンは、答えた。

「ドイツ語。他に英語、フランス語、イタリア語、ロシア語、スペイン語ぐらいならネイティブと変わらず理解できるが、その他の言語は話せても深い意味では分からないところがある。特に日本語は始めて間がないので、複雑な言語だしまだ君達が話していても、スラングなどは分かりづらい時はあるかもな。大体は分かっているから、問題ない。」

多言語話者なのだ。

よく頭の中がごっちゃにならないなと感心した。

「でも…お父さんが日本人で国籍日本って。」

ステファンは、ああ、と答えた。

「ドイツに住んでいたし、父は母とドイツ語か英語でしか話さなかったからな。母が日本語を解さないので。」

そうなんだ。

すっかり毒気を抜かれた雄吾が呆然としていたが、バツが悪そうに言った。

「その…以上だ。」

何を話していたのか忘れた。

そんな感じだった。

しかし、忠司は忘れることはないらしい。

忠司が、口を開いた。

「私は、今の雄吾の発言でも分かるように、彼はこのゲームに詳しいとしてもそれほど発言が伸びる方ではない。投票対象になっているのに、弁明に終始して促されないと怪しい位置も言えなかった。やっと出たのが、寡黙位置の洋子さんと、皆が私の仲間だと言い出した彰さんだけでは説得力がない。要でもステファンと彰さんが対抗とはみなさないと今の時点で言っているのに、単純に彰さんが敵ならステファンは味方のような言い方だ。少し考えたら、仮に狼同士でも、初日はやり合って見せたりはすることは分かる。まして白先同士で吊り位置ではないのだからな。二人が共に雄吾吊りでも良いと言っている事から、雄吾目線そういう考えにも至るはずだ。だから私は、やっぱり雄吾が怪しいと思っている。」

つまりは、人狼ゲームに精通しているにしては身内切りという概念が抜けていると言っているのだ。

雄吾目線、二人が雄吾吊りでいいと言っていて、村人の自分を二人共に吊りに来ているのだから、彰だけを怪しいとするのは端的過ぎると言うのだろう。

要は、頷いた。

「確かに人狼ゲームをよく知っていたら、身内切りなんかしょっちゅうあるはずなのに、両方から吊り推されて一人だけを怪しむのはおかしいと考えるはずですよね。それは分かります。」と、雄吾を見た。「雄吾は、そこのところはどう思う?」 

雄吾は、何やら焦っているようで、言葉に詰まって居並ぶ皆の方へと視線を向けた。

とはいえ誰を見ているというのではなく、答えを探して皆を一人一人見回したという感じだった。

「…それは…身内切りは知ってる。でも忠司さんに黒塗りされてから、オレだってなんでそんな事を言われるんだって焦ってしまって思考が鈍ってるんだよ。何をどう考えたら良いのかテンパって分かってない状況だ。だから、焦って変な事を言ったのかもしれない。でも、オレは村人なんだ!ちゃんと落ち着いて考えられたから、あの時オレはああしてみんなより突っ込んだ意見が言えた。でも今じゃ混乱しててまともに考えられない。」

倫子が、言った。

「でも…だからこそ夕方まで時間があったんじゃないの?」

黙って聞いていた、浩平も頷いた。

「…うん。それはオレも思った。ずっと部屋に籠もってたんだし、その間に一人で考えられたと思うよな。もうこれ、怪しむぐらいなら霊媒師に色を見てもらった方が良いんじゃないか?」

博正も、頷いた。

「オレもそう思う。」皆が博正を見る。博正は続けた。「もし白でも勝てば帰って来られるわけだろ?村の勝利のためにも、それで良いんじゃないか。どうせオレ達が占い結果を落としたところで、騙りが出てる限り村目線信じられないんだからさ。確定結果は強いだろ。」

雄吾は、それを聞いて絶望的な顔をしたが、しばらく考えて、言った。

「…追放って、命懸けとか言ってたけど、どうなるんだ?殺されるのか、ここで?」

彰が、答えた。

「分からないが、殺しはしないだろう。何しろ、勝てば帰って来られると明言していた。殺してしまったらどうやって帰すのだね。死体では意味がないことは分かっているはずだ。」

要は、頷いた。

「それでは犯罪ですしね。」

ステファンが、ため息をついた。

「そもそも今のこれも犯罪だ。楽観視しない方がいい。こんな孤島なのだぞ?生き残ったとして帰りの船が沈まないとなぜ言える。そこに死体もろとも放り込み、事故で処理されたら終わりだ。せめてもの希望は、勝ってから交渉してどうなるかだと私は思っている。今は気を引き締めてゲームに集中すべきだ。」

皆の表情が固くなった。

確かに、生き残ったところでそのまま帰してくれるのか、未知なのだ。

忠司が、言った。

「そうだとしても不安になるようなことは言わない方がいい、ステファン。ゲームに集中すべきだと思っているのなら尚更に。皆子供なのだぞ?精神に支障をきたしたらまともにゲームなどできない。皆殺しになるかもしれない。」

そこで、何の前触れもなくいきなりモニターの画面がパッと着いた。

そして、声が言った。

『投票、10分前です。』

モニターには、時計表示が出て秒単位で減って行く。

要は、遂に投票時間だと緊張気味にそれを見上げた。

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