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反対視点

要は、片方の意見ばかりでは頭の中から偏ってしまうと、ステファンの部屋を訪れた。

ノックの音は聴こえないのが分かっているので、いきなり扉を開いて声を掛ける。

「ステファン?今お話良いですか。」

ステファンは、驚く様子もなく振り返って頷いた。

「要。入るといい。」

要は、中に入って扉を閉じた。

そして、言った。

「あの…彰さんとは話して来ました。だから、今度はステファンの話を聞こうと思って。」

ステファンは、頷いた。

「分かった。座れ。」と、前の椅子を示した。「君は確かまだ14だったな?」

要は、椅子に腰掛けながら頷く。

「でも、もうすぐ15になります。」

ステファンは、目を細めて要を見た。

「なんと、君は将来有望だな。その歳でこんな目に合うのはかわいそうに思うが、これは我々にも想定外のことなのだ。お互いに自分の命には責任が持とうではないか。で、何を聞きたい?私は余計な情報を人外に渡したくないと思っているから、公には話さないが君に話すのならいいだろう。」

要は、単刀直入に言った。

「彰さんです。あの人をどう思いますか?」

ステファンは、フッと笑った。

「率直な男だな君は。彰は頭が良過ぎて世の中に期待をしなくなった哀れな男だった。今は違う。私が望んだ通りに幸福に生きていて、それを側で見守る事ができて満足しているよ。」

そういう事じゃない。

やっぱりはぐらかされるのかと要はイライラと言った。

「そうじゃなくてゲームのことです。彰さんに口撃されていたでしょう。ステファンはどう思ってるのかなって。」

ステファンは、クックと笑って答えた。

「分かっている。冗談だ。」全く面白くない冗談なのにと要は思ったが、ステファンは真顔になって続けた。「私は、彰の方こそ司令塔なのではないかと思っているよ。なので雄吾を吊る事に異論はない。皆は二人が仲間のように感じているようだが、忠司のことは知らない。というのも、忠司に痛い所を突かれて焦って私に指摘される前に先手を打って来たように見えている。私達はお互いにお互いの能力を良く知っている。僅かな言葉のニュアンスで、数ある単語の中からそれを選んだその人物の思惑を予測できる。私も忠司が言ったように、雄吾の考察には違和感を感じた。取り立てて優れた若者でもないのに、一人だけ飛び抜けて深く見る事ができるのはおかしい。他に、それを指示する事ができるような考察の持ち主は居なかった。ということは、彰なのではと私も思った。が、忠司がそれを指摘して、それで村に意見が落ちたので、誰が司令塔かまでは言及しなくて良いかと思った。会議でも話したように、私達は今夜の吊り位置ではない。時間の無駄だ。それは明日の話であると思っていた。」

要は、それを聞いて顔をしかめた。

ステファンの意見は、もっともだったからだ。

むしろ、落ち着いてこうして話している様は、必死の彰より信憑性があった。

村に気取られる前に、ステファンを始末してしまいたいという…。

そう言えば、真かもしれない博正がステファンを占うと言ったら、それはしなくていいと言った。

白が出たら不都合だからなのだろうか。

「…ステファン目線の考えは分かりました。つまりは彰さんとステファンは、お互いにお互いのことを良く知っているからこそ、人外だろうって思うんですね。」

ステファンは、頷いた。

「そうだ。お互いに怖がっていると言った方が良いかもな。私達はお互いに似ているのだよ、要。それこそ人種も違うのに私の子ではないかと錯覚するぐらいにな。そして、彰は私を自分より優れているかもしれないと思っているが、私は彰の方が格段に優れているのを知っている。私達の違いは、そこだけだ。」

要は、驚いた顔をした。

「え、子供?ステファン幾つですか?」

ステファンは、苦笑した。

「私の正確な歳は伏せている。まあ、50代ぐらいだと思ってくれたらいい。」

50代?!

要は、愕然とした。

どう見ても40代ぐらいにしか見えない。

「え!40代前半ぐらいだと思ってた!」

ステファンは、笑った。

「よく若く見られるが、君は彰を幾つだと思っているのだ。」

要は、うーんと眉を寄せた。

「…30代半ばぐらい?もっと若くも見えるけど。指輪してましたし、結婚してるんでしょう?」

何しろ年齢不詳の顔立ちなのだ。

ステファンは、声を立てて笑った。

「ハハハ、そうか。昔から落ち着いているとか言われていたものな。本人に聞いてみるといい。ちなみに彼は、19の時に結婚したと聞いている。君からしたら4年後だな。」

要は、それこそ仰天した。

4年後に結婚なんか考えられそうにない。

何かと予想外な彰の事が、とても気になった要だったが、それは最初からそうだった。

あの綺麗な顔を、ずっと見ていたような気がするのだ。

要は、ステファンに挨拶をして部屋を出て、迷いながら階下へと降りて行ったのだった。


リビングへ入って行くと、彰、博正、忠司、倫子、洋子、真司、健、真由、久美子の9人がそこに座っていた。

と言っても、会議の席ではなく窓際のソファの所に集まって、思い思いの場所に座って話していたのだ。

要でちょうど半数になる人数で、結構な大所帯に見えた。

要がそちらに近寄って行くと、博正が言った。

「ステファンと話して来たんじゃねぇのか。あいつはなんだって?」

要は、答えた。

「彰さんが忠司さんの指摘に焦ってステファンに振って来たみたいに見えるって。どっちの主張もオレから見たら、理に適ってるから分からない。でも、共通してるのは雄吾吊りを推してる事かな。案外二人共白かも知れないって思ったりもしてる。」

彰は、眉を寄せた。

「ステファンは、雄吾を吊っても良いと言っているのか?」

要は、頷いた。

「はい。だって反対意見ですもんね。共通してるのは雄吾が狼で、お互いにどっちかが指示してるかもしれないって思ってるってこと。」

彰は、考え込む顔をする。

真由が、要に訴えるように言った。

「あの!私は狼じゃないの。あの時は感情的になって共有者にまで攻撃して悪かったと思ってる。」

久美子は、真由を庇った。

「なんかトラウマがあるみたいなの。友達に疑われて吊られてばかりで嫌な思い出しかないゲームみたいで。分かってあげて。」

やっぱり女子同士は情に流される所があるな。

要は思って、面倒そうに手を振った。

「ああ、真由さんは占ってもらうから大丈夫だ。今夜じゃないよ。明日以降は分からないけどね。」

真由は、ホッとした顔をする。

忠司が、言った。

「なら、二択は決めたのか?」

要は、ため息をつきながら

頷いた。

「うん。雄吾と、それに対抗している位置の忠司さん。その二人から投票してもらうことにします。占い指定先はこれから考えます。」

博正が言う。

「狐っぽい所を頼むわ。呪殺出して早いとこ真確定して護衛入れてもらわにゃ。でも狩人は3人だったか?」

要は、頷く。

「そう。もし狼だったらそれを犠牲にしてでも真占い師を狙って来るだろうし、難しいよね。できたら今夜、狼を落としておきたいところだけど。」

博正は、肩を竦めた。

「その時はその時だ。狐は二人居る。一人は占い師に出てる気がするんだよな。初日に囲ってると思うか?」

要は、首を傾げた。

「どうかな。それを疑って真占い師に潜伏の方の狐から占われたら、溶けて占い師側も一発アウトだから、ないと思うけど。分かってない狐ならあり得るかもね。」

博正は、ため息をついた。

「ま、とにかく占い先は慎重にな。オレも誰が相方なのか知りてぇし。」

博正がほんとに真なら良いんだけどね。

要は、ため息と共に思っていた。

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