グレー
突然に明かされたので、健は驚いた顔をしたが、頷いた。
「お、おお。そうか。だったらやっぱり彰さんグッジョブかなあ。とりあえず、オレは以上だよ。」
要は頷いて、久美子を見た。
「久美子さんは、どう思う?」
久美子は、答えた。
「…私は靖さんの白先だけど?」あ、と要が顔をしかめると、久美子は苦笑して続けた。「いいわ、言いたい事があったし。こうして意見を聞いていると、真司さんがめっちゃ考えてる村人って感じで信頼感あるわ。グレーの中ではとっても白く見えた。占い師はやっぱり博正さんかしら。私も真司さんの意見を聞く前から、最初なのにいっぱい話すなあって感心してたの。だから彰さんグッジョブって本当にありそう。他の占い師はよくわからない。妙さんがちょっと怪しいかなって思ったぐらい。以上よ。」
要は、またバツが悪そうに頷いた。
「次、姉ちゃん。」と、付け足した。「何も分からなくても感想だけでもいいから。」
洋子は、要に頷いて答えた。
「久美子ちゃんが白く見えた。だって私も全く同じ事を思っていたから。でも、私には細かい事は全く分からないから、要に票を合わせるつもりよ。要しか本当に信じられないから、要が入れるところに私も入れる。それはこれから日数経っても変わらないわ。とにかく早く真占い師が見付かって、確実に白だって分かる所が増えて安心したいなって思ってる。それだけよ。」
要は、丸投げなのは昔から同じだなと次を見た。
「次、陽介さん。」
陽介は言った。
「もう全員呼び捨てで行こうや。陽介でいい。」と、健を見た。「彰さんが一人の狩人に守られてたのは分かったけど、まだ彰さんで護衛が成功したとは限らないだろう。狩人はもう一人居るんだ、そっちでグッジョブ出たかもしれない。そもそも彰さんなんか、ちょっと考えたら護衛入ってそうなのに、狼が噛むか?狼だって考えてると思う。初日のお告げ先を聞いただけで決め打つのは危ないぞ。とはいえ、オレも印象的には博正さんが真っぽいなって思った。理由は、やっぱり何も無い中で最初にああしてしっかり意見を伸ばしたからだ。後はそれを真似しただけと言われたらそうだしな。四人出てるけど、内訳って真真狼狐なのかな?それとも狼と狂信者がバッティングしてるのか、狼は潜伏してて狂信者と狐なのか。要はどう思う?」
要は、答えた。
「今の時点では全く分からないな。ただ、狐が潜伏すると自殺行為じゃないかと思うので、狐は混じっているんじゃないかって思うかな。」
陽介は、うーん、と考え込む顔をした。
「だったら占い師同士で占わせるとかやるのか?それも良いかもだが…グレーが広い。」
要は、息を付いた。
「それは後で。今は全員の意見を聞かないと。」と、雄吾を見た。「雄吾は?」
もう、呼び捨てにしろと言われたので呼び捨てにする。
雄吾は、答えた。
「そうだなあ、陽介の意見は凄く良かったと思う。後になるほど前の意見を聞けてるから発言有利だよな。それを差っ引いても白いなと思った。グッジョブの話だけど、彰さんは確かに誰の目線でも襲撃筆頭位置だったよ。だから確かに狼だって、守られるかもって思うだろうし、避ける気がする。だって20人だろ?縄の数って分かるか?」
要は、頷く。
「20人で始まってその時点で9縄7人外。もし、昨日人狼の襲撃が通っていたとしたら19人、縄数は減って8縄になっていた。途端に8縄7人外で村にとってはめちゃくちゃ不利になってた可能性があるよね。つまり、縄は増えてるんだ。確かに雄吾と陽介が言う通り、狼は昨日の襲撃は必ず成功させたかったと思われるから、護衛が入って居そうな彰さんを襲撃するのはおかしいかな。」
次の早希が言った。
「うわあ、言われてみたらそうね。雄吾さんと陽介さんはきっと白ね。」
しかし、忠司が言った。
「要、オレを飛ばしてるぞ?」あ、と要と早希が驚いて忠司を見ると、忠司は苦笑した。「別に最後まで意見を聞いてからでも良いかと黙っていたが、今意見を言う。陽介と雄吾はそう言うが、それに気付いている村人は何人居るだろうな?良い意見だが、これまでの人達だって良い意見を落として白くなりたいと思っているはず。気付いていたら、真っ先に言いたい意見だっただろう。だが、どこからもそれは出ていない。縄数なんか、いきなり人狼ゲームをしろと言われて頭に上るものか?」
要は、眉を寄せて言った。
「つまり、忠司さんはどう思うんですか?」
忠司は、答えた。
「つまりは、狼同士で昨夜話し合っているから縄数まで思考が至るのだと思っている。恐らく人狼の中に人狼ゲームに詳しいか単に頭が良い人が混じっていて、入れ知恵されているのだと私は考える。つまりは陽介もだが、それより縄数にまで言及した雄吾は私には怪しく見えているかな。」
雄吾が、反論した。
「オレはこのゲームが得意なだけですよ!学校でめっちゃやってるから!ここまでの人数はないけど、9人とかめっちゃやってる!」
要は、急いでそれを抑えた。
「それは後で。まずはみんなの意見を聞かないと。」と、早希を見た。「ごめん、オレ緊張してるみたいでポカしまくってる。続けて。」
早希は、頷いた。
「最年少なのに共有者で村をまとめてるんだもんね。めっちゃ真顔だから分かるよ。」と、早希は息をついた。「今の忠司さんの意見を聞いてしまうと、どうしても雄吾さんと陽介さんが怪しく思えてしまうわね。全然意見を落としてない真由ちゃんが怪しいかなって思ってたけど、逆にガンガン言えるのも怪しんで行かないといけないのかなって。でも、こうも思ったの。忠司さんが誘導してるのかなって。頭の良い人にもっともな事を言われたら、そうかなって思っちゃうわ。」
隣りの、浩平が頷いた。
「オレもそれは思った。もっともな意見には納得してしまうけど、ほんとにそれで良いのかなって悩むよね。でも、オレもそれを確かめるためにも、今夜雄吾を吊って確定してる霊媒師達に色を見てもらっても良いんじゃないかなって思う。それで忠司さんの色も見えて来るしさ。霊媒師は二人居るから、どっちかは最悪生き残るし。」
その隣りの、正希の白先の莉子も頷いた。
「うん。私もそう思う。占い師はわからないけど、霊媒師は確定してるんだもんね。」
要は、やっと終わったと息をついた。
「ごめん、オレがあちこち忘れてて白先の人も話す事になっちゃって。今久美子さんと莉子さんの話は聞いたし、もうこの際彰さんとステファンの意見も聞こうかな。ステファン、今の意見を聞いてどう思いましたか?」
ステファンは、何を話していても彰と同じように興味深げに聞いているだけだったが、答えた。
「…おもしろい。私はこのゲームは初めてだが、皆の意見は参考になるな。まあ、私が思うに初日というのは誰でも良いのではないか。明日霊媒師とやらが結果を見、その色で投票先と合わせて思考を伸ばす。今は誰が嘘を言っているのか、フィーリングだけで分からないだろう。何を話しても同じだ。本番は明日からなのだ。なので、私もそちらの女の子と同じように、君の票に合わせてもいい。」
要は、顔を曇らせた。
言っていることは分かるが、肝心のステファンの色がわからない意見だからだ。
狼でも、言える意見だと思った。
「…次、彰さん。」
彰は言った。
「らしくないな、ステファン。確かに初日は誰でも良いが、己が村人ならば生き残る事に意味がある。突き放して全く自分の色を見せないのは、人外のそれだと言われても仕方がないぞ。」
ステファンは、彰を見た。
「君は博正の白だろう。私は妙さんの白だ。今日はグレー吊りだと要が言った。ということは、私達は吊り位置ではない。下手に色を落として人狼の餌食にはなりたくないからな。君にはその懸念がないのか?」
彰は答えた。
「私は村人達のレベルに合わせて意見を落とすべきだと思っている。こちらが当然分かっているだろうと思っても、分かっていない事がある。真占い師が私達のうち一人を指定先に入れられて、どちらを選択するかに掛かって来るのだ。もし自分が選ばれたら、その占いは無駄になる。何しろ自分は白なのだからな。自分視点での考察も進まない。不利益しかないのだ。あなたは当然そんな事ぐらい分かるのかと思っていたが、分かっていて色を落とさないのはなぜだ?あなたは人外か。」
ステファンは、彰を睨んだ。
「…今の話で私を疑うのは君ぐらいではないかと思うがね。私を吊らせたい人外なのかと私からは見えているぞ。」
この二人の間では、恐らく何かあるのかも知れない。
が、村人達にはちんぷんかんぷんだった。
要が、割り込んだ。
「ええっと…こちらから見ると空中戦に見えててよくわかりません。彰さんは、つまりステファンが怪しいってことですか?他の村人よりも?」
彰は、皆がキョトンとしているのに気付き、息をついた。
「…そうだ。その意見を聞くまでは分からなかったが、クリ…忠司が言うように雄吾の意見が出来すぎだと思った。誰か司令塔が必ず居るだろうと。その位置がグレーの中には見当たらず、もしやと思っていたらステファンがこんな感じだったので、ステファンならばやるかもと思った。とはいえ、それに能力的に従えない者も居るだろうし、グレーの中の他が誰かと言われたらわからないが、雄吾自身が言うようにこのゲームを何度もやっているのならば、理解してついて来られるのではないかと考え、グレーならば私は雄吾を吊って色を見たい。それで、ステファンの疑いも消えるかもしれない。」
彰目線では、そう感じてそう思考していたのだ。
要は、最後に全く話を聞けていない、真由を見て言った。
「…じゃあ、真由さん。もう全員意見を言ったよ。最後に君の意見を聞こう。」
真由は、ビクリと肩を震わせる。
全員の視線が、真由に向けられた。




