あなたが望んだその方は
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ナタリーには、愛する婚約者がいる。彼の名前はベネディクト。侯爵家の四男で成績優秀、物静かで思慮深く、読書好きな青年だ。
基本的にはあまり感情の起伏を表に出さないベネディクトだったけれど、ある休み明けの朝、ナタリーが王立学校の校門のところで彼に会った時、普段は滅多に見掛けないような、とびきり明るい笑顔を向けられた。
「おはよう、ナタリー」
「おはようございます、ベネディクト様。何か良いことでもあったのですか?」
ナタリーは、ポーカーフェイスを崩すことのほとんどない彼が、珍しくうきうきと弾むような笑顔でいる様子に、つい不思議そうに尋ねた。
「ああ。昨日、これまで行ったことのなかった町まで足を延ばしたんだが、なかなか面白かったんだ」
「……何が面白かったのですか?」
「ちょっと変わった少女に会ってね」
ナタリーの顔はぴくりと引き攣り、その緑の瞳が揺れたけれど、彼女は彼に話の続きを促した。
「ええ、それで?」
「町をしばらく見て回った後、あるカフェに入ったんだが、そこでスリに遭いかけたんだ。だが、店員の少女が、それに気付いてくれてね。お蔭でスリも無事に捕まったし、僕には何の被害もなかった」
「それは良かったですね。……その少女とは、どんな方だったのですか?」
「この国には珍しい黒髪黒目で、眼鏡をかけていた。僕は結局、直接礼を言う機会も逃してしまったんだが、笑顔の明るい人だったよ」
ベネディクトが熱っぽく女性の話を口にすることなんて、これが初めてだった。ナタリーの表情がさっと翳る。彼はきっと、昨日の出来事をただ彼女に話しているだけなのだろうとは思いながらも、婚約者に向かって楽しげに他の少女のことを話すなんて、内心穏やかではない。そんな小さなことでももやもやとしてしまうくらい、ナタリーはベネディクトに惚れ込んでいるのだ。
そのまましばらく昨日の出来事を話してから、彼はナタリーに尋ねた。
「君は、昨日はどう過ごしていたんだい?」
「私はまあ、普段通りでしたわ」
ナタリーは、ベネディクトに外出に誘われることもあまりない。寂しく思いながらも、惚れた弱みで、それを口に出すこともできずにいた。
二人の婚約のきっかけは、ナタリーが王立学校で彼に一目惚れをしたことだ。焦げ茶の髪に碧眼の、誠実さの滲み出る端正な顔に、どこか憂いを帯びた表情をした賢い彼は、まるでナタリーの理想を絵に描いたような青年だった。機会を見付けては、彼との接点を積極的に持つようにしたナタリーは、彼に会うほどに惹かれていった。
彼が侯爵家の出であるのに対して、ナタリーの家は新興貴族。いわゆる成金だ。才覚溢れる商人である彼女の父が、一代で商会を大成功させたことから、彼女の家は非常に潤っている。そのお蔭もあり、彼女の父は伯爵位を叙爵した。金で爵位を買った、などと陰口を叩く貴族たちがいない訳ではなかったけれど、結局は結果を出した者の勝ちだ。二人姉妹の長女であるナタリーが、ベネディクトに心底惚れ込んでいたことに加えて、彼の実家の侯爵家の金回りがあまりよくなかったこと、彼が四男だったこともあり、伯爵家に婿入りしてもらう前提で、めでたく二人の婚約が調ったのだった。
ただ、ナタリーの目からは、どうにも彼と自分との間には温度差があるような気がする。そんな差を埋めようと、彼女は必死に頑張った。普段は読むこともなかった小難しい本も、彼と話題を合わせるために読んだし、家格が上の彼に見合うように、おおらかな父母の下でおざなりになっていた礼儀作法も懸命に学んだ。王立学校でのナタリーは、今ではいっぱしの淑女と言えるほどに見違えている。
けれど、彼女がいくら努力をしても、ベネディクトからは、手応えらしきものは感じられない。むしろ、空回りしているようで、ますます彼が無表情になっていくように感じていた。焦りと悲しさを覚えていたところに、彼が楽しげに昨日会った少女の話をするのを聞いて、ナタリーは憂鬱な気分になっていた。
「……その方には、また会いに行くつもりなのですか?」
探るように尋ねたナタリーに、彼は頷いた。
「ああ。助けてくれた礼を、今度言いに行こうと思っているよ」
「そうですか」
行かないで欲しい、という言葉を、ナタリーはぐっと吞み込んだ。
***
「はあ」
それからしばらく経ったある日、小さく息を吐いたベネディクトを前にして、ナタリーは首を傾げた。
「どうなさったのですか?」
「いや、ちょっとね。……この前僕を助けてくれた少女に会いに、何度かあのカフェに行ったんだが、都合が悪いのか、なかなか会ってはもらえないんだ。店頭で見掛けても、すぐに姿を消してしまうし」
「……それは、会いたくないのではないですか?」
どことなく冷ややかな声で返したナタリーに、ベネディクトは悲しげに言った。
「僕が迷惑なのだろうか」
「まあ、仕事が忙しいとか、そういう可能性もあるかもしれませんね」
ベネディクトの瞳には、やはりなぜか熱が感じられる。ナタリーには、彼が何を考えているのかよくわからなかったけれど、そもそも、婚約者に向かって別の女性の話を何度もすること自体、失礼なように思われた。
ナタリーの口数が少なくなったことに気付いたようで、ベネディクトが話題を変えた。
彼の話に合わせながらも、誠実だと思っていたベネディクトの浮ついた様子に、ナタリーの気分が沈む。
教室の前で彼と別れてから、彼女は自席に着くと、青ざめた顔でぐったりと机の上に突っ伏した。
(勘弁してよ……)
はあと大きな溜息を吐いて、ナタリーは目を閉じた。
実は、ベネディクトがどのようにスリに遭いかけたかも、そしてどのようにスリが少女に撃退されたのかも、彼女はよく知っている。ベネディクトの側に近付いてきた手練れのスリに気付いたカフェの店員の少女が、手近にあったリンゴを、思い切りスリに向かって投げつけたのだ。黒髪黒目で、分厚い眼鏡をかけていた地味な少女が投げたリンゴは、スリの頭に見事命中し、ベネディクトのポケットから財布を引き抜き掛けていたスリは、その場でお縄を頂戴することになった。
とはいえ、ナタリーは別にベネディクトの後をつけていた訳ではない。彼の休日の動向は気にはなったけれど、さすがに彼女だって分を弁えている。
ベネディクトがたまたま訪れたその店は、ナタリーが父の出資を受けて出店したカフェで、彼女もその日、そこにいたのだ。しかも、問題はそれだけではなかった。
(それ、私ですから……!)
平民でごった返すその町に、貴族はあまり多くは訪れない。けれど、貴族ばかりが通う王立学校の学生が、そんな場所で働いているというのも体面が良いものではないので、仮に学友に会っても気付かれることのないように、彼女は細心の注意を払っていた。ナタリーは、父の商会のルートを使って手に入れた、目の色と髪の色を一時的に変える薬を使って、金髪も緑の瞳も、両方黒に変えてから店頭に立っている。さらに厚い眼鏡をかけて、店の制服を着て帽子を被れば、自分で鏡を見ても同一人物には見えない。カフェを訪れた妹に接客をした時にも気付かれず、彼女に小声で正体を明かした時には、仰天された上に大爆笑された。
「ええー、お姉様だったの!? どう見たって別人だわ!」
げらげらと腹を抱えて笑う妹を見て、ナタリーは自分の変装に自信を深めていた。ベネディクトの口ぶりからも、やはりそれが彼女だとは気付かれてはいないようだ。
(でも、あんな所を見られてしまうなんて)
いくらスリ相手とはいえ、咄嗟にリンゴを人に向かって投げつけるなんて、淑女のすることではない。しかも、ナタリーは非常に運動神経が良く、リンゴは狙い通りにスリの頭にヒットした。小さくガッツポーズをしたところまで、彼女はベネディクトに見られてしまっている。
目深に帽子をかぶったベネディクトがカフェに来た時、ナタリーはすぐに彼に気付いた。慌てて彼の接客を別の店員に任せてから、店の奥から様子を窺っていたのだ。彼のことが気になって仕方なかったナタリーは、彼に近付いて来たスリにも、自然と気付いてしまったのだった。
ベネディクトが、礼を言おうと自分を探していることにもナタリーは気付いたけれど、すぐに店の奥へと引っ込んでいた。
彼女は当時のことを思い返しながら、さらに深い溜息を吐いた。
(ベネディクト様は、またカフェにいらっしゃるつもりなのかしら)
彼が来る度、ナタリーはすぐに彼を避けるようにバックヤードに隠れている。もしも彼に正体がばれてしまったらと思うと、ナタリーの背筋は冷えた。侯爵家の生まれの男性に相応しい令嬢が、市井のカフェで働くことはまずないだろう。けれど、まだ出店してから間もないその店に、彼女は自分自身を戦力として投入するために、特に用事がない限り、最近の休日はほとんどその店に出ている。
そこでは貴族らしく過ごす必要もないので、素の自分のまま繕わずに過ごすことができ、ナタリーはその時間を思いのほか楽しんでいた。店が繁盛する様子を目の前で見られるのも、モチベーションになっている。父と同様、ナタリーも生まれついての商人だった。店頭に立ちながら、彼女は売れ筋の商品や今のトレンド、今後流行りそうなものまで、豊富な情報を収集している。学校の授業より、実学の方が余程面白いというのが正直なところだった。
(これから、どうしたものかしら。それに……)
見たこともないほど浮き立った様子のベネディクトの表情が、ナタリーにはひどく気になった。変装した自分のような、貴族らしくない女性が好みのタイプだったのだろうかという混乱と共に、婚約者がいるのに他の女性に会いに行く時点で、そもそも婚約相手としていかがなものなのだろうかと、彼女の心は揺れていた。
(あんな方だったとは、思わなかったわ。私が無理矢理に、彼との婚約にこぎつけてしまったのがいけなかったのかしら)
貴族間では政略結婚は当たり前だったし、ベネディクトとナタリーの婚約も、双方の家に利があったからこそ結ばれたものだ。
けれど、それはベネディクトにとって好ましいものではなかったのではないかと、ナタリーは今更ながら悩み始めていた。
それに、誠実さはナタリーにとって最重要事項だった。長い人生を互いに信頼して歩んでいく上では、どんなに好きだったとしても、浮気性の男性は無理だとナタリーは思う。ベネディクトには、まだ具体的に何か行動を起こされた訳ではないけれど、婚約者がいるというのに、ほかの女性に興味を抱くのはいただけない。たとえ、心の浮気相手が自分だったとしてもだ。
そういうことをする男性は、きっとまた同じことを繰り返すに違いないと、彼女はそう考えていた。
再びナタリーは溜息を吐くと、のろのろと次の授業の教科書を鞄から取り出した。
***
「こんにちは」
聞き慣れた声に、カフェにいたナタリーが振り向くと、そこにはベネディクトの姿があった。
(いらしていたのね、気付かなかったわ……)
彼を前にして、変装中のナタリーの肩がぎくりと跳ねる。
「……こんにちは」
「少しだけ、僕に時間をもらえませんか?」
「ええっと……」
助けを求めるように、ナタリーが同年代の店員の子を振り向くと、彼女はにこにこと笑みを返した。
「私が接客していますから、大丈夫ですよ。ごゆっくり」
退路を断たれたナタリーは肩を落としてから、店の一番端にある二人掛けのテーブルに、彼と向き合って腰を下ろした。
「この前は、スリを撃退してくれてありがとうございました」
「いえ。この店でスリの被害が出るのも嫌でしたし、たいしたことをした訳でもありませんし」
「いや、お見事でしたよ」
楽しげに笑った彼は、ナタリーの前で改めて店内を見回した。
「ここは素敵な店ですね」
思いがけず店を褒められて、ナタリーの頬が紅潮する。
「そうでしょうか?」
「はい。ゆったり過ごせて居心地が良いし、お茶も食事もとても美味しい。開店してから常に賑わっているようですね。……ここで働くのは、楽しいですか?」
「ええ、とっても」
思わず素の顔で笑った彼女に、ベネディクトはポケットから小さな箱を取り出した。
「これは貴女への先日のお礼です。これ以上仕事を邪魔しても悪いので、またの機会に」
去って行くベネディクトの背中をぼんやりと見送ってから、ナタリーはバックヤードに戻ると、どきどきとしながら受け取った箱の蓋を開けた。
「……!」
箱の中には、美しいエメラルドのネックレスが入っていた。きらきらと輝く金鎖を持ち上げた彼女の瞳が、涙に潤む。それは、以前に彼女がベネディクトから贈られたエメラルドのイヤリングと一緒に身に着けたら、よく似合いそうな代物だった。
(婚約者でもない女性に、こんな高価なものを贈るなんて……)
恐らく貴族には見えない変装中の自分を、彼が本気にするはずもない。一時の気の迷いなのだろうとは思ったけれど、それでも、そんな彼の行動は、ナタリーにとっては地面が揺れるような衝撃だった。
彼女の目から、ぽろりと一粒の涙が溢れた。
***
「ナタリー、君に相談したいことがあるんだ」
王立学校の帰り道、ベネディクトからそう告げられて、ナタリーの瞳が揺れる。カフェで変装した彼女がネックレスを受け取ってから、数日後のことだった。
彼への気持ちが諦め切れず、それからも悩んでいたナタリーだったけれど、とうとう心を決めて彼を見上げた。
「私からも、ご相談したいことがあるのです。同じ話かもしれませんが、私から先にお話しさせていただいても?」
「ああ、構わないよ」
微笑んだ彼の前で、ぎゅっと手を握り締めてから、彼女は辛そうに口を開いた。
「……私との婚約を解消していただけませんか?」
「はっ!?」
みるみるうちに、ベネディクトの顔が青ざめる。ナタリーは堰を切ったように続けた。
「ベネディクト様には、ほかに意中の方がいらっしゃるようですね? 私たちの婚約も、私から一方的に貴方様にお願いしたようなものでしたし、無理して私と結婚していただく必要はありませんわ」
「違うよ、ナタリー」
慌ててベネディクトが彼女の顔を覗き込む。
「悪かった。僕が愛しているのは、君だけだ。だから、そんなことを言わないで欲しい」
初めて彼から愛していると言われて、心が揺れたナタリーだったけれど、それでも首を横に振った。
「いいえ、そんなはずはありません。私、貴方様が仰っていたカフェにまたいらしたことも、そこで高価なネックレスを女性に贈ったことも知っています」
「……気に入らなかった?」
「だって……私はベネディクト様のこと、信じていたのに」
泣きそうになったナタリーの肩を抱き寄せると、彼は溜息混じりに彼女の耳元で囁いた。
「君の眼鏡姿も、カフェでの制服姿も似合っていたよ」
「えっ!?」
驚きに、ナタリーが目を丸く見開く。
「知っていらしたのですか? あれが私だったと」
「黒髪黒目の君も、なかなか新鮮だったよ」
ベネディクトは優しい笑みを浮かべた。
「君が自分のカフェを開いたと、君の父上から聞いてね。君は、自分の口からはなかなか教えてくれなかったから、こっそりと見に行ったんだ。働いている君は、活き活きとしていたね」
「あれが私だと、はじめから知っていたのですか?」
恥ずかしさにかあっと頬を染めた彼女に、彼は頷いた。
「僕が君を見間違えるはずがないじゃないか。上手く変装しているとは思ったけどね」
「じゃあ、どうして……」
「君がしらばっくれていたから、僕も話を合わせてみたんだ。君が動揺する姿も初めて見たから、何だか可愛くて」
「ええっ」
くすっと笑ったベネディクトを前に、ナタリーはどぎまぎとしていた。彼がこんな悪戯っぽい笑みを浮かべるなんて、知らなかった。
ベネディクトは遠い瞳をした。
「君が僕に話しかけてくれるようになる前から、王立学校でも眩しい君を、僕はつい目で追っていたんだ。君みたいに屈託なく明るく笑う子を、ほかに知らなかったから」
「……!」
真っ赤になったままのナタリーに、彼は続けた。
「君は知らなかったかもしれないけれど、君と婚約できて、僕は天にも昇るような気持ちだった。でも、君は僕に合わせようとしてくれたからか、だんだん窮屈そうに表情が硬くなっていったし、学校でも笑顔が減っていったね。僕はそれが申し訳なかったし、寂しくもあったんだ」
「私、無理を言ってベネディクト様に婚約を押し付けてしまったのだろうと、そう思って。せめて、少しでも貴方様に相応しくなりたかったのです」
「君が努力してくれていることを知っていたから、なかなか言い出せなかったんだ。でも、カフェでの君の表情を見て、嬉しくてね。それに、スリを撃退してくれたあの時の君には惚れ直したよ」
ナタリーの手を取った彼に、彼女は尋ねた。
「じゃあ、あのネックレスは……?」
「以前君に贈ったイヤリングに合わせて選んだんだ。君のイニシャルも入れているんだが、気付かなかったかい?」
「いえ、まったく。では、さっきベネディクト様が仰っていた、相談というのは……」
「卒業したら、できるだけ早く君と結婚したいと思って、式の日取りを相談したいと考えていたんだ。……どうかな?」
少し緊張気味にベネディクトに見つめられて、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「こんな私でいいなら、よろしくお願いします」
「僕は、君がいいんだ」
ナタリーの身体が、そっと彼の腕に抱き寄せられる。
「そのままの君が、僕は好きだから。無理しないで、君らしくしていて欲しい」
「……本当に、それでいいのですか? 私、商売根性も逞しいですし、あんまり貴族令嬢らしくないですよ?」
「そういうところも魅力的だよ。僕にないものをたくさん持っている、そんな君に惹かれたんだから」
彼の腕の中で、ナタリーはひたひたと胸に幸せが満ちるのを感じていた。
***
王立学校の卒業後すぐに迎えた結婚式で、純白のウェディングドレスに身を包んだナタリーを、濃紺のフロックコートを着たベネディクトが迎えた。
「綺麗だよ、ナタリー」
「ふふ、ベネディクト様も素敵です」
ナタリーの首元と耳元には、エメラルドのネックレスとイヤリングが輝いている。ベネディクトがそっと彼女の耳元に口を寄せた。
「黒髪黒目の君もよかったけれど。やっぱりこのままの君が好きだな」
「……そんなこともありましたね」
ナタリーがくすりと笑う。素のままの方がいいとベネディクトに言われてから、伸び伸びとするようになった彼女はすっかり明るくなり、笑顔が増えた。
「あの時は疑ってしまって、すみませんでした」
「いや、君が僕との結婚を受け入れてくれたんだから、それで十分だ」
当時のナタリーの誤解の後、ベネディクトはもう彼女を不安にさせないようにと、思っていることを以前よりも口に出すようになった。そんな誠実な彼が、ナタリーはやっぱり大好きだった。
自由に商才を羽ばたかせた彼女が、ベネディクトと一緒に、父から受け継いだ商会を、父を超えるほどに発展させていく未来が待っていることは、この時の二人はまだ知らずにいるのだった。
最後までお付き合いくださって、ありがとうございました!
連載「婚約者に殺されかけた氷の聖女は、敵国となった追放先で幸せを掴む」も始めています。よかったら、お付き合いいただけましたら幸いです。
また、12/29には書き下ろしの電子書籍「大嫌いだった幼馴染に、契約結婚を持ちかけられました」(イラスト:双葉はづき先生)が発売されます。こちらも読んでいただけましたら、本当に嬉しく思います。どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m