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物語の導入部を書き連ねたもの  作者: 檻の熊さん
2/2

その2 タイトル:『ある復讐者の結末』

 いわゆるプロローグ。

 これなら、続きを読もうって気になるでしょうか?


 勇者を倒した。

 次に魔王を滅ぼした。

 その後に現れた邪神も消滅させた──。


 神を殺した者もまた神。

 本来であれば、オレはそのまま博愛にも似た無関心を身に付けた、中有にある神の如き存在としてそこに座すはずだった。


「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」


 オレは、死の間際に握りしめた手を放さずにつぶやき続けた、かつて姉の様に慕っていた人の姿を思い出した。


「にいに、大好き…」


 オレは、懐かしい話し方で事切れた義妹の最後を思い出した。


「愛してる」


 かつての婚約者は、そう言って事切れた。











「認められるものか!こんな結末!」


 オレの叫びは虚空に木霊しただけだった。

 時間がない、それだけは理解出来た。

オレは、以前は出来なかった、今だからこそ出来る“方法”を考えた。


 ──神?

 この世界を管理する、上位存在の下部構成員。

 役割は、世界の管理と維持。

 質量保存の法則に基づく、物質、エネルギー、魂と呼ばれる物の均衡を管理すること。

 力の行使は、そのためのみに許されている。

 あとは見守るだけ。

 出来る事は見ているだけ。

 それが出来なくなった者は“邪神”とされ、世界から排除される。

 神位の継承は簒奪が主である──すなわち、前神を倒滅出来るまでに魂の位階を上げた、その座を奪った者に自動的に移る。

 邪神になるとは、管理者がその座を降りる為に自分に用意出来る、唯一の自死の道筋である。


 オレは、何も無い白い部屋に閉じ込められた自分を幻視した。

 じきに、その場所にオレは絡め取られる。

 

「ふざけるな!」


 ここには、誰もいない。

 返事を返す者は居ない。

 居るはずがないのだ。

 

 “復讐の果てには何もなかった?”…なるほど、これがオレか。

 嗤った。

 自分に嗤った。

 あざわらうとはこういうものだ、そういう嗤いだった。


 時間がない。

 オレに、神殺しだから神にならなければならない謂われはない。

 オレの中には今も邪神を構成していたあらゆる情報が流れ込み、オレという存在を再構成しているのが分かる。

 おそらく、これが最後のチャンスだ。

 再構成が終われば、オレは望まぬこの世界の管理者になってしまい、“何も出来なくなる”。

 せめてオレがオレであると言える間に、出来る事をやってみよう。


 過去のオレ──まだ自分の事を僕と呼んでいた、オレが殺した女達の心優しき幼馴染について、調べる。


 ひと言で言えば未熟。

 今と比べるべくもなく、リソース不足。

 知識、技術、魔力、体力、耐久力…何にせよ、大した物を入れる余地がない。

 これをどうすれば良い?


 詰め込めるものは、たかが知れている。


 オレの全て、人格、経験と知識、能力を過去の自分に上書きすることは──不可能。

 知識だけならどうだ。

 今までに得た知識だけでも全て──駄目だ!容量が足りない!

 せめて、幼馴染みを開放する為に必要な、魅了に関する情報だけでも──ほぼ、いっぱいになる。

 これだけでは、勇者の妨害に容易く蹂躙されてしまうぞ?


 ──魔王の呪い。


 天啓の如く、閃いた。

 呪いは、本来のスペックに影響されない“付与”だ。

 強くても弱くても等しく相手を呪う事が出来、解呪には特定の条件を満たすか、高位聖職者などの祈りが必要だ。

──オレに言わせれば、聖徴とは神の呪いだった。そして、誰にも解呪は出来なかった。

 魔王の呪いとはすなわち、常時発動型の対戦等スキルの一種だ。

 相対する人物のステータス補正、付与、魔法攻撃を無効化するどころか、治癒の奇跡すら受け付けなくなる。

 一度この呪いの影響下に置かれると、お互いにガチの肉弾戦以外が成立しなくなる。

 如何なる神秘を携えた真剣も、世界を滅ぼす魔剣も、丈夫な模造刀にしてしまう。

 そして、回復魔法や魔力に由来する回復ポーションなども無効化される。

 魔王の呪いの名の通り、この世界で解呪が出来るのは魔王本人か神くらいだ。

 冗談でなく、最終ステージが水中での殴り合いとかになったら、大概の挑戦者は戦闘以前に死ぬ。

 男女平等、素の能力だけが白日の下にさらされる。

そういう呪いだ。


 時間がない。


 可能性はある。

 オレは、これを使うことにした。

 

 最後に、わずかばかり余ったリソースに、格闘の技術を加える。

 免許皆伝とはいかないが、素人よりは余程マシな殴り合いが出来るはずだ。

 あの頃のオレは、望んでやった事ではなかったがイジメられっぷりなら人後に落ちない──同年代に比べて、かなり体は出来ていた。

 

 オレは、用意出来た“全て”を過去の“僕”の中に送った。
















 ──大きな船に乗っている時の様な大きな揺らぎを感じたあと、オレの意識は途絶えた。


 とにかく、書いてみる。

 書いてみないと分からないことは多いもので、色々勉強になります。

 その内に、いくらか文章も上手くなり、書けるように成っていく。

 文章が下手でも辻褄が合わなくても、色々書いてみないと駄目ですね。


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