表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/75

4月4日 入社研修Ⅲ

 大きなスクリーンが俺の目に飛び込んでいた。研修会場は少し暗くなり、映画を見ているような感覚に陥っていた。俺は、画面を見ながら、4月1日からのことを考えていた。わずか4日という短い間だったけど、自分の実力のなさを痛感させられてしまったのだ。それは、同期の髙橋の存在があったからだ。何をしても、髙橋との差が大きくやる気がなくなってしまうというのが本音だった。やっぱり大学は、卒業した方がよかったのかなと何度も考えてしまう。今でも遅くないんじゃないかとすら思ってしまうくらいだった。

 髙橋の凄さは、やはりコミュニケーション力だった。いつも自然体でいて、場を仕切っているわけでははいのに、みんなが髙橋のことを欲しているのがわかった。最初は、三藤の方が凄いと思っていたが、今はそれすら変わってしまおうとしていた。前で話をしている髙橋の姿を見て思う。俺は、次々と変わるパワーポイントのスライドを見ながら今の実力がないことを嘆いた。入社前に言われた、コミュニケーション力、問題解決能力、行動力。明らかに、今の自分にはどれも足りていない。足りてないなら、補うまでだ。俺は、どうしたら補えるか考えていた。

 今日が研修最終日。良くも悪くも、俺たちは、今日で一度解散となる。解散した後は、それぞれの部署で仕事をこなしていく。俺たち同期を引っ張ってくれた髙橋、三藤たちが活躍するんだろうなと思いながら、みんなの話を聞いていた。この13人の中で唯一高卒だった俺は、みんなの話を聞いているので精一杯だった。髙橋、三藤という俺たち同期の中でトップクラスの二人がパワーポイントを使いながら、最近のアジア状況を説明していた。二人は、もう何年もこの会社にいるんじゃないかと思わせる貫禄があった。

 明日は、同期でのご飯を食べに行くことになっていた。このメンバーと別れることは寂しいけど、それ以上にちゃんとやれるのかが不安だった。大きな拍手が聞こえてきた。髙橋、三藤たちの発表が終わったみたいだった。俺も遅れて手を叩いた。このあとは、グループ発表もあるけど、何かが上手くいっていなかった。俺は、どうしようか?すると、後ろの扉が開いた。園山、深山、中村たちが続々とやってきた。どうやら、この後行われるグループコンペに来たんだろう。このコンペで何か変わるというわけではないけど、俺たち新人にとっては、絶好のアピールチャンスだった。少し手を合わせながら、頭を悩ませた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ