3月27日 園山裕司
入社説明会。俺が参加したあるソートミル株式会社の説明会は、まるで小説の世界に飛び込んだかのような感覚に陥っていた。面接の際は、むしろ静かな印象しかなかったけど、今日こうして通ってみたら何もかもが違うく見えたのだ。
会場には真新しい椅子や机が整然と並び、スクリーンには会社のロゴが映し出されていた。会社のロゴは、緑色をした丸い形。そのロゴにには、ただのロゴではない会社の何かが漂っているような気配がした。すると、この前、俺の面接をした中村が登壇してきた。中村の後に続くようにやってきたのが社長の園山だった。マイクを手にした園山は語り出した。
さっきのロゴには、園山の十代からの夢がこの会社であるという情熱的なスピーチに、俺たちの心は揺さぶられた。性格に言えば、揺さぶられたというよりこんなカリスマ性のある社長のもと働けるなんてという気持ちだった。俺は、この会社に入ったことは正しかったんじゃないかと勝手に思うことができた。
園山の話は続く。彼は自信を持って、会社の独自性や強みを説明してくれた。そして、それはまるで物語のように彩られていて、俺たちはその世界に引き込まれてしまった。新入社員は、15人。その中で、高卒採用はわずか3人。圧倒的に少ない少数派だったけど、それでも良かったんじゃないか。聖徳高校時代から、考えていた。
みんなと一緒で自分の価値が見出せるのかと。ずっとレギュラーというわけじゃなかったし、みんなから認められる存在でもなかったと思う。それでも、みんなとふざけたり、騒ぐことができたのは俺だからだと思う。それは、エースの橘や3番の橋本だけではなしえなかったと自負していた。
園山の話を聞いていると、聖徳高校時代を思い出す。あの日は、毎日ガムシャラ。毎日を過ごすので精一杯だった。監督や先輩に言われたことをただ必死にこなす。その日々の積み重ねが試合での活躍に結びついたんだと園山の話を聞いて感じた。
彼が語るストーリーの中に私たちは自分自身を重ねあわせ、将来の自分の姿が現実になるような感覚を覚えた。しかし、話が長くなるにつれて、だんだん集中力が切れていく。まだ、高校生だからだろうか。他の新入社員はきっちり聞いている。俺も、なんとか姿勢を正して社長の方を向く。続いて、ソートミル株式会社は、どのような業界に参入しているか、どのような取り組みを行っているかを具体的に説明し出した。