3月18日 引っ越し
朝から俺は、椅子に座りながら考えていた。椅子に座っているとこれからのことが不安になってくる。本当にこれでいいのだろうか?自分でもよくわからなくなっていた。それでも、自分で決めないといけないとずっと念じていた。
恵太からもらった起業家セミナーの日程は、3月21日だった。セミナー参加もそうだけど、お父さんの宿題もそろそろ期限が迫っていた。自分の中では、答えが出ていた。あとは、お父さんがどういう風に思うかだ。
売り上げ目標の達成方法を考える。俺が出した答えは、"白紙"。これにはいろんな意味があるけど、一番は答えがないという意味での白紙だった。おそらくだけど、そんなもの答えなんてないだろうと思っていた。
自分で考えた答えは他にもいくつかあった。でも、河野さんの話を聞いて確信した。自分が出すべき答えが。河野さんには感謝してるし、それをきっちり返したいなという思いも強かった。それには、まずお父さんの会社で結果を残す必要があると考えていた。
お父さんは、本当に俺を会社に入れようと思っているのだろうか?俺にはお父さんのことかがわからなかった。昔から仕事熱心で子育てにもあまり関心を示さなかった。小学4年生から始めた野球も、お父さんが応援しに来ることはなかった。別に、俺は嫌ではなかった。
お父さんは、昔から勤めていた会社を俺が高校1年の時に辞めた。そして高校2年の時に、3人ほどで会社を立ち上げた。当時は、俺のマンションの一室で仕事を始めていた。それから、高校3年の時に東京で会社を作ることに決めたお父さんは、4月から引っ越した。
最初は、お父さん一人で行っていたが、どうしても自分の中でこれでいいいのか悩んでいた。引っ越しの決定打となったのは、お母さんの"自分で決めなさい"という一言だった。誰かに決めてもらう方がとても楽だった。野球部のメンバーと最高に楽しい毎日を過ごしていただけに、この環境から離れることは簡単ではなかった。
俺は悩みに悩みに悩みぬいた。それでも、新しい環境に身をおくことが自分にとっていいと思った。その結果、引っ越しをすることに決めて、この東京にやってきた。もうすぐで東京に来て1年になるのか。早いなぁ。お父さんは、今でも家に帰るのが遅い。家に帰ってからも、資料を見ていることが多い。そこまで、仕事が楽しいのか?俺には理解ができていなかった。