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俺の気持ち 侵食加速⑤前編

ついにラストスパートとです

 自分の部屋から飛び出した俺は、家の近くの公園に来ていた。


 カレンと話をするつもりだったが、まだ風呂に入っていたのだ。


 だけど都合がよかった。今のうちに話すことをまとめよう。


 近くにあった、ボロボロの木の椅子に腰を掛ける。


 この公園には街灯は一つしかなく、奥に置かれた自販機がまぶしく光っていた。


 ポケットに小銭が入っていたかなと手を入れると、長ぼそい紙のような感触が手に当たる。


 それを取り出すと、この前のプリントシールだった。


 カレンと出かけた時に取ったやつだ。


 変な顔だな……


 自分の間抜け面に、思わず笑ってしまう。


 この時にはもしかした俺は、すでにカレンが好きになっていたんだろうか?


 考えても仕方ないよな――


 俺は立ち上がって、家に戻ることにした。


 ・・・・・・・・・・


「ただいま」


 声をかけながら家に入る。


 電気はついているものの、物音一つ聞こえない。


 取り敢えず自室に行く。


 和花はすでに帰っていて、部屋にはいなかった。


 カレンはどうしたんだ?


 カレンの部屋に移動する。


 ノックをしても返事がなく、ドアを開けた。


 部屋は電気がついておらず、人の気配もない。


 どこに行ったんだ?


 頭をかきながら、リビングに行く。


 最初は誰もいないと思ったが、ソファーの上でカレンが寝ていることに気が付いた。


 気持ちよさそうに、小さく寝息をたてている。


 起こさないようにリビングチェアに座り、今日までの事を思い出す。


 一年もたっていないのに、何年も一緒に過ごしたかのような居心地の良さだ。


 カレンの顔を見ていると、ガバッと、起き上がってビクッとしてしまった。


「あれ、サムライマスター……私、寝てましたかデス?」


 俺は頭を立てに二回振って、答える。


「もしかして、寝顔見てたデス?」


「いや、そ、そんなことしてないぞ」


 俺は顔をそらして、そう答えた。


「恥ずかしいデス……」


 怒るかと思ったが、カレンは顔を赤らめてうつむく。


 何、その反応。可愛すぎる。


「悪かった……」


「いえ、怒ってはないデス」


 ヤバい、ヤバい。どう会話してたっけ?


 これが恋に落ちるってことなのか?


 あわあわしていると、「何か、サムライマスター変デス」と、言われてしまった。


「変じゃあーないぞ。そうだ、和花見てないか?」


「見てないデス。てっきり、サムライマスターとお出かけに行ったのかと思ってましたデス」


「そうなんだ。じゃあ、もう帰ったんだな」


「何かあったデス?」


 カレンが不思議そうに聞いてくる。


「――て、感じなんだ」


 俺は、和花のお父さんに言われたことを話した。


「じゃあ、どうしてサムライマスターは、和花を家に送らなかったデス?」


 探るように俺を見てくる。


「俺が外に出ている間にい帰ったんだよ」


「和花はそんなことしないと思いますデス」


 するどい。


 だが、告白されたことは言いたくないしな……


「色々あったんだよ」


「はぁ、どうせ、おっぱいを揉んだりしたんデス」


 どういう決めつけだよ。


「してない、してない。そこまで俺は、変態のイメージがあるのか?」


「はい、あるデス」


 ヤバい、心が痛い。


 好きな子に変態認定されちゃった。


「ごめん。俺、もう寝てくる」


 俺は立ち上がって、リビングを出ていく。


 後ろでカレンが立ち上がったような気がしたが、振り向かないまま部屋に行って、ベットにダイブする。


 告白しようと思っていたが、今はタイミングが悪いみたいだ。


 そう考えて今日は、眠りにつく。


 ・・・・・・・・・・


 次の日、和花は姿を見せなかった。


 昨日の事あるし当たり前か。


 カレンの対応がしんどくて、告白できなかった。


 そんな調子であっという間に、一週間がたってしまう。


 その間、和花は一度も顔を見せなかった。


「何か、やつれてない?」


 学校で芳とご飯を食べていると、心配そうな顔で言われる。


「そうかな?」


 俺は弁当箱に入れた、レタスを食べ続けていく。


「てか、レタスしか入ってないじゃん」


 弁当箱をのぞいて、芳がそう声を上げた。


「なんか食欲無くてな……」


「お肉も食べないと……あ、ちょっと――」


 不思議な事に、芳の声が、遠くなっていく。


 気が付くと知らない天井が目に入った。


 どこか薬品の匂いもする。


 視線を左右にさまよわせて、状況を整理しようとしていく。


「お、目が覚めたか! 早いとこ帰れよ~」


 声の方に視線を向けると、白衣の女性が立っていた。


 確か、養護教諭の早川先生だな。


 先生はそのまま出て行ってしまう。


 何か荷物を取りに戻っただけか?


 体を起こして座る。


 足元の部分で、ベットに突っ伏して眠るカレンがいた。


 待っていてくれたのか……


 そもそもどうして、保健室に運ばれたんだ?


 カレンの頭を撫でながら考える。


「フフ、やっぱり。サムライマスターは、寝ていれば触ってきますデス」


 目を開けたカレンが、俺を見つめてきた。


「わ、悪い」


 手を離して、後ろに下がる。


「謝ることないデス。それより、体調は大丈夫デス?」


「ああ、何ともない。どうして俺は寝てたんだ?」


「覚えてないデスか?」


「ああ、芳とご飯を食べていたところまでは思い出せるんだが」


「そうですか――」


 カレンは咳ばらいをして、説明してくれた。


 どうやら昼ご飯の途中で倒れて、芳が運んでくれたみたいだ。


 後でお礼を言わないと……


「そうだ、今何時なんだ?」


「ふぇ? あ、十八時デスね」


 壁に掛けられた時計を見て、カレンが答えてくれる。


「もう、授業終わってる……」


「今日くらい、いいじゃないデスか?」


 カレンがケラケラと笑う。


「楽観的だな」


 俺もつられて笑ってしまう。


 何だか久しぶりに、カレンと話してるな。


「サムライマスターと、話すの久しぶりデス」


 カレンも同じことを思っていたのか、そう声を漏らす。


「そうだな……」


 最近は和花の事を聞かれてさけたり、どう話していいか分からなくて、さけてしまっていた。


「嫌われてないか、不安でしたデス」


「え? どうしてだ?」


「避けられていたからデス」


 カレンは立ち上り、顔だけ俺に向けてそう言ってくる。


「そ、それは……」


「別にいいんデス。サムライマスターが、和花と付き合って幸せなら……」


 声を震わせて、うつむいてしまう。


「ち、違う。俺と和花はそんな関係じゃない」


「でも、私は避けられましたデス」


 ダメだ。カレン、違うんだ……


「そうじゃない! 和花は……俺が好きなのはカレン、お前なんだ」


 肩を震わせて、泣き始めたカレンにそう大きな声で言う。


「え? え? そんな、信じられませんデス」


 涙を流しながら、カレンは目を見開いてそう言ってきた。


「信じてくれ! いや、俺が悪いんだよな……今まで避けて、不安にさせて、最低だよな。でも、それでも俺はカレンが好きなんだ」


 顔が熱い。たぶん赤くなっているんだろうな。


 それでも俺の思いは伝えた。


「ふぇぇぇぇ~!」


 カレンはそう声を上げて、走って保健室を出ていく。


 くそ、逃がすか。


 俺はベットから飛び降りて、後を追いかける。


 ・・・・・・・・・・


「くそ、どこ行ったんだよ……」


 見失ってしまった。


「樹君……」


 階段で息を整えていると、上から和花が下りてきてそう声をかけてくる。


 ここ最近まともに顔を合わせていなかったので、気まずそうだ。


「久しぶりだな……」


「うん……そんなことより、急いで」


「え? どうしたんだ?」


「カレンちゃんなら、屋上だよ。凄い速さで、上がっていったから」


 和花は上を指さして、そう教えてくれる。


「ありがと」


 俺はそれだ言って、階段を上って再び走り出した。


「頑張れ……」


 和花がつぶやいたその言葉が、俺を加速させてくれる。


 屋上まであっという間に着き、ドアに手をかけた――



この後すぐに投稿します笑

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