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揺れる心――ケジメ 侵食加速④

夏合宿編、スタートしてます

 和花が家に泊まるようになって、二週間が過ぎた。


 これといった問題はなく、楽しい時間が過ぎていく。


 だが、今俺は恐怖で緊張していた。


 和花の家に上がり、畳の六畳間でちゃぶ台を挟んで、和花の父親と向き合って座っている。


 正座していて、足がしびれてきた。


「……君は、和花をどう思っているんだ?」


 数時間に感じた、沈黙が破られる。


「友人です」


「男女が泊まることが、世間的に良くないことは分かっているな?」


 渋い力強い声に、体がこわばってしまう。


「すみません――ですが、和花を一人にはできません」


 覚悟を決めて、そう返す。


「では、聞き方を変えよう。君は和花が好きなのか?」


「それは――」


 ・・・・・・・・・・


「ただいま」


 重い足取りで、玄関をくぐる。


「サムライマスター、お帰りデス」


「お帰り、樹君」


 カレンと和花が出迎えてくれた。


「おう、悪いな。出かけて」


「それでどこに行ってたのデス?」


「ナイショだ」


 俺はそう言いながら洗面所に行き、手と顔を洗う。


「樹君、晩御飯もうできるからリビングに来てね」


 後ろからそう声をかけられた。


「ああ、ありがと。和花、ご飯の後で話があるから、部屋に来てくれないか?」


「うん、分かった」


 ・・・・・・・・・・


 リビングに行くと、鮭の塩焼きと味噌汁、漬物がテーブルに並んでいた。


「それでは食べるデス」


「ああ、いただきます」


 三人で手を合わせて食事を開始する。


「今日は、カレンちゃんが味噌汁作ったんだよ」


「へぇ~。……うん、うまいな」


 味噌汁を一口飲んで、カレンにそう言う。


「本当デス? これでお嫁さんにしてくれるデスか?」


「ぶぅ、ゴホ、ゴホ」


 カレンの言葉に咽てしまった。


「だ、大丈夫。樹君」


 和花が心配そうに、ティッシュを差し出してくれる。


「ああ、大丈夫。こいつが変なことを言うからだ」


 カレンの頭をワシワシと撫でた。


「にゃぁ、日本では味噌汁を褒められると、嫁にしてもらえるのデスよね?」


 何処の常識だ。


「そんな文化はない。俺は誰とも……和花?」


 和花がぼうっと、してる感じがしてそう声をかける。


「ふぇ? どうしたの? 醬油いる?」


「いや、なんかぼうっとしてる気がして」


「そうかな? ごめん。勉強しすぎたかも」


「そうか……無理はするなよ」


「うん、ありがとう」


 小さく笑って和花は、食事を再開した。



 ・・・・・・・・・・


「悪いな、来てもらって」


「ううん。それで話って?」


 食事を終えて、カレンが風呂に行ったタイミングで、和花を部屋に呼んだ。


 俺はベッドに腰掛けて、和花には椅子に座ってもらう。


「今日実は、和花のお父さんと話していたんだ」


「え? そうだったの」


 俺は事の経緯と話したことを一部を除いて、和花に話した。


「――というかんじで、和花はもう自由だ」


「そうなんだ……」


「ごめん、勝手なことをして」


「いや、いいよ。嬉しい。私、進路を自由に決めていいんだ」


 何処か緊張が解けたかのように、和花はそう声を出す。


「それと、明日には家に帰ってくれないか?」


「え? もしかして迷惑だったかな?」


 和花はすごく悲しそうな顔をする。


「いや、さっきも言ったけど、世間体は気にするように言われたから」


「そうか、そうだね。分かった、帰るね……」


 どこか寂しそうだ。


「夕方までは遊びに来てくれていいからさ、夜だけはな」


「うん。でも安心した」


「安心?」


「パパが決めた進路はね、海外の大学に行くことだったの。英語はまだ自信ないし、なにより樹君と離れたくなかったから」


 頬を赤らめて、俺を見つめてくる。


「……和花」


 和花は俺の前に歩いてきた。


「樹君。聞かせてくれないかな? 私はもう伝えたよ?」


 これ以上、待たせられないか……


「私、樹君のためなら何だってするよ」


 考えをまとめていると、和花にベッドに押し倒された。


「の、和花?」


「こんなの卑怯だって、思うけど。私、あきらめたくない」


 和花は俺の手を掴んで、胸を押し付けてくる。


 すごく緊張しているのか、鼓動が速い気がした。


「和花……分かっていたんだな」


 和花の目を見て、そう聞く。


「幼なじみだよ? 好きだったんだよ? 分かるよ」


 和花はそう言って、大粒の涙をこぼす。


「ごめんな。俺は和花の気持ちには答えられない」


 和花を上から降ろして、立ち上がる。


「じゃ、思い出に」


「え? うぁ」


 突然、腕を引かれ口を柔らかなものがふさいだ。


「ありがとう。“いい初恋だったよ”」


 和花はそう言って、俺を突き飛ばした。


「……」


 俺はないも言わず、部屋を出る。


 こんなにも好きでい続けてくれた和花に、これ以上言える言葉が思いつかなかった。


 俺はいつの間にか、カレンに心を侵食されていたんだ。


















自分の心と向き合った樹は結論を出し――物語は間もなく終わります。


泣ける……すみません。後書き今、書けないです。


次回も読んでもらえると嬉しいです

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