俺の決意 迫りくる選択し 侵食加速②
デート終えて、帰宅した樹はまたもやジゴロ、ぷりをみせて……
「ただいま」
「お邪魔します」
映画を見終えて後、せっかくなら夕飯を一緒に食べようと和花と帰宅した。
「あ~、サムライマスター! ひどいのデス!」
俺達の声に反応して、カレンが駆け寄ってくる。
しかも怒っているのか、手を飛行機の羽のように広げてタックルまで決めてきた。
「痛っ、何するんだよ」
「あれ? 本当にサムライマスターデスよね?」
俺の怒りを完全に無視して、不思議そうにジロジロと見てくる。
「? 当り前だろ?」
「フフ、カレンちゃん面白い」
和花が小さく笑う。
「あ、お洒落になってます。洒落乙です」
「洒落乙って……そんなに普段酷かったか?」
俺はそう言いながら、カレンだけにはそう思われたくないなと思った。
カレンの今の服装は鮭フレークと黒文字で書かれた白シャツに、短パンとすごくダサいのだ。
「はい、ダサいです。デート服くらいは持ってもらいたいものデス」
「ぐっ、だが、デートする機会なんて、ないんだからいいだろ?」
幼馴染とのなんちゃってデート? は二日連続でしているが、家族で出かけてるようなものだろう。
「「……」」
あれ、二人の空気が変わった?
「どうしたんだ? そろそろリビングに行こうか……」
玄関で立話もあれなので、まずは洗面所に移動しようとする。
「うん、そうだね」
「その後は……」
二人が俺の肩を掴みながら笑みを浮かべ、薄く笑い声を出す。
俺の日常はますます侵食されている。
・・・・・・・・・・
「あのデスね、サムライマスター。私はあなたが好きだと言っているんデス。だから、昨日はデートに行けて、嬉しかったのデス」
少し顔を赤らめて、床に正座させられている俺に腕を組んで言ってきた。
「だから、その好きだなんだ言われても、俺は誰とも付き合う気はない。てか、恥ずかしくないのかよ」
「何がですか! 愛を伝えるのに恥ずかしいもクソもないのデス。デスよね? 和花」
女子がクソとかいうなよ……
和花は俺の援護に回ってくれるだろう。
「あのね、樹君。私は……今日はデートだと思ってるよ? 昨日のカレンちゃんとの事も……」
覚悟を決めたように、和花がカレン側につく。
「く、和花まで……」
「分かるなんて言わないよ……でも、べつに誰とも付き合わないなんて、決めなくてもいいと思うの」
俺が誰とも付き合あない理由の一つを知っているからこそ、少し遠慮した言い方をしてくれる。
「それだけじゃないんだ。はぁ、分かった話すよ。椅子に座ってもいいか?」
ここまで来たら仕方ない。俺が特待生制度にこだわる理由を話すか……
「分かりましたデス。カツ丼も用意するデス」
取り調べじゃないんだから、カツ丼はいらないだろ。
「? カツ丼はできないけど、お茶の準備するね」
よく分かっていない様子の和花は、お湯を沸かしに行ってしまう。
俺がまじめな話をしようとしているのに、この温度差は何なんだ。
「よし、話すぞ――」
和花がお茶と一緒に、帰りに買ったせんべいを運んでくるのを待って、そう声をかける。
俺の向かいにカレンが座り、その隣に和花が座った。
「俺は冴子さんに恩返しをするためと、和花のために特待生になる必要があるんだ」
「え? 私?」
和花が不思議そうに見てくる。
「ああ、正確には、和花の両親との約束だけどな」
「どういう事なの」
「俺が特待生になったら、和花の人生を好きにしていいって言ってもらったんだ」
「はにゅ!?」
「え! え?」
和花とカレンが驚いて、変な声を漏らす。
どうしたんだ? いったい。
「ほら、和花って将来決められてるだろ? でも、それは少し違うかなって」
「え? どういう事デス」
事情を知らないカレンが、不思議そうに和花に聞く。
「あのね、私のパパって弁護士なの。それで、大学こそは言う事を聞いてもらうって、進路を決められてるの」
理由は知らないが高校も凄くもめて、今の高校に通っているそうだ。
「それで、サムライマスターは勝負しにいったと言う事デス?」
「いや、、勝負ってほどじゃないんだが、和花は和花なりにしたいことがあるんだろうなって思って、話す機会があったから」
俺はそう言って、和花がいれてくれた緑茶を一口飲む。
「え? 何時? 私、今年は一度も会ってないよ?」
今度は和花が不思議そうに聞いてきた。
「去年の終わり、和花の家に泊まっただろ? その時にだよ」
「へ~、サムライマスターは和花の家に泊まったことあるんデスね」
半目になって、カレンがお茶を飲みながら呆れた声を向けてくる。
「あ、うん。年末ね冴子さんも泊ったね」
和花はカレンの様子を見ながら、そう補足を入れる。
どうしたんだ?
「その時、部屋に呼ばれたんだよ。そこで、和花の人生をどう考えてるんだって言われて……束縛は良くないんじゃないか?って言ったら、なら君がどうすれば和花を幸せにできるか示してみろって言われて流れで……」
「これってあれデスよね?」
「そうだよね……でも、樹君は分かってなさそう」
二人がこそこそと、何かを話している。
「どうしたんだ?」
「いや、何でもないデスよ?」
「それで、樹君は、なんて答えたの」
「ああ? 特待生制度を使って俺が稼ぎますって答えたぞ。だって、そうすれば和花に就職先を与えられるって思うし」
俺が弁護士になって、和花が秘書というのも悪くないだろう。
「そうなんだ。樹君、優しいね」
「サムライマスターは、サムライマスターデスね」
どうして二人で、遠いところを見ているんだ?
「あま、そんな感じで、勉強に専念したいんだ」
「あのね、樹君」
「あのデスね、サムライマスター」
二人は目を見合わせて、声をそろえながら立ち上がる。
「ど、どうしたんだ?」
「私は、樹君の事が好きなの」
「私は、サムライマスターの事が好きデス」
二人同時に告白された。
てか、和花までどうしたんだ?
真剣な目で俺を見つめてくる二人に、どう声を出すか迷うのだった。
さあ、ついに迫られる選択の時? はたして、樹の選択は次回もよろしくお願いいたします。
感想、いいね、くれたら嬉しいです(笑)




