カレンの過去 俺はすでに侵食されていた?
ついにカレンの情報解禁です! この話だけでも読んでみて下さいデス!
「少しいいか、カレン」
廊下に出た俺は、冴子さんに電話をかける前にカレンの部屋に行き、扉越しに声をかけた。
「……どうかしましたデスか?」
扉は開かず、ドア越しに返事が返ってくる。
「朝から様子が変だけど、何かあったのか?」
「どうもしませんデス」
理由は教えてくれないようだ。でも、様子が変な気がする。
「そうか……今から少し家を空けるから、晩御飯は一人で食べといてくれ」
「……分かりましたデス」
俺はそう言って、ドアに背を向け階段を下りていく。
どのみち、これ以上カレンにかける言葉がなかった。
急いで冴子さんに電話をしに、下の階に向かう。
・・・・・・・・・・
「やぁ、待たせたね。いっ君」
ファミレスの席でドリンクバーのドリンクを飲んでいると、待ち合わせしていた冴子さんがやって来た。
「いえ、急にすみません」
俺は立ち上がって、頭を下げる。
電話で、職場の近くで会ってもらえるように頼んだのだ。
「いいって、いいって。それでどうしたのかな?」
「実は今日、中学時代の日記を見ていたんです」
机と冴子さんに視線を上下しながら、話を切り出していく。
「ほう、それで」
冴子さんはいつになく真剣な表情になり、ゲン○ウポーズで話に身を入れて聞いてくれる。
「ご注文はどうされますか~?」
近くを通りかかったショートヘアの店員さんが、そう声をかけてきた。
「生、後、つまめそうなのを」
冴子さんは渋い声で、即答する。
「了解しました~」
店員さんはくるりと回転して、スカートをふわりとはためかせ去っていった。
「えっと、話していいですか?」
「ええ、もちろん、良いよん」
「それで、カレンの事なんですが……」
「うん、カレンちゃんだよね?」
「その……」
「はい、お待たせしました。生ビール、唐揚げ&ポテトフライです」
早い、そして話の腰を折ってくる。
「ありがと~」
冴子さんは嬉しそうに、ビールをいっきに半分ほど飲む。
「もう、帰っていいですか?」
呼んでおいてなんだが、これでは話にならない。
「え~、待ってよ。カレンちゃんの家族について、聞きたいんだよね?」
先ほどまでのふざけた口調ではなく、真剣な声だ。
俺を探っているような、そんな目で見てくる。
「ああ、そうだよ――」
俺は浮かした腰を下ろして、ぶっきらぼうにそう返す。
「どうして、“騙したんですか?”」
そう言葉を続ける。
「騙すって……まあ、そう感じちゃうよね……」
グラスを見つめて、冴子さんはそう声を漏らす。
「手紙、残してくれてたんですよね?」
言葉に気をつけながら、言葉を紡いでいく。
「ああ、うん。いっ君が、カレンちゃんと真剣に向き合うなら、必要だと思って。もしかして、告白された?」
「ああ」
少し恥ずかしくなって、頬を搔きながらそう短く返す。
「うん、なら、早く行きな。私じゃなくって、直接カレンに聞いてみな」
「でも、カレンは言いたくないだろ?」
「そうかもね。でも、告白してくれたんなら大丈夫だと思うよ。それに、男なら逃げ道を使うな」
俺の肩をポスっと、叩いてくる。
「ごめんなさい。こんな遠回りに、時間をもらって」
冴子さんの目が潤んでいるのを見て、申し訳なくなり頭を下げた。
「いいって、いいって。言わなかったのは悪いし……シナリオは、私の提案だしね」
本当に冴子さんらしい、つかみどころがない。
「うん、向き合ってくるよ。カレンとのこの先のために」
顔を上げ、俺は立ち上がる。
「あ、和花ちゃんも悲しませるんじゃないよ」
背中を向ける俺に、そう声をかけてきた。
「当り前だろ!」
俺はそう言って、店を後にする。
誰も傷つかない理想の夢の世界なんて、存在しないなんて分かってる。
でも、“嘘をついていたら”本当の意味で楽しめないだろ? カレン。
俺は白い息を吐きながら、家に向かって全速力で駆けだした。
・・・・・・・・・・
「ただいま」
玄関でそう声を出す。
返事は帰ってこない。
俺は二階に上がる。
カレンは自室だろう……
コンコン。
「はい……」
「入るぞ」
俺はそう言って、ドアノブを掴む。
「まって下さいデス。着替えていますデス」
どうせ嘘だろう、構わずドアを開ける。
「ふぇっぇぇ? 何で開けるんデス?」
扉の先には一糸まとわない裸のカレンが、淡いピンクのパンツを片手に立っていた。
「……」
思考停止した俺は、声の出せないままフリーズする。
「何時まで見ているんデスか?」
カレンの声に再起動して、慌ててドアを閉め外に飛び出す。
「わ、悪い。ワザっとじゃないんだ」
「でも言いましたデスよね? 何で開けるんデス」
確かにその通りだ。これでは変態になってしまう。
「どうしても話したいことがあったんだ」
「少し待ってもらいたいデス」
「朝から俺を避けているだろ? だから……」
「避けてるわけではないデス。少し待つデス……昨日の今日で、どういう顔で会えばいいか分からないだけデス」
最後の方は声が小さくて、聞き取れなかった。
「なんだって?」
「何でもないデス――もういいデスよ」
許可を得たので、改めて部屋に入る。
カレンの部屋は端に段ボールが積んだままになっていて、その反対に置かれたベットの上には掛布団のすき間から、下着が見えていて目のやり場に困った。
「悪いな急に……」
「本当デスよ……そんなうつむいて立ってないで、座って下さいデス」
カレンに差し出されたクッション腰を下ろす。
部屋の中は花のような良い匂いが漂っていて、今更ながら緊張する。
「で、話しって何ですか?」
俺が黙っているとそう聞いてきた。
「その、カレン。お前の家族についてだ……」
カレンの様子を窺いながら、話を切り出す。
「パパとママがどうしたデス?」
「もういいんだ。ごめんな、気づいてやれなくて……憶えてなくて」
「っ……」
カレンは目を見開いて、息をのんだ。
「もう、亡くなっているんだろ? 触れてほしくないなら、これ以上は聴かないけどさ……」
「ごめんなさいデス」
「どうして謝るんだよ?」
「家族の事で嘘ついた事と、サムライマスターがあの学校に通っていたのを知っていたのを、黙っていたことデス」
そんな事はどうでもいいんだ、相談してくれなかったことがただ、悲しくって、悔しかったんだ。
自分の力のなさを思い知るようで……
俺は心の中で叫び、飲み込む。
「話してくれたから言うけど、中学の頃から体調悪かったんだな」
「はい、ママずっと病気でしたデス。少し昔話を、しますデスね。療養のために生まれ育った日本に来て、ゆっくりしてましたデス――」
俺は黙って、カレンの言葉を待つ。
「サムライマスターの話をするとママは何時も喜んでくれましたデス。パパはちょっと心配そうでしたが――」
カレンが少し笑って、鼻頭をかく。
「デスがサムライマスターが転校する少し前に体調を崩してそのまま……私も学校を休んで、そのままサムライマスターも転校していて……私は引きこもってしまいましたのデス。パパは、ママが死んで悲しいはずなのに、一生懸命励ましてくれたのデス。でも、そんなパパも中学3年に上がる頃に過労で……」
ベットに腰掛けたカレンの手が震えていることに気が付いて、隣に腰掛けて手を握ってあげる。
「大丈夫か?」
「はい、ありがとうございます」
俺の指に指を絡めて、カレンは強く握り返してきた。
「冴子さんとはどこで知り合ったんだ?」
「パパが死んで、葬式の日にデス。ママの知り合いと言ってましたデス」
そうか、それであの手紙か……
「手紙、見たか?」
「NO、手紙って何のことデスか?」
俺は少し待っていてくれと言って、部屋に手紙を取りに行く。
「これだぞ」
急いで持ってきた手紙を手渡す。
「読ませていただきます」
カレンは手紙に目を通していく。
手紙はカレンの父親が、冴子さんに送った物だった。
目じりにたまった涙がこぼれていく。
「カレン……」
「ママもパパこんなに愛してくれてたんデスね……」
「そうみたいだな」
俺はカレンの手を強く握る。
「冴子さんて、ハチャメチャな印象でしたが、本当に親切で、私なんかを守ってくれたんデス。こんな手紙を大切にしてくれてたなんて……」
何となく想像できるな、俺を引き取ってくれた日も凄かったし。
「必要な日が来るって、俺の中学時代の日記に付けてくれてたんだ」
「出会った日の事も日記に書いてあったぞ」っと、付け加えて笑いかける。
「サムライマスター、改めて言わせてください……」
「どうしたんだ?」
カレンは俺の手を強く握って、真剣に見つめてきた。
心なしか頬も赤い。
「私を助けてくれたあの日から、ずっとずっとずーっと、好きでした。もう、何も隠してません。もう抑えません。こんなにすっきりしたんデスから……もう、抑えられないデス」
「ちょっと、待てカレン」
ベットの押し倒されて、慌てる。
「ふふ、可愛いデス」
そう言って、顔を近づけてきた。
ヤバい、ヤバい。
貞操の危機のような――
その時、乱暴にドアが開いた。
「二人とも様子が変だから、心配して来てみたら、何をしてるのかな~」
般若の面を背後に浮かべた、笑顔の和花が部屋に入ってくる。
あらてのスタ○ドでも身につけたのか?
これは、命の危機なような気も……
「わぉ、無粋な和花の登場です! 逃げるデス」
カレンはそう言って、ベットから飛び降りて部屋を出ていく。
「お、おいて……」
俺も出ようと思ったが、肩を掴まれてしまう。
「お話し、しようね?」
俺の夜は長そうだ。
少し長くなってしまいましたです(笑)カレンはこれで頭一つ抜けましたね 和花の見せ場もあるので、ファンの皆様、もう少しお待ちください! こんな感じでラブコメが進んでいますが、どうですかね! ファンレターまってます(笑) それでは次回も遊びに来てもらえると嬉しいです。 最後までお読みいただきありがとうございますです。




