日記の記録 中学時代を侵食していたあいつ
過去回なのデス
中学に上がってから俺はいつも、昼食を体育館裏でとるようにしていた。
購買で買ったパンを片手に、足早に向かう。
階段に座ろうかと考えていると、女子生徒の声が奥から聞こえてきた。
告白か? そう思って立ち去ろうかと思ったが、様子が変だ。
何やら怒鳴り声も交じって聴こえてくる。
バレないように慎重に近づいて、様子を窺う。
「ホント、アンタ調子に乗ってんじゃないわよ!」
「調子に乗るって、何デスか?」
「そういう透かしたところが嫌いなのよ! 武ちゃんしめて」
よく見ると女子生徒が二人、体格のいい茶髪の男子生徒が一人立っていた。
「任せとけ! こいつが二度と学校に来たくなるようにすればいいんだろ」
男子生徒が物騒なことを口走って、奥にいる女子生徒に詰め寄っていく。
女子生徒のいじめ現場に出くわしたようだ。
「どうして、そんなひどいことするデス?」
独特の口調で、奥の女子生徒がそう声を上げる。
「はぁ? あんたが芳樹に色目使ったからだろうが」
女子生徒が口汚い言葉でそう罵った。
よくある恋愛のいざこざか? でもあの男子は、違う名前だしな……
そろそろ行くか……
俺は女子生徒達の方に歩いて行く。
「あ、誰だてめー」
男子生徒が凄んでくる。
だがそれよりも奥にいる女子生徒を見て、助けに来れて良かったと思った。
長い綺麗な金髪に、青い瞳。小学校で二度同じクラスになったことはあったが、殆ど登校してる様子もなかった子だ。
でも、憶えている。俺が家で嫌な事があった時に、俺に飴をくれた女の子だ。
たったそれだけで、当時の俺は救われた。
その恩を返すときだ。
「何、無視してんだ」
黙っている俺に、男子生徒が殴りかかってくる。
パンチが顔にあたり、後ろによろけてコケてしまった。
「キャハハハ、だっさ~」
女子生徒が下品に笑う。
口の中が切れたのか、血の味が口に広がる。
「……」
「何ぶつぶつ言ってんだ!」
蹴りをいれられた。
「来た、来たぞ。我が真なる力を見せてやる」
俺は足にかみつく。
「痛っ、離せこの野郎」
足をばたつかせて、はじかれてしまう。
「我が真なるダークフレイムファイアーで、燃やしてやるでござるよ!」
俺は立ち上がり、そう言って、手を前後に動かす。もちろん、バシュ、バシュと口で効果音をつける。
「何だよこいつ!」
「目が血走ってて、キモいんだけど。もう行こ、武ちゃん」
俺の行動に恐れをなして、二人が立ち去っていく。
「えっと、ありがとうございますデス。怪我大丈夫デスか?」
金髪の子が、俺の側に来て、ハンカチを差し出してくれる。
「あ、ああ。こんなのかすり傷だ。君は大丈夫か?」
「はい、大丈夫デス。私はカレンって、いいますデス。あなたのお名前は?」
ここは名乗らないほうが、カッコいいか……
「通りすがりの、サムライマスターさ」
俺はそれだけ言って、その場から走って離れていった。
・・・・・・・・・・
「名乗ってんじゃねーか!」
俺はツッコミを入れて、ノートを叩きつける。
これは精神ダメージが、デカそうだ。
深呼吸をして、ノートを拾って読み直す。
・・・・・・・・・・
「サムライマスター! 見つけましたデス」
次の日の昼休み、カレンが教室にやって来た。
「うん? ああ、ハンカチを取りに来たのか?」
俺はそう言って、丁重に洗ってアイロンがけを済ませた、ハンカチをカバンから取り出す。
勿論、袋に入れて汚れないようにしている。
「おう、そうでしたデス。そうではなくて、お、お昼。日一緒に食べませんか?」
カレンはハンカチを受け取って、そう提案してきた。
その言葉に、近くの男子生徒達がざわつきだす。
「何、あの中二病の神藤が女子と話しているだと」
「ありえない」
「噓でしょ」
「俺の神藤が……」
最後の奴、可笑しくないか? てか、中二病じゃないし。
「お昼か……かまわないぞ」
俺はクールにそう返す。
「やったデス! では行きましょう」
カレンはぴょんっと、小さく可愛らしく飛び跳ねる。
俺達は中庭に、向かうことにした。
「改めまして、昨日は本当にありがとうございましたデス」
中庭に着くと、カレンは頭を下げてそう言ってきた。
「いや、問題ないぞ。バルハラに比べたらあんな奴、的じゃないしな」
「バルハラですか?」
ベンチに腰掛けながらそう言うと、カレンが食いついてくる。
「ああ、俺はダークフレイムの力を受け継ぐものなんだ。この世界に転生してからは、力を封印してるがな。それで、何時かバルハラと戦う宿命なんだ」
「わぁお、それはすごいデス。封印が解けたら、手から炎がでるデスか?」
「ああ、そうなんだ……そう、ダークブラックの戦いで……」
俺は昼を食べながら、カレンに説明していく。
カレンも楽しそうに、返事をしてくれる。
久しぶりに、楽しい昼食の時間を過ごした。
・・・・・・・・・・
日記には、中学時代のカレンとの思い出がたくさん書かれている。
俺はむずがゆくなる身体を堪えて、最後まで読み切った。
これは確かに、泣きたくなるな。
でも一つ、疑問がわいた。
そう、カレンに惚れられるようなことは、書かれていなかったのだ。
でも、カレンとの思い出とともに俺はやらなきゃならい事を思い出した。
これは一度、冴子さんに電話しないとな……
いや~ね」、実は前回で書いた後書きの内容全部消したんですよ(笑)少し変更はありましたが、主人公が喧嘩で勝つのは変だなってなって、、今の形の落ち着きました。
ここまで読んでいただきありがとうございます。次回は久しぶりに冴子さんも登場です!主人公が確認したいこととは? ぜひまた遊びに来てくださいです。それではまた次回お会いしましょうです。




