カレンを観察せよ 俺の心を侵食
カレンの様子にもしかして気があるのではと? 疑問を抱く主人公……
朝、何時もより早く目が覚める。
昨日は遅くまでホラー映画を見ていたのに、考え事をしていたせいで寝付けなかったせいだろう。
ほとんど寝た気がしない。
目を覚まそうと洗面所に行き顔を冷水で洗い、歯を磨く。
「アイツ、俺の事が好きなのか?」
ため息交じりにそう呟いた。
自意識過剰な気もするが、カレンのあの行動や態度は少しは俺に、気があるのは確かだろう。
だが、それは少し困る。
俺は今、恋愛をする気がない。
贅沢な悩み? なら、想像してみろ。両親が突然、愛人をつくって出て行くところを…。
恨んでいるとかではなく、気持ち悪いのだ。
好き同士で結婚して、それを裏切って……息子の俺を捨てること気にしないで……
恋愛なんて結局、脳内バグに過ぎない。
一時の気の迷い、カレンには両親のようになってほしくない。
俺の気のせいだといいんだが……
「樹君、どうしたの?」
後ろから声をかけられて、振り向く。
和花が不思議そうに俺を見ていた。
「いや、顔を洗ってただけだぞ。それより、こんな早くにどうしたんだ? 和花も目を覚ましたのか?」
「うん……蹴り落とされちゃって……」
頬を指でかきながら、困ったような笑みを見せる。
「寝相、悪いんだな。大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。せっかくだし、朝食を作ろうと思って」
なるほど、それで顔を洗いに来たのか。
「なら、俺も手伝うよ。先にリビングに行ってるな」
「ありがとう。すぐに行くね」
・・・・・・・・・・
朝食の準備を終えて、カレンも起こして朝食を囲む。
俺の横に当たり前のようにカレンが座り、俺の向かいに和花が座る。
焼き魚と味噌汁。後は和花家自家製の、キュウリの浅漬けがテーブルに並ぶ。
カレンは器用に箸を使って、鰺の身をほぐして食べていく。
「どうしたデス? 食べますか?」
カレンを見ていると、箸でつかんだほぐし身を顔の前に差し出してきた。
「自分で食べれる」
俺は無視して、自分の魚を食べていく。
「? なら、どうして見てたデス?」
カレンが不思議そうに、聞いてきた。
「いや、見てたつもりはないけど……」
「え~、絶対見てたデス。和花なら分かりますデスよね?」
「え? うん……じっと見てたね……」
和花は探るような目で俺を見て、箸を軽くくわえたままそう答える。
「そ、そんなことないぞ。あ~、このお漬物美味いな」
俺はごまかすように、浅漬けを口に運ぶ。
二人からの疑いの目に耐えながら、朝食を急いで食べるのだった。
・・・・・・・・・・
「ふぅ、探るつもりが、探られるとは……」
自室の部屋の机の前で、ため息をとともに愚痴る。
急いで食べて、勉強してくると逃げ出したが、このままでは探るのは無理そうだ。
何であんなに視線に敏感なんだろう?
数学の問題を見ながら、そんなことを考える。
そもそも俺の気のせいと思っておけば、こんなに悩まなくていいはずだ。
「はい、コーヒーデス。勉強用に砂糖多めデス」
「ありがと――」
砂糖の甘さとミルクで、脳の疲れが取れていく。
「って、何だいるんだよ!?」
受け取ったコップを机に置き、振り向いてそう言う。
「普通に、コーヒーを差し入れに来ただけデス。何で慌てているのデス?」
「いや、驚くだろ。ノックもせずに」
「ノックしないのはいつもの事デス。それにしても、朝から変デスね? 悩み事ですか?」
なんだよ? そんなに変かよ? てか、ノックはしてくれ。
「そんなことないぞ? 俺はいつも通りだ」
俺は力こぶを作って見せる。
「はぁ、サムライマスター。サムライマスターは、風呂上がりの私の胸を見ても、顔をまじまじ見るような人ではなかったデス」
「何故、それを……」
バレてないと思っていたのに。てか、あんなラフな格好で歩かれたら見てしまうだろう。
「女の子は視線に敏感なのデス。それより、悩み事なら聞きますデスよ?」
それよりじゃないよ、え? おっぱい見てたことは怒らないの? 俺はどういう表情でこれから接すればいいの?
何、カレンって天使の生まれ変わりなの?
疑問が沸き上がるが、深呼吸をして落ち着かせる。
ここはこのまま言ってしまおう。
「俺の勘違いなら、すまないが……カレン」
「きゃーーーー!!!」
下の方から和花の悲鳴が上がる。
「和花? カレンはここに隠れていろ――」
部屋を飛び出して、和花のもとに向かう。
「どうした? 和花」
リビングに入り、そう声をかける。
「い、樹君。ご、ご」
「ご?」
和花が椅子の上に上って、顔を青くし何かを伝えようあわあわと声出す。
俺がそう声を出すと、足元を黒い何かが横切る。
「きゃ! あ、樹君。にっげ……」
その黒いものが和花に向かって、飛んでいく。
その刹那、俺は手を伸ばしてそいつを捕まえる。
手の中でもぞもぞ動いて気持ち悪い。
俺はベランダまで歩いて、外に放り投げた。
「もう大丈夫だぞ? だいじょうぶか和花?」
「……」
顔を青ざめさせたまま、和花は何も声を出さない。
「大丈夫か?」
俺は近くにより、声をかけながら肩を揺すろうとする。
「触らないで!」
和花が大声で拒絶し、椅子から飛び降りて、俺から距離を取った。
「え? 和花……」
俺は拒絶されたことがショックで、声に詰まってしまう。
「ごめんなさい。ありがと……でもごめんね、私、帰るね」
和花はそのまま走って行ってしまった。
何が原因かは分からないが、どうやら避けられたらしい。
「サムライマスター? 何事ですか?」
カレンがリビングに顔だけ覗かせて、そう聞いてきた。
気になって様子を見に来てしまったようだ
「分からない。黒いあの虫を外に投げ出したら、和花が逃げるように突然帰ったんだ」
「あ~、どうやって捕まえましたのデス?」
「え? 普通に手で?」
何でそんなことを聞くんだ? 虫を捕まえるのに、手を使うのは普通だろ。
「なるほど、なるほど。私も今日は、和花の家に行きますデス。てをしっかり、洗うんデスよ?」
カレンはそう言い残して、そそくさと去っていった。
いや、洗うけどさ。どうして俺を避けるの? カレンは天使じゃないの?
疑問だらけのまま、俺は背中をまた、見送ることしかできなかった。
さて、ついにラブに突入?なるか……(Gを素手はひきますですね。(笑)ここからラブあり、コメディーありでもラブ強めで行こうと考えています。主人公は果たして、好かれていることに気が付くのか! また、人を好きになれるのかぜひ次回も読んでもらえると嬉しいです。




