暴れん坊きゅう
私は食事を終え、床に就く。
タケルが苦手な事は、子育てだろう。
タケルは1才ほどの子供を両手で抱えると、怒った子供に蹴りを入れられていた。
子供を抱くのもあやすのも苦手でうまくいっていない。
私のやる事が決まった。
明日から子供の世話をしよう。
◇
【次の日の朝】
私は料理の準備をするが、手伝いたがる子供全員に手伝ってもらい、【包丁係】や【皿洗い係】などの役割を与えた。
役割を与えると、「私もかかりほしい!」と言ってくるのでみんなに【係】を作って仕事を任せて、ちゃんと仕事を最後まで終わらせたらとにかく褒めた。
タケルがやってきて驚愕する。
「子供が言う事を聞いて働いている!ハスハはどうやって子供に仕事をしてもらっているんだ!?」
「う~ん、やりたいと言った仕事をしてもらって、役割を任せて終わったら褒めているだけよ?」
「だ、だが、手際が良すぎる!」
「鬼の村に居る時は100人の子供のお世話をしていたから、慣れているのかも」
「100、人だと!圧倒的じゃないか!俺は1人の赤子を育てるだけで手いっぱいになりうまく出来なかった」
「でも、手伝いたい子が多くて、包丁が足りないの」
「包丁なら作ろう。子供の世話よりは得意だ」
タケルはすぐに包丁を作る為去って行ったが、その顔には希望の色が見えた。
◇
料理と畑の成長促進が落ち着くと、私は小さい子供の元へと行く。
タケルが一番小さい1才の子供を抱っこして眠らせようとする。
きつね族で金色の髪と瞳の女の子【きゅう】だ。
「ああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
きゅうは超音波のような声で叫び、暴れる。
「ちゃい!!」
タケルがきゅうを両手で抱えてゆすってあやそうとするが、きゅうはタケルの顎を蹴り上げる。
「だ、ダメだ、手に負えない」
「タケル、私に抱かせて」
「だが、中々の暴れん坊だ」
「いいから、私が抱くわ」
「分かった」
私が抱くと、きゅうは少しずつおとなしくなり、目をつぶって眠る。
「な!怒りんぼうで暴れん坊のきゅうをおとなしくさせたのか!!」
「抱き方とか、いろいろコツがあるのよ」
「頼みがある。きゅうの世話をお願いしたい。今から包丁と農具・脱穀機、それと味噌や醤油を作る小屋を作りたいが、このままでは時間が取れない」
「いいわよ。きゅうはすやすや寝ているわ。可愛い」
「これでこの城の仕事の効率を上げることが出来る。時代が変わる!」
「そこまでの事なの!」
「そこまでの事だ。本当に助かっている」
その日からタケルは作業に集中して農具や味噌小屋を作っていった。
子供同士で農具や脱穀機の奪い合いで喧嘩は起きたが、生活は豊かになっていく。
ハッコウは味噌の他に醤油と酒、更には畑の肥料まで作った。
イトナは全員分の服を新しく作り直し、布団を作り始める。
ギンコは狩りに行く時間が増え、多くの肉や魚を持って帰るようになった。
確実に生活の質は増していく。
◇
数日たつと、きゅうは私にすっかり懐いて、抱きついてくるようになった。
「きゅうが起きているのにおとなしいよ!」
ギンコが驚く。
「きゅうはいい子よね?」
「きゅう、いいこ」
皆がおとなしくなったきゅうを見て一斉に笑うが、きゅうは不機嫌になった。
「はああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
きゅうが超音波のような叫び声をあげる。
「だ、ダメよ。1才でも笑われているのは分かるんだから。よーしよし」
きゅうは怒る事もあるが、前より落ち着いた。
きっときゅうはお母さんが居なくてさみしかったのね。
きゅうを抱いて頭を撫でるとおとなしくなってくる。
この城の生活は確実に良い方向へと変わりつつあった。
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