料理がさらにおいしくなった
私とタケルはイトナとハッコウを連れてタケルの城にたどり着くが、タケルの疲労は明らかに蓄積されていた。
塀の門をくぐると、タケルは子供たちにもみくちゃにされる。
「タケル、今日はゆっくり休んで」
「だが、俺だけが休むわけにはいかない」
「いいから!じっとしてて」
「ありがとう」
私はタケルを休ませると、イトナとハッコウと話を始めた。
子供たちの何人かも一緒に座って会議に参加する。
「イトナは綿があれば服を作れるわよね?」
「はい、私のスキルは【裁縫】ですが、布を縫う以外にも、糸を作って生地を作ることも出来ます。任せてください!」
「ハッコウのスキルはどんなものなの?」
「いろんな物を発酵させることが出来るっすよ。でも、戦うのは苦手っす」
ハッコウは暗い顔をした。
「いいのよ、ここでは戦う力じゃなくても助けになるわ。お酒やお味噌、それにお醤油は作れる?」
「材料さえあれば作れるっすよ。発酵だけじゃなく乾燥も出来るんで1日で作れるっす」
ここでは味噌や醤油は貴重なのだ。遠くにある他の部族の領地行けば味噌や醤油を物々交換で手に入れることは出来る。
だが、大量の味噌や醤油を運ぶ手段が無いのだ。
物々交換をした後は、道なき道を進み、川を横断しながら疲弊しつつ味噌や醤油を持ってくることになる。
タケルにそんな余裕はないだろう。
「凄いわ!ここでは貴重なスキルよ!」
「俺でも役にたてるっすか?」
「大活躍よ!」
子供たちが話に入ってくる。
「ぼくも、ぼくもやる」
「わたしてつだう~」
「そうね、皆で服とお味噌をつくりましょう!」
皆で畑に向かい、綿と大豆を成長促進で大量に作り出す。
麦や米はたくさん備蓄してあるので今回は作らない。
「みんな!綿と大豆を収穫しましょう」
子供たちが麵を集めてイトナに渡し、大豆のさやを取ってハッコウに渡す。
「凄いわね。これならすぐに材料が集まるわ」
こうしてその日のうちにイトナは着物を作り、ハッコウは味噌を完成させた。
日が暮れ、私は料理を作っていると、皆が集まってきた。
「味噌の料理は何年ぶりだろうか?」
タケルが嬉しそうにつぶやく。
「僕は小さい頃に食べたっきりだよ」
ギンコはよだれを垂らす。
「いいにおいがしゅる」
「ごはんまだ~?」
子供たちは今か今かと待っている。
「もう少しで出来るわ」
皆に楽しみにされて料理を作れて幸せ。
昔は文句しか言われなかった。
料理が出来、皆によそっていく。
普通のご飯と猪鍋。
それだけでみんなが嬉しそうにご飯を食べてお代わりをしてくれる。
「ハスハ、座って食べよう」
「私が盛り付けと片付けをします。ハスハはタケルと一緒にゆっくりしてください」
「俺も手伝うっすよ」
私はタケルの隣に座る。
「おかげで美味しい食事を食べることが出来る。感謝している」
「それはハッコウがお味噌を作ったから出来たのよ」
「ハッコウやイトナにも感謝しているが、ハスハが居なければ2人はここに来ることも無かった。それに料理を作ったのも野菜を作ったのもハスハだ」
「少し大げさよ。私は大したことはしていないわ」
「俺が味噌料理を食べたのは本当に数年ぶりだ。それに子供達に味噌料理を食べさせたいと思って、今まで出来なかった」
「そ、そうなのね」
私はあまりに褒められ、皆から感謝され、落ち着かずご飯を食べた。
今晩の料理は大絶賛で終わる。
タケルに喜んでもらえて嬉しい。
そして、タケルが大げさなほど私を褒めてくれるのは、タケルが今までうまく出来なかった事への裏返しなのだと思った。
子供たちに野菜をもっと食べさせたいが出来ない。
子供たちに味噌料理を食べさせたいが出来ない。
子供たちにもっとまともな服を着せたいが出来ない。
タケルは建築・狩り・鍛冶の能力は突出して高いが、それ以外の事は苦手で、無理をして子供を育ててきたのかもしれない。
タケルを見ていると、小さい子供を育てるのが得意とは思えないのだ。
タケルの欠けている部分を埋めることが出来たら、きっとタケルはもっと笑うようになる。
私は、次出来る事を考えていた。
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